【WJJC2016 No-Gi】世界最強ノーギ柔術家ユーリ・シモエス、ウルトラヘビー&無差別制覇!!
5、6日(土、日・現地時間)、カリフォルニア州ダリーシティのカウ・パレスにて、IBJJF(世界ブラジリアン柔術連盟)主催の世界ノーギ柔術選手権が行われた。ADCC世界大会に次ぐノーギ・グラップリングの最高峰の舞台であり、今年も注目すべき強豪が多数出場したこの大会。レビュー最終回となる今回は、アダルト男子黒帯最重量のウルトラヘビー級と、無差別級の模様をお届けしたい。
【ウルトラヘビー級】
優勝候補筆頭のユーリ・シモエス(ブラザCTA)が順調に決勝進出。昨年3位にして、準決勝でムハンマド・アリー(ロイド・アーヴィン)に競り勝ったハーフガードの使い手、グスタヴォ・ディアス(グレイシー・ウマイタ)と優勝を争った
<ウルトラヘビー級決勝/10分1R>
ユーリ・シモエス(ブラジル)
Def. by 4-0
グスタヴォ・ディアス(ブラジル)
いつものように気合い十分のシモエスは、組み付いての小外掛けで場外際ながらディアスを倒すなど、立ち技で優勢に試合を進める。やがてディアスが引き込んで、得意のニーシールド・ハーフを作って仕掛けようとするが、シモエスは頭を使ってディアスのアゴを押し上げるようにしながら胸を合わせ、その動きを止めてゆく。
一度は下から動いてスペースを作ることに成功したディアスだが、シモエスは再び前方にプレッシャーをかけてゆく。やがてハーフガードを取るディアスの背中をマットに付けさせることに成功し、その頭を腕で抱えてコントロールしたシモエスは、絡まれている足を抜いてパスに。それを嫌がって腹這いになるディアスに動きに合わせてバックを奪い、4点を制してみせた。
その後も上から試合を優位に進めたシモエスは、終盤ディアスに距離を作られ立たれるものの、ここで引き込み。最後はオープンガードで時間をやり過ごして完勝。世界最高峰のノーギ・グラップラーの貫禄を見せた。
【無差別級】
ライト級に出場したタンキーニョことアウグスト・メンデス(ソウルファイターズ)や、ミドル級に出場予定だった(が体重オーバーにより失格となった)ドゥリーニョことジウベルト・バーンズ(ズィニス)ら、軽重量級勢の大物の参加で盛り上がったオープンクラス。ドゥリーニョはスーパーヘビー級のジャレド・ドップと立ち技合戦を展開、バックを取りかけるなど健闘したが、シングルレッグでテイクダウンを取られるなど4-0で敗戦。
タンキーニョの方は準決勝で優勝候補筆頭のユーリ・シモエスと対戦。ここでシモエスはあえて体格差を利用したテイクダウンではなく、引き込んでのハーフやオープンガードからの仕掛けで勝負した。見事なバランスでシモエスの仕掛けを切ってポイントもアドバンテージも許さなかったタンキーニョだったが、ディープハーフから揺さぶってタックルに移行したり、終盤は立ってアームドラッグを仕掛けるなど積極的に攻めたシモエスがレフェリー判定勝ちを収め、決勝に進出した。
もう一つの準決勝では、ミディアムヘビー級を体重オーバーで出場できなかったムリーロ・サンタナ(バルボーザ)がドップと対戦。シッティングガードからの仕掛けで揺さぶった後にクローズドガードから腕十字の要領で角度を付けてスイープをきめてマウントを奪取。そのままバックを奪って腕十字に移行し、最後は下になりながらの三角十字で圧巻の一本勝ち。「道場内世界最強」という評判が伊達ではないことを見せつけて決勝に進出した。
<無差別級決勝/10分1R>
ユーリ・シモエス(ブラジル)
Def. by 0-0 ペナルティ 0-1
ムリーロ・サンタナ(ブラジル)
強敵を迎えたシモエスは、いつものように気合い十分。試合前からサンタナの頭に自らの頭を付けて押すほどの気持ちの入りようだ。試合開始後サンタナがシッティングガードを取ると、シモエスはその足を踏みつけんばかりの勢いで中に入っては、再び頭で頭を押してゆく。
やがて熾烈なハンドファイティングの後、トレードマークともいえる爆発的なスピードで左右に動いてのパスを仕掛けるシモエスだが、サンタナも素早く対応。すぐに足を入れて戻し、アドバンテージポイントも取らせない。
サンタナはシッティングから足を絡めようと前にスクートを試みるが、シモエスはすかさず下がるか、腕を伸ばしてサンタナの肩や頭を押して巧みに距離を取り、サンタナに仕掛けを許さず、隙あれば左右に動いてのパスを仕掛ける。すかさず反応してポイントを許さないサンタナ。途中両者に消極性の注意が与えられるが、電光石火のパスを狙うシモエスと、隙を見ては足を絡めての崩しを狙うサンタナによる緊張感溢れる攻防が続いていった。
残り時間が少なくなると、展開を変えたいサンタナはスライディングするようにクローズドガードに移行。シモエスの頭を下げさせてのハイガードを試み、また身体をずらして角度を付けて揺さぶりにかかるが、シモエスは身体をしっかりとこじ入れた、また腹這いになるが如く低い姿勢を作って潰してゆく。
残り1分。サンタナは上半身でオーバー&アンダーフックを作り、シモエスの頭を抱えつつ足をバタフライで跳ね上げてのクラシカルなスイープ狙い。重心を低くして耐えるシモエスに対し、その頭を下げさせようと上半身を抱え続けるサンタナに、何とレフェリーが消極性のペナルティのマイナスポイントを宣告。
土壇場で痛恨の失点を告げられたサンタナは、今度はハイガードからの展開を試みるが、ここでシモエスは両足担ぎから体重を掛けて残り時間をやり過ごす戦法に移行。結局これが効を奏して時間切れで、シモエスが最重量級に続き無差別級も制覇。14年に続いて二度目の今大会完全優勝を飾った。
終盤、下からの仕掛けを作っている最中だったサンタナへのペナルティは、気の毒の一言。誤ったコールによって勝敗が決まってしまったとさえ言えるかもしれない。しかしそれがないままこの試合が終了したとしても、積極的にパスを仕掛け、何度か横に付きかけたシモエスがレフェリー判定をものにした可能性は少なくない。とまれ、世界最高峰のグラップラー二人が持ち味を活かして仕掛け合い、そしてそれを熾烈に潰し合う、世界大会無差別級決勝戦に相応しい見応えのある一戦だった。
■リザルト
【ウルトラヘビー級】
優勝 ユーリ・シモエス(ブラジル)
準優勝 グスタヴォ・ディアス(ブラジル)
3位 マイケル・ジョンソン(米国)
3位 ムハンマド・アリー(ブラジル)
【無差別級】
優勝 ユーリ・シモエス(ブラジル)
準優勝 ムリーロ・サンタナ(ブラジル)
3位 ジャレド・ドップ(米国)
3位 アウグスト・メンデス(ブラジル)