この星の格闘技を追いかける

【on this day in】9月11日──2008年

11 09 08【写真】もっともカーロス・グレイシーに似ていると言われているのが、ヒリオン・グレイシーだそうだ(C)MMAPLANET

Rillion Gracie
@フロリダ州マイアミ、グレイシー・センター・オブ・セルフディフェンス
「英語も話せるようだが、取材をするには語彙が十分でないと奥方や周囲の人間に通訳を頼み、彼はこう言った。『柔術の定義が変化するのではなく、柔術の技術を使う状況が柔術に変化を求めているのです』。唸るしかなかった。柔術には護身、競技柔術、そしてMMAの3種類の──、あるいはノーギを加えた4つの柔術が存在するといわれることが多い。そんな意見に対して、柔術の始祖カーロス・グレイシーの最後の息子であるヒリオン・グレイシーは、波一つ立たない山あいの湖面のような静かな口調で反論した。常夏のマイアミの空気までもが、ヒリオンの周囲だけ高原のソレを感じさせるほど澄んでいる。そう感じてしまうような雰囲気をヒリオンは纏っていた。この仕事を始めて14年目、ヒリオンは僕にとって33人目のグレイシー姓を持つインタビュー対象だ。これほどソフトなグレイシーに巡り合ったことは、それまでなかった。最も似通っているのはホジャーだろうか。ただし、ホジャーが本当に好青年でジェントルなのに対し、ヒリオンにどこか刀を鞘に収めているような怖さを感じていた。そんなヒリオン評をヘンゾに話したところ、『マナブゥ、マイフレンド。それは正しい。怒らせれば一番怖いのはヒリオンだ。私よりクレイジーだ』と笑った。ジャンジャック・マチャドはヒクソンと並ぶ実力者はヒリオンだと言い切った。そういえばホジャーのMMA戦には必ずヒリオンの姿がコーナーに見られる。何よりもエリオ系のホリオンが、ホイスをグレイシー代表としてUFCに送り込んだ時も、カーロス系からただ一人、彼がセコンドに就いていた。一族の誰もが認める実力者が話してくれたなかで、冒頭の台詞よりも胸に突き刺さり、忘れられない言葉がある。『人生のプライオリティに柔術がない人々に指導するのも柔術です』──この深さ、ちょっとない」

on this day in──記者生活20年を終えた当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。

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