【Pancrase】シカゴに出稽古へ。石渡伸太郎<02>「イジーがレスリングのイメージを変えてくれた」
【写真】既にイジーの下に合流している石渡。取材は1週間前、渡米4日前に行われた (C)MMAPLANET
体重超過のジャスティン・ブルッキンズを相手にバンタム級KOP王座の防衛に成功し、9月になりイジー・スタイル・レスリングクラブへの出稽古に旅立った石渡伸太郎インタビュー第2弾。
なぜ、ここに来てイジー・マルチネスとの練習が必要になったのか。なぜ、イジー・スタイルがそこまで石渡にハマったのかを渡米直前に石渡に尋ねた。
<石渡伸太郎インタビューPart.01はコチラから>
──そんなブルッキンズ戦を終え、シカゴのイジーの下へ出稽古へ行くということですか。それは何かブルッキンズ戦の内容と関係しているのでしょうか。
「試合が終わってからの思いつきで、ブルッキンズ戦とは直接は関係ないです」
──では、国内での練習内容に何か問題でも抱えていると考えていますか? CAVEという拠点があり、Team Otokogiというプロ練習もある石渡選手ですが……。
「いえ、問題もないですし悩んでいないですよ」
──自分などは取材でOtokogiの練習を見させてもらうことがあるのですが、参加メンバーにバラつきがある様に感じられるのも事実です。
「う~ん、試合前だけに来る人も、Otokogiを主にしている人間もいるのは事実ですが、それは人それぞれです。それに練習に来る顔触れが多い方が、Otokogiを主としている僕らの練習にもなりますから。だから、イジーのところへ行こうと思ったのは、そういうこととは関係ないです。
そうですね……。ブルッキンズとの試合で組んだ時に『全然、勝てる』って思ったんです。組んだらだいたい相手の強さって分かるじゃないですか? ディフェンスする側に回ってはいたのですが、投げることができるって思ってテイクダウンを仕掛けたら、倒すこともできました。
それがブルッキンズ戦の収穫だったんです。打撃の方は空振りばっかしているんで(苦笑)、組みの部分を自分の強味にするためですね。伸ばすところを伸ばそうという想いで、イジーにまた習おうかと思ったんです」
──ジャクソンズMMAでイジーの手ほどきを受けたのは、もう5年近く前ですよね?
「そのジャクソンズでの練習から戻って来て、確かゴン格さんに『遅咲きのアウトボクサー』って書かれて……。そう、遅咲きって(笑)。随分と試合スタイルが変わったということなのですが、それを全部仕込んでくれたのがイジーだったんです」
──なるほど。確かに渡米前には、私も石渡選手の試合で『当たったモノ勝ちの勝負で勝った』と書き記し、当時の師匠の桜田直樹さんに『とんでもない、こっちはちゃんと計算してやっているんだ』とお叱りを受けたことがありました……。
「あぁ、そりゃあ怒りますよ(笑)。不死身夜天慶ですよね? あの時は僕は左ストレートを全部、インサイドで打ち抜いていたんですよ。天慶選手が振り回し、僕は左ストレートだけ真っ直ぐ伸ばして。それが僕の勝算だったので」
──いやぁ、スイマセンでした。
「そうしたら当たったモン勝ちって書かれ、その次は遅咲き……チャンピオンになっても誰も取材に来ないし(苦笑)」
──おっと、ここで格闘技メディアへの恨み節が出てきますか(笑)。
「随分な扱いを受けてきましたよ。当たったモン勝ちの勝負なんてないですからね(笑)。軌道から全部、練習しているんですから」
──こちらの不勉強だったことを謝罪させていただきます。この場を借りて。
「まぁ、良いや。とにかくイジーが僕の持つ、レスリングのイメージを変えてくれたんです。それまでレスリングって、中腰になり、足腰を踏ん張って倒し合うモノだって思っていたんです。
僕の勝手なイメージですが、力ずくで投げるモノだった。対して僕は他の選手と比較してマッチョでもないし、中腰になっているのも嫌だし(笑)。体を自由に動かしたい。力が入っていない状態でパッと動く。それが感性として、戦ううえで大切だと思っていたんです。
その部分と相反しているのがレスリングというイメージがあったので、僕はずっとレスリングをやってこなかった。いや、やろうとはしていたんですけど、できなかったんです。
で、ジャクソンズでイジーにレスリングの指導を受けたら──何か柔道みたいだったんです。足払いでスパッと倒して。タイミングで投げる、力に頼っていなかった。イジー自身は体も丸っこくて、俊敏性が一見して感じられないのですが、体の使いこなし方、足の捌き方にしても凄くて……。彼のそういうレスリングに感動しました。
最初、ジャクソンズにいて練習していて──強い選手たちとスパーやトレーニングをしていても、自分のなかでは『強くなっているのかな?』って疑問を感じていたんです。
そうしたら途中からイジーがやってきて、そこからガーンと変わったんですよ」
──まさにイジーがいなければ、今の石渡選手はいなかったということですね。
「ハイ。手でやる柔道……、イジーのテイクダウンは足払いだと思いました。帰国後、その感性をもって試合に臨んだら、面白いようにテイクダウンが取れるようになりました。単純に楽しかったです、イジーにレスリングを習っていると。払い腰とか、足払いもあって──柔道をやっていた僕とフィットしたんですよね。
そしてガンガン、テイクダウンを取れるようになったと自分では思っていて……それを持って試合に出ているのに、でも……段々と決まらなくなってしまったんです」
<この項、続く>