【on this day in】1月31日──2009年
【写真】左から長男タケヒコ、父・嘉三、三男リョート、次男シンゾー。マチダ空手一家(C)MMAPLANET
UFC94
@ネヴァダ州ラスベガス、MGMグランド・ガーデンアリーナ
「4つ並んだ、これらの拳。漢として生まれてきて──強さを求める限り、これ以上の説得力はない。なんだか板垣さんのようなセリフになってしまうけど、この節々の太さは驚くばかりだ。チアゴ・シウバとの無敗対決を制し、世界王座挑戦権を獲得した夜、一家揃って拳を合わせてくれた。拳ダコができては潰してということでも繰り返すと、こんな拳になるのだろうか。そんなマチダ一家の拳。父・嘉三さんの教えを受け、幼少の頃より空手、相撲など鍛錬を繰り返してきたマチダ兄弟は、揃いも揃って立派な拳を持っている。ここで注目したいのが、耳だ。リョートだけがカリフラワー状態になっている。今にして思えば、アントニオ猪木の秘蔵っ子という強引なストーリーと共に、新日本プロレスのMMA大会でケンゴさんを相手にデビュー戦を行った2003年5月の時点で、彼の耳はわいていた。そして、当時の試合ぶりは本当に空手家なのという疑いの目を向けられるぐらい、組技重視だった。サウスポーからオーソに構えを変え、その刹那シングルレッグでテイクダウンを奪い、マウントを奪取したリョート。その後、リッチ・フランクリン、サム・グレコ、BJ・ペンらを下した日本の日々、WFAを経てUFC入りしてもなお、ソクジュに勝つぐらいまで、その腰の重さと組技の強さが彼の連勝を支えていた。そして、組技でも世界最高峰で戦えるという確信を得た時、リョートは今にも通じる空手を全面に打ち出した戦い方を見せるようになった。デビューから5年を経て、ようやくこの節々の太い拳、絶妙な理合いをケージの中で見せるようになった。5分×3Rや、5分×5Rをどう戦うのかなんて、マチダ一家は苦も無く導き出せるのだろう。リョートの拳でなく、対戦相手は彼の耳を注意して見ておくべきだったのだ」
on this day in──記者生活20年を終えようという当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。