【UFN34】菊野克紀 (02)「レスリングや寝技の練習はしない」
【写真】インタビュー中、常に笑顔を浮かべ続けていた菊野克紀(C)MMAPLANET
1月4日(土・現地時間)、シンガポールのマリナベイ・サンズで開催されるUFN34「Ellenberger vs Saffiedine」でクイーン・マルハーンと対戦する菊野克紀インタビュー第2弾。
三日月蹴りが代名詞だった菊野が、自らのスタイルに限界を感じ、強くなるために模索していたときに出会った沖縄拳法空手。空手の型、武器術の稽古をすることで、彼のMMAはいかに変わったのか。
<菊野克紀インタビュー、Part.01はコチラから>
──沖縄拳法空手ですか……。
「ハイ、拳法というと中国拳法と間違われるのかもしれないですが、沖縄の空手……手(ティ)なので沖縄拳法空手道。沖縄の手なので沖縄拳法と呼ばれています」
──MMAには色々なファクターがありますが、沖縄拳法を含めどのような練習を行っているのでしょうか。
「週に3度、MMAのスパーリングをしていまして、あとは空手の型、武器など対練ですね。レスリングや寝技をするということはないです。MMAの練習と空手の稽古ですね。あとは高阪(剛)さんに指導してもらって、ウェイトを30分ほど週に2回やっています」
──つまり寝技や組技の技術練習は行っていないということですか。
「MMAのスパーリングのなかで週に一度、高阪さんのドリル練習があるので、そこでUFCのための技術を高阪さんに教わっています」
──MMAのスパーリングはどのようなメンバーで?
「マキシ(モ・ブランコ)、吉田善行さん、一慶さん、秋山(成勲)さんも来られますし、ウチのチームだと悠太ですね。高阪さんの人望で、色んなところから強い選手が来てくれます。高阪さんは常にこちらの質問に対し、明確な言葉で納得できる答を持っていてくださって。何よりも自分の考えを押し付けるのではなく、こちらの良さを伸ばそうという指導なんです。そこで足りない部分を補完してくれる。僕のような異色スタイルの人間が指導を受けるなかで、高阪さんはベストの先生です」
──なるほど、レスリング、柔術、ボクシングというものは一切練習していないのですね。
「MMAの練習のなかに含まれているレスリングや寝技以外は、一切行っていないです。色々とやってきたなかで、今の僕にとってはこの練習形態がベストです。限られた時間、体のこともありますし、何でもやるのではなくMMAと空手をやっています」
──沖縄拳法の稽古で身に付けているモノにより、それ以前とMMAは変化しましたか。
「全然違います。まず、全ての発想が違うんです。地面を蹴って、腰を捻って打つというのがボクシング的な打撃の発想では当たり前じゃないですか。これが真逆の発想で、地面も蹴らないし腰も回さない。重心の移動や体を繋ぐということをベースに全てができているんです。空手は戦いですから、投げもあります。全てが変わったのですが、それはこれまでやってきたものに上積みしているという形です」
──私はあらゆる格闘技が体術だと思っていますが、空手の稽古で得た体の使い方が、現代MMAの組みやテイクダウンの攻防に生きることもあるのでしょうか。
「発想はレスリングとは違うのですが、こういう姿勢を取ると強いだとか、こういう重心の移動をすると相手の重心を崩すことができるということはあります。そういうことはすぐに繋がります」
──空手の稽古をすることで体の使い方を覚え、MMAでの体の使い方は変わりましたか。
「変わりましたね。相撲、レスリング、柔道、ボクシングもですけど、共通点もあります。良い体の使い方って突き詰めていくと、やはり同じなんですよね。前に出すときは、手を内側に捻る。締めるときは外側に捻る。高阪さんに習ったことと、空手で習ったことが同じなんです。共通することはあるんです。ただ、レスリングやボクシングというのは西洋のモノ、筋力に恵まれた人々が創ったスポーツ、文化です。僕は日本人で、そこまで体力的に恵まれていない人間が創った空手が合っていると思います」
──一時期、蹴りを使わなくなったことがありました。昨年の北岡戦などもそうでしたが、あの頃の菊野選手の試合をそれ以前と比較して、持ち味が消え、何がしたいのか分からないと思ったことがありました。何がしたいのか分からないという声が周囲から挙がったことは?
「いやぁ……、もう辛かったですよ(苦笑)。ただ、それ以前のやりかたを続けていると、もう……そうですね、UFCのチャンピオンになれるかという部分で、自分に自信を持てなかったです。青木真也選手に勝てる自信が持てなかったんですよ。だから変えないといけなかった」
──そこで沖縄拳法空手に出会ったと。では、現実問題として今のスタイルになりリングで戦う、ケージで戦うという部分で違いありますか。
「僕は金網レスリングを使うタイプではないので、その広さが良く働く部分と、そうでない部分があります。だから、あまり気にしないようにしています。自分がケージを使うのではなく、使われることは想定して高阪さんに脱出方法を教わっていますが、金網をそれほど意識しているということはないですね」