【on this day in】10月03日──2004年
【写真】結構な力技、MMAの拡大があと5年早ければ──ムッセは欧州のエディ・ブラボーになっていたかもしれない(C)MMAPLANET
Shooto Initial Collison
@スウェーデン・ストックホルム、フライシュセット
「『でたっ』。その瞬間、もしMRIやCTスキャンで僕の心臓の動きを捉えることができれば、ドクンと大きく波打っていたはずだ(笑)。今から11年前の今日、ストックホルムで開催された初めてのプロ修斗、その第4試合に出場したムッセ・ハッセバルがダーヴィッド・レイエナスにサイドを取られた瞬間、ムッセは左手でレイエナスの右腕を掴んで引き下げる。その刹那、上を取った相手の背中越しに自らの右手を──右腕のヒジ裏から通し──右手首を掴んだ。ムッセクラッチの完成だ。ここから右足をレイエナスの上から一本入れ、右側へ肩ブリッジすればムッセフリップ。サイドを取り返すことができる。そんなにコトは上手く運べないが、ムッセクラッチの状態を作れば、殴られないし──相手の顔面はがら空きとなり、サイドを取られながらも逆に左の拳をくれてやれる。寝技でヒザが認められているルールなら、左ヒザを突きさすこともできる。もちろん、そんなことをせずにヒップエスケープを使い、足を戻すのがセオリーだ。でも、セオリーを知ったうえで独特な思考を持つ、行動に移すことを僕は個性と呼んでいる。何よりも、常用外のこの動きはムッセクラッチなんて名称を使わず、ムッセ・ハッセバルなんて知らなくても寝技、そしてケージ際の攻防で、今も見られる。僕にとってこの形は永遠にムッセクラッチ。実戦で初めて、この動きで印象づけてくれたのは、ムッセだから。本職はCMディレクター、クリエイターらしい──個性溢れるMMAファイターだった」
on this day in──記者生活20年を終えた当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。