【on this day in】5月07日──2011年
【写真】ミスマッチ過ぎる状況で、貝島さんはリョートの動きを解析してくれた(C)MMAPLANET
Taichiro Kaijima
@カリフォルニア州ロサンゼルス、PKGジム
「よくもあんな不躾な依頼を承諾してくれたモノだと今でも思う。この8日前にリョートが、ランディ・クートゥアーを右の前蹴りで倒した。左足を振り上げ、空中で足を入れ替えて右足で鉄人のアゴを蹴り抜いたリョート。彼の動きを金網に囲まれたMMAジムで、空手衣を着て再現してくれたのが、貝島太一郎さんだった。『ここから蹴り足を下ろした時に、そのまま裏拳で突けばクーサンクーになりますね』と、興味だけ先走りし空手の知識がまるでない僕に非常に丁寧に説明してくれた。クーサンクー、つまり観空大という型だ。リョートが空手の型にある動きで勝った事実に、貝島さんは『空手の鍛練を積んだからこといって、真似ができるものではない。型の動きをそのまま組み手、特にMMAに使うのは考えられない』と正直に話していた。間違っても、だから空手は凄いんだ──という雰囲気は一切なかった。そもそも、米国留学とともに一度は離れた空手。健康維持のために通いだした道場で、西山英峻先生の空手を知り、人生が変わるほどのめり込んだ。今では米国国籍を持ち、ノースハリウッドにVmacという道場を持つ。『型は空手の動きの象徴であり、そこに隠されている原理を学ぶためにある』という教えを受け、国際伝統空手連盟の型と組み手を繰り返す複合競技で結果を残してきた。もう、西山空手以外の空手を受け付けない。西山空手の原理に当てはまらないのだから、WKFもフルコンタクトも空手ではないと言い切ってしまう。ソフトな物腰と、決してぶれることがない軸を持つ。表面ばかり固くて、中はふにゃふにゃな僕と、貝島さんを引き合わせてくれたMMAに感謝したい」
on this day in──記者生活20年を終えた当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします