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【SUPER RIZIN03】危ないレベルの因縁、扇久保博正戦。神龍誠「言いたいことは山ほどあった」

【写真】本当に仲が悪いと、MMAは危険だ (C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、神龍誠が扇久保博正と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

4月のRIZIN46のリング上で決定した神龍と扇久保の一戦。かつての師弟対決としての注目を集めていたが、日を改めて行われた記者会見では扇久保の「なんでうちの道場を辞めたか言ってみろ」という言葉に対し、神龍が「俺とお前は合わないなって言いましたよね?それを指導員が言っていいんですか?」と返すなど、両者の遺恨が露になった。

このインタビューは会見直後に行われたもので、神龍は扇久保戦に対して抱く感情を露わにした(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。


当時の僕は本当にしゃべるのが苦手だった

――両者揃っての記者会見を終えた直後ですが、今の心境を聞かせてください。

「ムカついてます」

――会見で神龍選手から扇久保選手に対して「俺とお前合わないなって言いましたよね?それを指導員が言っていいんですか?」という言葉もありました。

「そういう人なんだなって感じですね。普通は先生が生徒に対して『俺と合わない』なんて言わないじゃないですか。でもはっきりそう言われたんですよ。あっちは覚えてないと思いますけど。そういうことを言う先生のことをどう思います?」

――それはその時の状況もあるとは思いますが…………(汗)。

「しかもそれを15~16歳の生徒に対して言うわけですよ。僕はそういうことは言うべきではないと思います」

――例えば何かそう言われてしまう出来事があったのでしょうか。

「僕は何かやらかした記憶はないし、ただ単に気にくわなかっただけだと思います」

――やるなと言われたことをやってしまった、とか。

「それもないですが、当時僕が周りの人たちと馴染めなかったのは確かです。ただ僕だけ10代半ばで、周りに同世代の選手がいなかったし、みんな年上なわけですよ。そういうこともあって周りと馴染めなかったし、『お願いします』って練習に参加して、掃除して一番最初に帰るのが僕だったんです。

そういうなかで『お前は毎日便所掃除しろ』と言われて、僕はそれを一昔前のイジメみたいだなと感じていました」

――いわゆる師弟関係というものはないですか。

「そんな関係ではないです。一応、教えてもらっていたので感謝もしていたし、先生と呼んでいましたけど、綺麗な師弟関係はないですね」

――道場で指導する・指導を受けるだけの関係だ、と。

「そうですかね。だから僕は会見で(扇久保が)どっちの感じで来るかなと思っていたんですよ。そうしたらああいう感じで来たので、じゃあ僕もその感じでいきますよと思って言いました」

――扇久保選手の言葉を聞いて感情的になりましたか。

「僕も言いたいことは山ほどあったんですよ。それであっちが『しゃべれ』って言うから、しゃべりだしたら『しゃべんな』って言われて。ああいうところも理不尽ですよね」

――指導を受けている時から、いつかやってやりたいと思っていましたか。

「はい。当時からそう思っていました。色々言われてムカつくのもあるし、練習ではボコボコにされていたんで」

――ジムを離れたのもそれが原因の一つだったのでしょうか。

「ジムを離れたのはちょうどプロで初めて負けた時で、このままの環境で強くなれるのか?と疑問に思って辞めました」

――扇久保選手からするとジムが嫌で逃げたという捉え方をされているかもしれません。

「当時の僕にはそうするしかなかったです」

2018年2月、パラエストラ柏──夜の一般練習で内藤のび太とスパーリングをする神龍誠(当時は高橋誠)

――神龍選手の入門当時はどのよう状況だったのですか。

「もともと僕がジムに入ったのが中学一年生くらいの頃で、参加していた一般クラスで中学生は僕くらいでした」

――中学生の一会員としては色々と難しい環境かもしれないですね。

「それで周りに馴染むのが大変だったし、僕も人見知りだったんで、向こうからすると感じが悪かったんでしょうね。何か話かけても返事はするけど不愛想だっただろうし。今振り返るとそうだったんだと思います。でも当時の僕は本当にしゃべるのが苦手だったんで」

――今はそういう見方ができるかもしれませんが、当時はそこまで考える余裕がなかったのかもしれないですね。

「それでも優しくしてくれた先輩はいたし、大阪で試合をするときにセコンドについてきてくれた先輩や、周りに馴染めない僕に声をかけてくれた先輩もいたんですよ。あの人はそうじゃなかったってことです」

――人間的に合わないですか。

「はい。合わないです」

天才だからやらなくていいんだじゃなくて、基礎練習もやってプラスアルファにする

――話題を変えましょう。4月のRIZIN46のイ・ジョンヒョン戦は肩固めによる一本勝ちでしたが、あの試合を振り返っていただけますか。

「予想通りでしたね。年末に堀口(恭司)選手には負けましたけど、言っても僕は世界トップなので」

――心境的には勝って当然という試合でしたか。

「でもジョンヒョンは強いらしいですけどね。韓国ではトップ3に入ると言われているみたいなので。まぁ、僕は日本の器じゃないんで、そういう違いを見せられたかなと思います」

――堀口戦後は何を意識して練習してきたのですか。

「基礎に戻りました。強化しなきゃいけないところを見つめなおして。今まで雑にしていたところ、曖昧にしていたところを基礎からやる感じですね」

――新しいことを取り入れるよりも基礎を見直していると。

「そうですね。打ち込みの大切さだったり。どうしてもレベルが上がってくると練習がスパーリング中心になったりするじゃないですか。そういう部分で技が雑になっていたところもあったので、そこを振り返ったのが一番ですね」

――堀口選手と対戦して通用するところ・しないところが分かりましたか。

「相手の強みで勝負できるようにならないと先はないのかなと思いました。例えば堀口選手はすべてのレベルが高くて、何でもできるわけじゃないですか。それに対して僕がただ自分の強いところをぶつけるだけでは勝てなくて、相手の強いところでも勝負しながら、自分の得意なところに持っていくことが必要だなと思いました。堀口選手と再戦を狙っているので、このくらいしておきます」

――神龍選手の試合を見ているとMMA的なスクランブルの動きとサブミッションを取る動きが連動している印象があります。そこはご自身でも意識されているのですか。

「う~ん……身体能力。それが扇久保さんが言う『身体能力がある』なんじゃないですかね」

――なるほど。自分でもそこは武器だと思っていますか。

「逆にそこに頼りすぎていたってことだと思います。そういう意味で基礎に戻ったというか。自分は天才だから(基礎は)やらなくていいんだじゃなくて、基礎練習もやってプラスアルファにするということを堀口戦で考えるようになりました」

――あのタイミングで堀口選手と戦ったことは大きかったようですね。

「大きいです。あのタイミングでやれたことが大きいし、また強くなっちゃいますよ」

あの人もUFCに行ったらトップ5には入ると思う

――扇久保選手に対する感情は置いておいて、対戦相手としての印象は?

「フィジカルが強いパワー型で、テイクダウンしたらあまり動かずにパウンドで削って膠着することが多いですよね。そこにハマるのは嫌なので、そうさせないようにして僕の展開を作っていきます」

――攻略するイメージは出来ていますか。

「相手の対策ではなくて、今の僕なら全部で勝負できると思うので、特にないです」

――対扇久保ではなく、今の自分を出すことに集中していると。

「そうですね。確かに当時の僕は何もできなかったですけど、それは昔の話なんで。今は全部で勝負して勝ちます。あの人もUFCに行ったらトップ5には入ると思うので、世界一を目指す人間としてちゃんと超えたいなと思います」

――周りから様々な反響があると思いますし、お互いの色々な感情がぶつかる試合になりますね。

「そういう方が面白いんじゃないですか。あっちも家族もお子さんもいて、昔こういうことをされましたって言って下げるのもどうかなと思っていたんですけど、あの感じで来るなら僕も同じ感じでいきますよと。ファンのみなさんは試合を楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA格闘チャンネル

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