【Interview】あの敗北とその後──加古拓渡<02>「今、1秒やるべきことを10分間続ける」
【写真】柔術家のインタビューでは珍しい、普段着での撮影もさせてもらった(C)MMAPLANET
日本の柔術界を若手としてリードしてきた加古拓渡が、9月のアジア選手権で茶帯から昇格したばかりの嶋田裕太に敗れた。
それは6月のムンジアル出場に向け、ポイント獲得『ゼロ』という誤算でもあった。そして加古はとにかく、もうワン・トライと国際式のトーナメント=ソウル・オープンに出場した。
<加古拓渡インタビューPart.01はコチラから>
──翌週に関西で戦うことでクリアになることもありましたか。
「まずは試合に出てから考えようと思って、今となれば一つの負けです。過ぎたことはしょうがない。あの負けをキッカケに感情に流されないよう、感情をフラットにして戦うようにしました。
もうコイツをやっつけようとか、コイツに勝ちたいとか、一本取りたいとか、試合中には考えないようにしようと思い、今、この1秒にやるべきことをやり、それを10分間重ねていけば勝てるので。一本取れる時は取れるし、無理やり取りに行くとか考えないようになりました」
──では次に嶋田選手と戦った時は、借りを返すという気持ちは排除して戦うことになるのでしょうか。
「そうですね。対戦相手の一人、冷静に戦うことが自分のスタイルに合っていますし」
──当日減量が主流の柔術トーナメント。今後はライトフェザー級に留まるのか、フェザー級に戻すのか。どのように考えていますか。
「酷い負けからとしたから、そういう風に言われただけで。減量自体はこれまでもずっときつかったですから。でも、世界選手権(ムンジアル)で一つ勝てた。結果が良ければ、言われることもないですしね。
だから世界選手権とアジアはライトフェザー、それ以外はフェザー級とこれまでと同じように戦っていきます。日本だと減量は正直関係ない、むしろ落とした方がデメリットは大きいと思います。でも世界選手権の対戦相手の大きさを考えると、フェザー級は無理なので」
──そのムンジアルですが、アジア選手権でポイント獲得がゼロだったことは誤算だったのではないですか。
「ハイ。だから、ソウル・オープンに出場しました。あの大会は係数は1倍なのですが、これまでの貯金があるので優勝すれば世界選手権に出るだけのポイントになる。
階級別で取りこぼしても、無差別級で2位に入ればそれでも良かったので。アジアで優勝すればソウル・オープンに出ることなかったですが、アジア2位でも出ようと元々考えていました。
ただし、アジアが終わった直後は心が折れていたので、ソウル・オープンに出てどうこうというのは頭にはならなかったです。1週間後の大会に出て、吹っ切れたわけじゃないですが、もうワントライしようという気持ちになれたんです」
──結果はフェザー級で優勝を勝ち取ることができました。ソウル・オープンこそ、落とせないという気持ちにはらなかったですか。
「ありました(笑)。だから勝った時はホッとしました。決勝の相手は大塚(博明)君でした。初戦はシセロ・コスタのところでやっていたという韓国人選手で。どういう選手か分からなかったですけど、チェ・ワンキが出ていたら厳しくなると思っていたのですが、出てなかったです」
──アジアでイザッキ・パイヴァに勝った選手ですね。物凄い筋肉の(笑)。
「2014年のアジアではライトフェザー級に出ていて山田(秀之)君にスト―リングが何かで負けたのですが、強い選手です。その後、ライト級とかでもやっていますしね」
──とにかくソウルでムンジアル出場権を得た。この点に関しては、どのような心境でしょうか。
「早いタイミングで決まったので、今後のスケジュールが組み立てやすいのは良かったです。本当はアジアで決めたかったのですが」
──6月の本番に向けて、どのようなスケジューリングを考えていますか。
「さすがに5月にトーナメントに出ることはないですが、4月までは月に一度は試合に出ていこうと思っています」
──ヨーロピアンやパン柔術は?
「海外でなく国内で試合をしようと思っています。どこでというのは決めていないですが、ジャパニーズ・ナショナルはポイントを取ることができる大会ですし、出場することになるでしょうね。
最後のポイントを狙って、必死になる選手もいるはずですし、そこで冷静に感情に流されずに試合をしようと思います(笑)。アジアでの負けを糧とするためにも、そういう風に戦えるよう心がけます」