【PXC46】未完の大器、最終章へ。加藤忠治 「ベルトを返上して帰ってきます」
【写真】一見チャラくて、掴みどころのないイメージの加藤忠治だが、その実、取材での受け答えはかなりしっかりしている。未完の天才の雄姿が見られるのも、あと僅か?!
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15日(土・現地時間)にフィリピンはメトロ・マニラのバシッグシティにあるイナレス・スポーツセンターで開催されるPXC46。ダブルクラウン大会のメインに出場し、ライト級王座を賭けて加藤忠治がグレン・ラニーロと対戦する。
6月のPXC44でタイトル奪取に向け、最大の難関と思われたフランク・カマチョ戦をそのカマチョの減量失敗によるキャンセルでクリアした加藤が、いよいよアジア太平洋地域ナンバーワン・フィーダーショーのベルトを賭けてマニラに乗り込む。一部で天才、ジーニアスと呼ばれる加藤のタイトル戦に掛ける想いを訊いた。
――グレン・ラニーロとPXCライト級王座決定戦に臨む加藤選手です。10月24日にグアムで行われたバンタム級王座決定戦でカイル・アグォンに敗れたフィリピン人選手ロランド・ディは思った以上に手強く、ラニーロも決して侮れないという気持ちにさせられました。
「ディはパンチが凄くて、強かったですね。ヒザも凄くて。いや、今、フィリピンは相当強いですよ。PXCの人達まで僕が余裕で勝てる――みたいなことを言っているんですけど、映像を何度も見てラニーロ、強いッスよ」
――自分などワン・サイ戦の印象しかないのですが。
「あの試合はウェルター級だし、体重を落とせることができて体がデカい。そういう部分では僕と似ているんです。だから嫌な感じです。でも、もう弱い相手なんていないですから、倒すしかない。もちろん、ジョゼ・アルドとかチャド・メンデスと比較すると、全然ですよ。落ちますよ(笑)。でも、間違いなくフィリピン人は強くなっている」
――MMAを消化しきれていない。だけど、そこが強味になっているような気もします。
「完成はされていないですね。ランバーさんの相手(クリサント・ピットピットンゲ)もMMAは分かっていない。でも、そこが強い。分かってくると、どうなるのか。アイツはノリ(田中路教)と戦った時の方が怖かった。フライ級に落した試合は、前ほどじゃなかったですね」
――なぜか他の選手の試合の解説している加藤選手ですが(笑)、ご自身の試合について話をお願いします。
「俺、1年試合していないんです。それでタイトル戦、ビックリですよ(笑)。タナボタです」
――6月のフランク・カマチョ戦がなくなりましたからね。今回の試合に向け、どのような調整をしてきましたか。
「あのあとは仕事をやっていました。9月になるまで北海道にいました。9月になって茨城に戻って来て、練習はマッハ道場や津田沼、それとロータス世田谷とマスタージャパンですね」
――ロータスでの練習も茨城からやって来ているのですか。
「そうですね。月曜日だと2時間ぐらいで来ることができます。でも、それはしゃあないです。そういう環境でやっているので、何を言っても始まらないですし。ロータスでの練習が、一番強くなれる気がしています。もう今日も青木(真也)さん、北岡(悟)さんにボッコボコにされました(笑)。ただ、今回の試合はどんな風に戦うか、全くイメージができていないんです。
いつもは決め打ちで、こんな風に戦おうっていうのがあるのですが。まだ、中途半端で。だからあと2週間(※取材は10月27日に行われた)、ここからもうちょっと上げていくので、疲れた時にどのように動けるのかを見て判断していきたいです。5Rですからね……。3Rだったら、どうにでも戦えるんですけど、やっぱり5Rになると戦い方を変えないといけなくなるので」
――加藤選手のキャラを考えると、5回戦だと自分に負けるのではないかという不安を感じます。
「いや、間違いないです。そこらへんなんです。まだ、5Rを戦う決意が固まっていない。5R戦い抜くのか、その前に極めを狙うのか。極めにいっても大丈夫なほど体力に自信があるのかと言われると、それはないです。だからといって、5Rをノラリクラリ行くのかっていう決意もできていないんです」
――昨年10月のタイロン・ジョーンズ戦のような戦い方を加藤選手自身はノラリクラリと表現しているのですか。
「そうですね。ただし、今回は5Rだし凄い反撃をしてくるときとか出てくると思うんです。向こうは命がけでくるでしょうし、だから中途半端なノラリクラリはできない。一発も貰わないつもりじゃないと」
――徹頭徹尾、集中力の高いノラリクラリが必要になってくると。
「いや、本当にそういうことでノラリクラリも結構、大変なんですよ(笑)。向こうは殺気を持ってくるから、みんな簡単そうに言うけど、結構大変なんですよ。できれば、5Rをフルで戦っても問題ないようなぐらい体力をつけたいですけど、タイロン・ジョーンズ戦よりは確実に良くなっています。心肺機能が上がって体のケアをできているんで、動くようになっています。打撃も結構、やっています」
――打撃の練習はどこで?
「マッハ道場でミットを持ってもらって、あとは岡野(裕城)君ともスパーリングしています。1階級上の人とやると、全然違いますね。ボコボコにされているだけなんですけど、1階級上のパンチを受けていると同じ階級の選手のパンチが怖くなくなります」
――客観的に見て、ラニーロのフィジカルをどのように捉えていますか。
「フィジカルはそんなに強くないです。テイクダウンはできると思います。ただ、寝技が少し出来るのと一発を持っています」
――そこですね、一番の注意点は。
「なぜか、フィリピン人は皆、一発を持っています(笑)。まぁ怖さはありますけど、UFCを見ているとその一発を受けるタフさを皆が持っていますよね。それを受けてからの試合だから、一発でやられているとしょうがないです。もう、その前の段階の話だから」
――一発もある一方で穴があるのも彼らの特長ともいえます。
「3Rだとその穴を突き続けていれば大丈夫だと思います。ただ、5Rだと一発を受ける機会が増えてくる。ましてや、向こうは命がけで来るでしょうから」
――多少なりとも貰う覚悟でノラリクラリ……。一発で極めるという展開は想定していないですか。
「そこらへんが、どこで自分が勝負に行くのか。取りには行くと思います。ただ、一本を取る場合は下からの技が多くて上からじゃないんです、僕。だからテイクダウンを取るとどうなるのか、その辺がまた微妙なんです(笑)。上を取っちゃうと、ノラリクラリになっちゃうんです。下になってヤバいってなった時は一発取りに行けるんですけど。
タイトルマッチでなければ、それほど難しい試合ではないと思います。でも、今回は相手が人生を賭けてくるわけですから……」
――フィリピン……マニラで戦うという点については?
「そこは気にならないです。会場までの渋滞とかも、僕は全然平気。それよりも、自分がどう戦えるのかの方が問題です」
――フランク・カマチョ戦は加藤選手にとって、『最後の――』という空気が伝わってきました。今回のラニーロ戦に関しては、そのような気持ちでいるのでしょうか。
「その場でベルトを返上して帰ってこようと思っています(笑)」
――つまり、次の試合が最後だと?
「もう大体、良いかなって思っています。ちょっとね、体も一番良い時と比較すると、全然なんで。遺伝的な部分もあって、もう若くないから影響が出ています。ただ、国内ではもう1回は戦いたいです。だから、そういう人間がベルトを持って帰ってくるのは良くない」
――国内で1試合、それがどこになるのか楽しみですが、その前にPXCのタイトル戦、頑張ってください。
「ハイ、ありがとうございます」
■PXC46対戦カード
<PXCライト級王座決定戦/5分5R>
グレン・ラニーロ(フィリピン)
加藤忠治(日本)
<PXCフライ級王座決定戦/5分5R>
アーネスト・モンディーラJr(フィリピン)
アルヴィン・カクダック(米国)
<女子アトム級/5分3R>
ジナ・イニオン(フィリピン)
コートニー・ケイシー(米国)
<フライ級/5分3R>
クリサント・ピットピットンゲ(フィリピン)
ランバー・ソムデートM16(タイ)
<フライ級/5分3R>
ディーン・ベルムデス(フィリピン)
ジネル・ラウサ(フィリピン)
<ストロー級/5分3R>
ロイ・ドリゲス(フィリピン)
デニス・サラザール(フィリピン)
<フェザー級/5分3R>
ウェズレイ・ペリエラ(ブラジル)
アレックス・モンタルバン(フィリピン)
<フェザー級/5分3R>
ジョシュ・サピノーソ(フィリピン)
ロビン・エクラヴェア(グアム)
<バンタム級/5分3R>
アーニー・ブラカ(フィリピン)
マーク・アベラルド(ニュージーランド)