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【RFC36】トニーニョ・フリアの波乱万丈MMAファイター人生<02>「息子の薬を買うには……」

Toninho Fria【写真】ついにそのポテンシャルの全てを発揮する状況に身を置くこととなったトニーニョ・フリア。どのようなファイトを今週土曜日に見せてくれるのか。期待大だ(C)BELLATOR

11日(土・現地時間)、韓国はソウルのチャンチュン体育館で開催されるROAD FC36。同大会から行われるライト級$100万トーナメント国際予選でブレンゾリグ・バットムンクと対戦するトニーニョ・フリア・インタビュー後編。

若きベテランのキャリアは常に生活苦と直面していた。そして、成功を掴みかけた米国でのキャリアップに失敗。その裏ではケージの中からは窺い知れない苦境に彼は陥っていた。

そんなトニーニョがどん底の状況で見出した光明とは。ピッチブル・ブラザースという練習環境を手にして、モチベーションは200パーセントのトニーニョの波乱万丈MMAファイター人生の第2幕をお届けしたい。

<トニーニョ・フリア・インタビューPart.01はコチララから>

──米国ではTitan FCで2勝を挙げましたが、Bellatorでは2試合連続、スプリット判定負けと結果を残すことはできませんでした。

「タイタンFCで戦った時は肉体的にもメンタル面も、そして技術面もしっかりと調整できていた。でも、2試合目で拳を折ってしまい、ベラトールで試合をした時のコンディションはキャリア最悪だったんだ。家族を支えないといけなくて、拳を治すだけの医療費がなかった。そうなると思うような練習もできなかったし。

それでもジョン・テイシェイラ戦は良い試合ができて、今も自分が勝っていたと思っている。解説のジミー・スミスも僕の勝ちだと言っていたしね。いずれにせよ、今から振り返るとあの状態では試合をすべきじゃなかったね。

あの時は鎖骨もケガをしていて、ドクターにも試合は無理だと言われていたんだ。でも、僕には守るべき家族がいた。肌に問題があった息子に薬を買ってやるには、試合に出て稼ぐしか選択肢はなかった。僕らはサバイブしなければならなかったから……」

──そこまでの状況だったのですね……。

「あの試合の後、6年間いたBTTを離れ小さなジムに移ったんだ。色々と好条件を提示されたから。BTTでは凄く成長できたけど、ムリーロ・ブスタマンチとは人間関係がこじれてしまっていたからね。

彼にどんな考えがあったのか知らないけど、2012年にUFCからオファーがあっても、僕にそのことを伝える事なく断ってしまった。ベラトールと契約する前は本当にお金がなくて、それでもムリーロには何も助けてもらえなかった。僕はBTTでは幸せになれないと思ったんだ」

──それで良い条件を出してくれたジムへ?

「そう。でも、事態はさらに悪化した。彼らは何も約束を守らなかった。2カ月間、床の上で寝て──バスで長い時間をかけてジムに行っても、誰もいなこともあったよ」

──……。そのような状態で戦ったブレント・プリマス戦も微妙な裁定でスプリット判定負けになってしまいました。

「あの試合も僕は負けていないと思っている。メインカードだったから今度はジミー・スミスだけでなく、メディアも僕が勝ったと言っていた。そして、最悪の判定年間大賞にあの試合が選ばれたんだ(苦笑)。

でも負けは負けだ。ホント、もうキャリアを終わりにしようと思った。あの試合の後で、ベラトールにカットされたしね」

──何て言えば良いのか……。

「でもね、プリマス戦を戦ったから今の僕があるんだ。あの試合の時にホテルでパトリシオに再会した。僕らは2009年に試合をしていて、実はキャリア唯一のKO負けがパトリシオ戦なんだ」

──へぇ。その2人が7年振りに再開を果たしたと。

「そう。パトリシオは英語も話せない僕をファイトウィークの期間中サポートしてくれた。減量も助けてくれたしね。そんなことがあって、彼はナタウのピッチブル・ブラザースに僕を誘ってくれたんだ。『気に入ったら、ここに居れば良い。強要はしない』って。一カ月後から僕はナタウの住人になったよ。

パトリシオは素晴らしい友人で、彼のマネージャーのマテウス・アキノは優秀なビジネスマンだ。チアゴ・トウラォンというヘッドコーチの下で本当に強いチームが形成されている。強いファイターが揃っていて、ピッチブル・ブラザースは完全に僕にフィットしていた」

──ようやく安住の地を見つけることができたのですね。

「この7カ月、ピッチブル・ブラザースは僕をより危険なウェルラウンダーに成長させてくれたよ。厳しい練習環境が、精神力も養ってくれた。チームでは、多くのチャンピオンが生まれているのも納得できるよ。あれだけのハードトレーニングを積んでいるんだからね」

──ピッチブル・ブラザースにはフレイレ兄弟、ベチ・コヘイア、レアンドロ・イーゴなど錚々たるメンバーが揃っています。

「彼らだけじゃない。まだ、名前が知られていないけど強いファイターもゴロゴロしている。そのなかでも、僕にとってはパトリッキー(※パトリシオの兄)が、メインパートナーだ。同じ階級でスタイルも似ている。互いの知識を共有して、強くなり続けている。空手コーチのマノ・サンタナの指導で、より僕の打撃は完成度が増した。レスリングもエリック・アルバシンに鍛えられているよ」

──充実ぶりが伺えますね。

「本当に。従弟のアイザック・アルメイダ、そしてレアンドロ・イーゴとアパートを借りて暮らしているけど、レアンドロが僕のコーナーマンで、韓国にも一緒に行くよ。

パトリシオがチームに誘ってくれたお陰で、ロードFCで戦う機会を得ることができた。僕はピッチブル・ブラザースを代表してこのトーナメントを戦う。

彼らのサポートを受けて、成長した姿を見せる。そしてファンの喜ぶ試合をするよ。もちろん、韓国の大会でトーナメントには韓国人ファイターも出場する。チャンピオンのクォン・アソルも韓国人だ。でも、会場のファンが喜ぶ試合をしたいと思っている」

──ではその韓国人ファンだけでなく、日本のMMAファンにもメッセージをお願いします。

「もちろん。僕はPRIDEで戦いたいと10代の頃に思っていた。綺麗な会場で、ファイターのことを尊敬してくれるファンの前で戦いたいって。ロードFCが日本大会を開催し、僕を日本で戦わせてくれるなら、絶対に日本のファンに喜んでもらえるよう全身全霊を掛けて戦うよ」


■ROAD FC36対戦カード

<ミドル級/5分3R>
福田力(日本)
キム・ネチョル(韓国)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
佐々木信治(日本)
アルバート・チャン(カナダ)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
レオ・クンツ(米国)
ホン・ヨンギ(韓国)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
ホドリゴ・カポラル(ブラジル)
パク・デソン(韓国)

<女子無差別級>
世志琥(日本)
チョン・ソンユ(韓国)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
シャミール・ザフロフ(ロシア)
キム・ウォンギ(韓国)

<フライ級/5分3R>
中原太陽(日本)
ムン・ジェフン(韓国)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
ブレンゾリグ・バットムンク(モンゴル)
グレリストン・サントス(ブラジル)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
アンディ・メイン(米国)
キム・チャンヒョン(韓国)

<ライト級Tトライアル1回戦/5分3R>
ホニ・トーレス(ブラジル)
エメック・トラオフ(カザフスタン)

<ライト級Tリザーブマッチ/5分3R>
イ・ヒョンソク(韓国)
パク・ヘジン(韓国)

<ライト級Tリザーブマッチ/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
ジョン・ジェイル(韓国)

<ライト級/5分2R>
ミン・ギョンチョル(韓国)
チョ・ヨンジュン(韓国)

<フライ級/5分2R>
パク・スワン(韓国)
ソ・ドンス(韓国)

<バンタム級/5分2R>
ソ・ジンス(韓国)
イ・ソンス(韓国)

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