【Interview】サウロ・ヒベイロ(01)「柔術と共にある生活が、ある」
【写真】エリオ・グレイシーと嘉納治五郎のポートレイトが飾られているのが、サウロ・ヒベイロの格闘技感を表している (C)MMAPLANET
ホイラー・グレイシーのインタビューに続き、現在発売中のFight&Life Vol36に掲載中の「Fight&Life 格闘紀行=サンディエゴ編」に登場する格闘家インタビューの第2弾サウロ・ヒベイロ編をお届けしたい。
競技柔術家として最高の結果を残し、実弟シャンジとともに自らの信じるThe Way of Lifeとして柔術の普及に努める。そんなサウロの柔術論に耳を傾けてほしい。
――サウロがサンパウロにやってきて、もう5年ほどが過ぎたと思うのですが、もうサウロといえばマナウスでもリオでもなく、サンディエゴの柔術家というイメージになってきました。
「6年だね。2007年1月にサンディエゴにやってきて、2月にユニバーシティ・オブ・ジウジツをオープンした。プロフェッショナルとしての柔術キャリアを終え、柔術を健康増進、体調管理、精神の安定という目的で広めたいと思っていた。柔術とヨガを融合させたりしてね。そういう意味で、サンディエゴは完全に目的に合致した土地だったんだ。
山がある。緑あふれた公園がある。美しいビーチがある。健全な生活をおくることができる条件が揃っているんだ。これだけ都市機能が整っていてなお、渋滞も大したことないし、空気もきれいだ。LAのような治安の悪さとも縁遠い。南カリフォルニアを代表する落ち着いた街なんだ」
――柔術を楽しむために、ピッタリな街だということですね。
「その通りだ。フィットネスが好きな人々、アウトドアスポーツが好きな人々と柔術が結び付きやすい。健康的な人生、つまり柔術と共にある生活を知ってもらい、実践できる」
――サウロもコーチするMMA関連のジムも多いです。
「MMAは柔術ほど急速に普及していないと思う。確かにアリアンス、アリーナ、ビクトリーなど素晴らしいチームが存在する。でも、MMAがビジネスとして成り立ちつつあっても、バーでUFCを視ている多くの人が、MMAが何か分かっていない。柔術に関係している人々が、柔術に対し非常に深い造詣を持っているのとは違ってね。
UFCを視ていると、ジョー・ローガンが『これは柔術のテクニック。道着を着ていなくて、打撃を考慮されている』なんて解説しているけど、スポーツバーでUFCを視ている人に柔術も柔道もレスリングもない。グラップリングとしか認識はない。
もちろん、エリオ・グレイシーがブラジルで創造した柔術が米国に渡り、普及しているなど歴史も知らない。MMAは柔術が世界に広まるのを凄く助けてくれた。ただし、今となってはMMAを通じて広まった柔術という言葉は、本当の意味で柔術を意味していない。
柔術ではセンセイが、シドーシンを伝え、精神的な部分で人々の成長を促すものでもある。MMAで得られるものはコート、そしてベストフレンド、トレーニングパートナーだ。悪くない。素晴らしいよ。ただし、柔術が与えてくれる規律の概念のようなものを手にすることはない。もちろん、柔術家たちもMMAのグループに加わっている。それは互いに強くなるための協力関係だね」
――それも素晴らしい人間関係だとは思いますし、翻って柔術アカデミーのなかにも規律を教えるということを重視していないところもあると思います。
「そうだね。ビジネスが第一になっているんだろうね。ただし、私にとって柔術というマーシャルアーツは、ビジネスではない。私の生き方だ。弟のシャンジもそうだ。金儲けのために米国に来たわけじゃない。ブラジルで十分な生活ができていた。この柔術というスポーツを広めるために、まず開拓すべき土地が米国だった」
<Bio>
Saulo Ribeiro
1974年7月2日、ブラジル・マナウス出身。
1997年~2000年ブラジリアン柔術世界選手権優勝
2000年&2003年ADCC世界サブミッションレスリング選手権88キロ優勝
MMA戦績5勝1敗