【PXC37】PXCバンタム級王者・田中路教「下からの鉄槌で……」
【写真】戦い終ってノーサイド、日本とフィリピンのMMAの未来が控え室で健闘を称えあった (C)MMAPLANET
18日(土・現地時間)にフィリピン、マニラのイナレス・スポーツセンターで行われたPXC37。メインで田中路教がクリサント・ピットピットンゲを破り、PXCバンタム級王者に輝いた。
しかし、打撃ファイターと思われたピットピットンゲに1R終盤にリアネイキドチョークに取られるなど、予想以上の苦戦を強いられ、その後も簡単に試合を進めることができなかった。予想以上のタフな展開だけに、そのベルト奪取の価値も上がった田中を大会終了後に宿泊先でキャッチした。師・勝村周一朗のチャチャとともに新PXCバンタム級チャンピオンのインタビューをお届けしたい。
――おめでとうございました。
「ありがとうございますっ!!」
――某先輩に次ぎ、泣き虫キャラ確定として良いでしょうか。
「(笑)」
勝村 いきなり口挟んで良いですか? 僕が修斗のベルトを獲った時なんですけど……。
「あの話はイイじゃないですか(苦笑)」
勝村 あの時の映像は普通に残っているんですけど、僕が大喜びしているところで、リング下が抜かれてボロボロになって泣いているんですよ(笑)。普通に今でもDVDで見られるんで。
――じゃぁ、もともと涙もろいのですね。
「泣き虫なんですかねぇ……。でも、水垣さんより泣き虫じゃないです(苦笑)」
勝村 勝ち名乗りを受けたときは、頑張ってこらえていたよね。
「試合が終わったばかりのときは、悔しさの方が大きかったんです」
――ケージをバシバシ、殴っていました。
「メチャクチャ悔しくて……。あの終り方は」
勝村 胸を張らなきゃだめだよ。
「ハイ。でも最近、びっくりするくらい涙もろくなってきましたね……」
――早いですね。そっちも早熟ですか。
「ダメですね。マンガとかでも――号泣してしまって。この間、少年チャンピオンの『バチバチ』ってマンガを読んでいても、涙が止まらなくなってしまったんです」
――まぁ、泣き虫の話はこれぐらいにして、試合前にインタビューさせたいただいた時は、余裕がありすぎるぐらいにあるなって感じたのですが。実際、ケージのなかでクリサント・ピットピットンゲと対峙して、プレッシャーの方はどうでしたか。
「意外に……、もうチョットあるのかなぁって。こっちのフェイントとかにも反応してくれていて、もっとガンガンくるのかなって思っていたんです」
――エッ、これまでもカウンター一発っていう感じの試合をしていたじゃないですか。
「まぁ、そうなんですけどね……(苦笑)。確かにカウンターの選手なんですけど、僕から行かなければ向こうから来るだろうって予想していたんです。それが、あっちも戦い辛そうにしていたんで。ただ、寝技になるとすぐに終わせることができると思っていました」
――では、1Rでグラウンドに入った時は、もう一本が取れるという気持ちだったのですね。
「試合前はそのつもりでした。でも、最初にテイクダウンを狙った時にもの凄い力で弾き飛ばされて、ケージに詰められてしまって。あの時に『組み技でも、そんな簡単に終わらせることはできないな』って思いました。あの力はビックリしました」
――そこからアジャストが必要だという感じになりましたか。
「やることは同じなんで、そのまま行くしかなかったんですけど。ヒジを空振って寝技から逃げられたんですよ。まだ、1Rは自分も硬さがあったのかもしれないです」
勝村 硬さではないよね。
「ハイ、経験不足です……」
――田中選手は思い切りが良いから、その分、すかされたりすると相手に付け入られることがありますよね。それにしても脇を差し返されて、そのままバックから絞めを狙われるとは想像もできなかったです。
「あれは僕も驚きました。最後の方は結構苦しかったんですよ」
――なおさらレフェリーにしっかりと時間通りに止めて欲しかったですね。
「エッ、そうじゃなかったんですか?」
――10秒ぐらいは、そのまま攻められていましたよ。主催者がレフェリーに文句をいうと、『なら、ちゃんと聞こえる合図をしろ』って逆切れしていましたからね。
【写真】レフェリーが本部席からの怒号で、ようやく1Rのタイムアップを知る。危ない場面だった(C)MMAPLANET
「マジっすか? 」
勝村 半端ない盛り上がり方だったから、セコンドをしていても10秒前のカチカチから聞こえなかったんですよ。
「僕も全然、分かっていなかったです。最後の10秒ぐらいが一番苦しかったんですよ」
勝村 絞められだした時が残り20秒ぐらいだったんで、バックは取られても強いのは知っているから、大丈夫だって思っていたんです。
「そうですよね。20秒ぐらいだっていう指示は聞こえていたんです」
勝村 そう、ちゃんと聞こえていたよね。
「だから、なんか長いなぁとは思っていたんです。左手をフックされていたのが……。まさか、あんなふうに攻められるとは思ってもいなかったです」
――ではラウンド終盤でなく、中盤あたりにあの形になっていればもっと危なかったということですか。
「もしかしたら、ヤバかったかもしれないです。完全に自分の油断でした。それにしても、強かったですよ。本当に力が強いと思いました。マウントを取った時も、ビックリしましたよ。
下からの鉄槌で、目の前に星が飛びました(苦笑)。下からの鉄槌がアゴに当たって、『これはまずい』って頭をつけにいって」
【写真】2Rなどは上体を起こして、ガツガツとパウンドを落していた田中だが……(C)MMAPLANET
――写真を撮っていても、そこは分からなかったです。
勝村 俺もそれは分からなかったよ。
「そうっスか。あそこから、上体を起こして殴るのがチョット怖くなっちゃったんですよ」
――で、俺が行くなっていう腕十字に行って(笑)。
「取れると思ったんですけど……」
――終盤はトップキープの感はありましたが、それができたのもテイクダウンを決めることができたから。あの強烈なローを受けて、組みつくのも大変だったのではないですか。
「本当に仕掛けづらかったです。初めてですね、ああいう風に仕掛けるのが難しかったのは。本当は寝技でも、体を起こしてガンガンと殴りに行きたかったんですけど、手堅く攻めることになりました」
――2R、3R、4Rは取ったかと。だから、5Rにテイクダウンを取った時点で、変なブレイクが入らなければこれは逃げ切れるなと思いました。
「そうしたら返されてしまって。アレ、何で返されたんでしょうね……」
【写真】この状態で勝負有りと思われたが、思わぬ反撃を受ける。その理由はインタビュー後編で(C)MMAPLANET