【Interview】ドミニク・クルーズ 「2時間集中できなくて、どうする?」
【写真】アライアンスMMAのプロ練習、グラップリングのテクニックの時間。途中で全員を集め、集中して練習するように厳しい口調で注意をし始めたドミニク・クルーズ(C)MMAPLANET
8月某日、サンディエゴのアライアンスMMAでドミニク・クルーズが、大声でチームメイトを叱り始めた。この日はグラップリングのテクニック練習の日。テイクダウンを切ってがぶりから、バック、あるいはケージ詰めて立たせないという反復練習を続けるなか、90分を越えたあたりから、パートナーを組む者同士、体を休め口を動かすことが増えてきた。
プロ練習で2時間というのは、正直なところ長い。そして、ドリルという地味な練習、その繰り返しだけに重要だとドミニクは言い切る。そんな一幕が見られたプロ練習後、2011年10月を最後に、前十字靭帯を断裂しオクタゴンを離れているUFC世界バンタム級チャンピオンにインタビューを試みた。
――練習の最後、ジムメイトをかなりの勢いで叱責していましたね。驚きました。
「必要だから、言ったんだよ。彼らのことを尊敬しているから、本音を言えるんだ。そういう人間関係でないと、ああいう風に大きな声を出すことはできないよ。でも、自分が言っていることを理解してもらわないといけない。彼らは僕のチームメイトだからね。僕らは1日、1日と練習することで成長しなければならないんだ。
自分の知っていることは、全てチームに伝えている。僕はベストを目指し、やってきた。そこで得たことを彼らに伝えている。必要だから練習しているんだ。彼らも分かっているから、不平を言う者はいなかっただろう? 2時間ぐらいのトレーニング、しっかりと集中しないでどうする? 『話をやめて、体を動かせ』っていうことだよ。
練習は僕らにとって仕事だよ。会社でボスが仕事の指導をして、実践させている時に、従業員が話に夢中になって、手を休めていたらどうなる? 大問題だよね。他の仕事を見つけろってなるよ。つまり、2時間のトレーニングに集中できないなら、他の仕事を見つけろってことなんだ。
夜にも個々の練習がある。2時間の練習後には、夜に控えて休憩時間がちゃんと設けられている。お喋りなら、その時間にできるはず。そうやってリラックスして、夜の練習でまた集中すべきなんだ。今日のグラウンドワークのチーム練習は、とても大切なものだ。それを蔑にしてはいけない」
――2時間、とてもタフなことだとは思いますが、ドミニクの言っていることももっともですね。その姿勢があったから、ドミニクは頂点を究めることができた。
「成功を収めるためなら、なんでもやってきたよ。無駄な事なんてないんだ。2時間なんて、長くないよ。それぐらい集中できないと。2時間集中して、ようやくどれだけのことが身についたかってことなんだ。僕はそう思うよ。確かにドリルの繰り返しって、アドレナリンが分泌されるような練習じゃないかもしれない。だからこそスパーリングの日になると、全員が揃う。誰も話なんてしないし、ずっと集中している。
スパーリングの日は、めちゃくちゃアドレナリンが出ているからね。ずっと集中できる。ドリルはそういうわけにはいかない。その分、自分の頭のなかでドリルがいかに大切か理解し、集中力を切らさないようにしないとね。そうやって動きを理解し、動けるようになる方が、ずっとスパーリングより難しいことなんだよ。
2時間だ。それぐらい集中できないと。この2時間、集中できるかできないかで、差が出てくる。それって世の中の常識じゃないかな、MMAに限ったことじゃないよ。より集中できたほうが、より得るモノが多くなる。なぜ、体重が減るんだい? 食べる量よりも、多くカロリーを消費するからだ。これも世の中の常識だよね。2時間集中するのと、2時間集中力が持たないんじゃ、成果は違ってくる。たったの2時間なんだ。凄く負荷が掛かるわけじゃない。
5時間の練習時間なら、休憩時間を設けて、話をしても良いと思うよ。たった2時間、好きでやっていることだ。頼まれて、ここにきているんじゃない。好きで集まっているんだ。誰だって、集中できるはずだよ(笑)」
――逆に集中できないようでは、ドミニクのようになれないということですね。ところで、ヒザの回復具合は順調ですか。1月に練習を見た時は、まだテクニックの指導ぐらいしかできていなかったですが、もう打撃のスパーリングもしていましたね。
「ヒザはまだ弱いね。固定できていない。ただし、できることはやってきた。だから、グッドシェイプだよ。でもスパーはボクシングだけだね、まだ。あとはドリル・レスリング、テイクダウンやグラップリングは、まだやっちゃいけない。蹴りも使っちゃだめだ。グラップリングができるようになれば、キックも使って良くなる。次の段階がキックとグラップリングができるようになることだよ」