【UFN34】UFC出陣、川尻達也(03)「いつも通りに戦い、結果出す」
【写真】言葉を聞くほどに楽しみになってくる川尻のUFC参戦だ (C)MMAPLANET
2014年1月4日(土・現地時間)、シンガポールのマリナベイ・サンズで開催されるUFN34「Ellenberger vs Saffiedine」で、ハクラン・ディアズと戦うことが決定した川尻達也インタビュー最終回。
誰もが高い壁のように感じるUFC参戦に対し、川尻は平常心で挑む。平常心の大切さを知った裏には2011年4月のギルバート・メレンデス戦が存在した。
<川尻達也インタビュー、Part.01はコチラから>
<川尻達也インタビュー、Part.02はコチラから>
――ギルバート・メレンデス戦、2011年4月にサンディエゴで行われた試合ですね。
「あの時は海外とかってことじゃなくて、東日本大震災の影響で練習もまともにできなかった。ケージに立って試合を成立させた時点で、全てを使い果たしたっていう気がしたぐらいだったんです。色んな人に試合に出ることを止められました。でも、あの状態で試合に出ないなんて選択はできなかった……。
【写真】2011年4月9日、東日本大震災後から1カ月経たないうちにストライクフォースでのギルバート・メレンデス戦を迎えた川尻。精神的にあれ以上、厳しい状況はないと断言する(C)GONGKAKUTOGI
辻褄を合せて、何とかケージに立った時点で全てのパワーを使い果たし、まともに試合ができる状態ではなかった。あの時と比較すれば、プレッシャーも環境的にも、辛いことは格闘技人生では起きない。海外での試合も、シンガポールでなくても、米国だったら問題ないって今は思っています。まぁ、ブラジルでジョゼ・アルドと戦うとか以外は大丈夫です(笑)」
――同じUFCとの契約でも、下から上がっていく選手と、世界を睨んで戦う選手と2種類がありますが、ここでジョゼ・アルドの名前が出てくるということは、そのつもりのUFC参戦ということで理解しても良いですね。
「もう若くないですし、『一戦一戦、キャリアを積んで頑張ります』って言うつもりは全くないです。実際には厳しいですが、初戦でアルドでも構わないぐらいの気持ちでいます」
――最短距離で世界王座に挑戦する場合、どれぐらいでアルドと戦うことになるのか、青写真を描いていますか。
「1月にハクラン・ディアズに勝って、春先ぐらいにランカーのトップの人ぐらいとやって挑戦権を取る。夏か秋ぐらいに日本大会があってタイトルマッチ、ハハハハハ」
――秋口にUFC JAPANが開催されれば良いですね。
「まぁ、完全に僕が有利な状態でジョゼ・アルドに挑戦するというのが、一番理想的なんですよ(笑)」
――1月4日のハクラン・ディアズ戦をクリアしたとして、その春先に誰と戦うのか。フランキー・エドガーがタイトル戦線から離れ、BJ・ペンとレジェンドTUFコーチ対決に回っているのは、川尻選手にとって好ましい状況です。
「だから、カブ・スワンソンが一番タイプ的には戦いやすいかなって思っていたんです。チャド・メンデスも小見川(道大)さんと戦った時は、MMAとして見てテイクダウンはチョー下手くそ。素人みたいだって思ったんです。完全にピュアレスリングで、距離とかタイミングとか関係なしにスピードとフィジカルだけで戦っているみたいで。あれぐらいだったら、テイクダウンできるなって思っていたんです。俺のテイクダウンの方が、レベルが高いって。
それがこの前のクレイ・グイダ戦を見てみると、打撃のレベルも何段階も上がっていたんですけど、テイクダウンのレベルもメチャクチャ上がっていました。完全に別人になっていて、『ちょっとヤバいな』って正直思いましたね。ドゥエイン・ラドウィックがコーチになってから変わったんですかね。明らかに別人になっていたんで。ちょっと危険ですね」
――チャド・メンデスを評するときに、『凄く』ではなく『ちょっと』という言葉を用いる川尻選手が頼もしく感じます。
「アハハハハ。そこはもう、そう言わないと終っちゃいますからね。一人のときは、違うようなことも考えるけど、自らをネガティブにいうことはプロファイターとしてダメですよ。だって皆の期待を背負って、皆に応援してもらって戦っているわけだから。それで飯を食わしてもらっているので。嘘とは言わないけど、無理をしてでも自分が強いと思ってもらえるような発言をしないと。
その言葉が勢いをもたらせてくれることもあるので。『相手が強くて、勝てないだろうから期待しないで』なんて言っていたら、誰も僕の試合を見たいと思わないし、UFCだって高い金を払おうと思わないですよね」
――本音と建前、試合前は建前で試合後は本音で……ということで、またインタビューの方宜しくお願いします(笑)。ところで、UFC参戦を前にして練習環境の方はどのようになっているのでしょうか。
「ずっと変わらないですよ、茨城とパラエストラ松戸、JB SPORTSでやっています。あのう……、変わらないことが大切だと思っています。UFCだからだとか、対戦相手がこうだからって練習環境を変えるファイターもいると思うんですけど、それは自己満足で、その前にもっとやるべきことがあるだろうって。何よりも僕は今の環境に限界を感じていないから、そういう風に自信を持って言えるんですけどね。
とにかく浮き足立たないで、いつも通り練習して、いつも通り戦うことが大事で。そうすれば結果はついてくると信じてします。何も特別なことだと思わないで、いつも通り戦いたいです」
――オクタゴンになりユニファイドルールになっても、魔娑斗や武田幸三とK-1ルールで戦うよりも特別じゃないですからね。
「アハハハハ。そうっスね。あんな経験した人、いないでしょう。それは僕の強味でもあるし……だから気にしてもしょうがないですよ。魔娑斗とK-1ルールで戦うよりは、ルールにも環境にも馴染めるので。あの時なんて、グローブをはめた時点でトイレにも行けなくなるし、訳が分からない状況で試合が始まりましたからね(苦笑)。最後まで『俺、なんでこのグローブつけているんだろう』って感じだったんで。
それに今が一番強いと思うし。UFCで戦うことを踏まえても、震災の時のメレンデス戦のときのように精神的に、もっと辛いことを経験しているので、これが一番しんどいことではない。俺だったら乗り越えられるという自信もあります」