【WPJJC 2015】プレギーサ、キーナン、ロ、トランス、最強柔術家の競演=無差別はブシェシャが制す
4月22日(水・現地時間)から25日(土・同)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのザイード・スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2015が開催された。
WPJJC2015、今回は最強決定戦=無差別級の戦いの模様をレポートしたい。
<無差別級準々決勝/6分1R>
キーナン・コーネリアス(アトス)
Def. 2-2 アドバンテージ 2-1
フィリッピ・ペナ(グレイシー・バッハ)
注目の一戦が実現。これかのブラジリアン柔術無差別における世界最強をこの2人が争っていてもまったく不思議ではないほどのカード。ちなみにペナはこの前の試合で、ルイス・パンザと階級別に続き2度目の対決をし、パンザの破壊的な足関節にアンクルで対抗し、逆にパンザを骨折に追い込むという衝撃的な勝利を挙げている。
ダブルガードから上を選択してアドバンテージを取ったコーネリアスは、パス狙いで大きくペナの頭まで回ってみせてもう一つアドバンテージを獲得。ペナは下からコーネリアスのラペルを引き出すと、それをコーネリアスの右膝裏を通して取り、やがて右足を伸ばすことに成功。その足を肩にかけたまま上を取って2点獲得した。
下になるとコーネリアスはワームガードを狙ってペナのラペルを絡ませようとするが、その仕掛けは承知しているペナは腰を引いて防御。するとコーネリアスはペナの左脚を引き出して伸ばし、そのまま後転し上になりスイープを完成した。アドバンテージ2つリードされているペナは、ベリンボロやオモプラッタを仕掛けるがコーネリアスは脱出。ここでペナはコーネリアスのバックに付きかけるが、コーネリアスはすかさず前転しながらスクランブルで上に。
ペナはアドバンテージ1つ獲得するに留まった。残り時間が少ないなか、まだアドバンテージ一つ分まけているペナは、さらにコーネリアスの右足を伸ばして強引に立ち上がってのスイープを狙うが、コーネリアスが耐えて逆にサイドを取りかけたところで終了。僅差でコーネリアスに凱歌が上がった。両者一歩も引かない一進一退の攻防だったが、下からのスイープの強さが何より目立つペナに対して、コーネリアスは上をキープするバランスと、パスガードでもアドバンテージを奪える強さも持ち合わせていることが勝因といえるだろう。
<無差別級準決勝/6分1R>
アレキサンダー・トランス(UAE柔術)
Def. 2-0
キーナン・コーネリアス(アトス)
引き込んだトランスは、下から回転して足を取りにゆく得意の動きをみせ、そこから50/50を作ってみせる。やがてダブルガードの攻防を経て十八番のディープハーフの体勢を作ったトランスがスイープを決めて2点先制。遅れをとったコーネリアスは下からラペルや襟を掴んで仕掛けようとするが、トランスは腰を引きながらも長いリーチを活かしてコーネリアスのズボンの後ろを掴んで、コーネリアスに反撃を許さない。コーネリアスはスパイダーから仕掛けようとするが、結局崩し切れず時間切れ。必殺のディープハーフで加点し、その後はあまりパスを仕掛けずコーネリアスの攻め手をうまく封じたトランスの作戦勝ちだった。
<無差別級準決勝/6分1R>
マーカス・アルメイダ(チェッキマット)
Def. 2-2 アドバンテージ 1-0
レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)
引き込んだロは、得意のラッソーやスパイダーから仕掛けるが、ブシェシャことアルメイダは片足担ぎでプレッシャーをかけてゆく。ロはやがてブシェシャの右足を引き出して肩にかけることに成功。広がったブシェシャの両足の間に自らの体を潜り込ませつつ、スピンして上を奪取、2点先制してみせた。
しかし、ブシェシャは、すぐにロのラペルを強烈に引きつけてディープハーフを作ると、スイープを返して同点。そのままレッグドラッグのような体勢を経てから両足担ぎに入り、体重をかけてロの体を折り畳む。そのままプレッシャーをかけ続けてロに後転を余儀なくさせ、残り1分を切った時点でアドバンテージを獲得して逆転した。下になったロも諦めることなく仕掛け続け、またしても下からブシェシャの右足を伸ばすが、それを肩にかけることに成功した時点でタイムアップ。現在全階級を通し地上最強の柔術家ブシェシャに対して、スイープの攻防で見事に渡り合ったロだが、ブシェシャの体格を利した圧力、そして何より勝負所で確実にポイントを取れる強さには及ばなかった。
<無差別級3位決定戦/6分1R>
レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)
Def. 4-2
キーナン・コーネリアス(アトス)
開始早々引き込んだロは、スタンド状態のコーネリアスの両足の膝あたりを、自らの両足で挟み込んでフックし、後ろに倒すクラシカルなスイープを決めて2点先制。下になったコーネリアスは、ロのラペルを引き出して自らの足に絡め、ベリンボロのように回転してバックやトップを狙うが、ロはマットに付けた手を支えにしてバランスを保つものの、コーネリアスにアドバンテージが一つ入った。やがてコーネリアスはラペルにロと自らの足を絡めるワームガードを作るが、ロはうまく距離を取って足を抜いて解除。ワームガード地獄から抜け出せなかった去年から、確実に進化していることを見せつけた。
しかし、コーネリアスは、シッティングガードでロのラペルを膝裏から取るクラシカルな体勢から、後転してのスイープを成功して逆転に成功。後のないロはスパイダーガードなどを仕掛けるが、コーネリアスを崩し切れないまま時間が過ぎてゆく。しかし、残り約1分の時点でロは下から左脚を絡め、コーネリアスの右足を引き出して伸ばすことに成功。 そのまま(準決勝のブシェシャから先制点を奪った時と同じ要領で)コーネリアスの開いた股間に潜り込んでのスイープを決めて再逆転!!
それでもコーネリアスも倒れながらも足を絡め、ロの右足を引き出して抱えてスイープのチャンスを作る。残り時間が少なくなるなか、ここでスイープを取ればコーネリアスの勝利かと思われたが、ロはそれに耐えてハーフでコーネリアスを低く抑えることに成功して勝負あり。残り数秒を抑えきって見事に3位入賞を果たした。
去年苦杯を舐めさせられたコーネリアスのワームガードを、今回はロが防ぐことに成功。そのぶん両者がクラシカルなスイープで点を取り合う展開となり、最新技の次に伝統技が有効となる競技柔術の進化の面白さを堪能させてくれた試合だった。またこの試合でロが決勝点を奪った仕掛け=相手の片足を引き出して肩に抱えてからの展開は、今回の大会でエスティマやペナも多用し猛威を振るっていたもの。もともとXガードやハーフとの組み合わせでよく見られるものではあるが、今大会ではその有効性が改めて際立つこととなったことも特筆したい。
<無差別級決勝/6分1R>
マーカス・アルメイダ(チェッキマット)
Def. 0-0 アドバンテージ1-0
アレキサンダー・トランス(UAE柔術)
最重量級決勝戦の再現となったこのカード。ブシェシャことアルメイダと地上最強を争うライバル、ホドウフォ・ヴィエイラが欠場したことで、順当な組み合わせか。低く構える両者。階級別と同じくブシェシャがタックルを仕掛けると、今回は受け止めたトランスは引き込み。ポイントを許さずに下になることに成功した。トランスはブシェシャの襟を引きつけながら、必殺のディープハーフの体勢を作りに行くが、ブシェシャは腰を切って低く体重をかけてそれを許さない。やがて両足担ぎの体勢に入ったブシェシャは、そのまま体重をかけてトランスを後転させることに成功してアドバンテージを奪う。さらにブシェシャは亀になったトランスの背中につく。トランスはリードされ動けないまま時間が過ぎてゆく。
残り時間が少なくなった所で、ついにトランスはブシェシャを巻き込んでの横回転に成功する。 これでトランスが上になったと思いきや、ブシェシャは一瞬背中を付けたのみですぐに膝立ちに戻り、トランスは引き込まざるを得ないことに。この攻防ではポイントはつかず、残り30秒でブシェシャがアドバンテージをリードしたまま上になった。トランスはブシェシャの姿勢を崩して、その右足を伸ばさせて掴むことに成功。左足でスパイダーを作って揺さぶり、さらに大きく広げたブシェシャの股間に入り込んでのスイープ狙い。しかし長い足を広げてバランスを保つブシェシャは倒れず試合終了。階級別に続いてブシェシャの勝利となった。
こうして試合を優勢に進めたブシェシャが、2015年世界最強決定戦第一弾を制することとなった。トランスがチャンスをつかみかける場面もあったが、ブシェシャは優れたボディバランスと、いざという時の爆発的なスクランブル力を遺憾なく発揮して得点を許さず。準決勝、決勝ともにポイントこそ僅差だが、その壁は簡単に破れそうには見えない。本年度世界最強決定戦第二弾=世界柔術の無差別級では、唯一ブシェシャと真に互角の闘いをできるもう一人の怪物、ホドウフォ・ヴィエイラの復活、そして2人の頂上対決を切望したい。