ラドウィックがモーガンをTKO葬、雪辱に成功!
10月3日(金・現地時間)、米国コロラド州デンバーにあるブルームフィールド・イベントセンターでは、ストライクフォース『PAY BACK』が開催された。
ストライクフォースにとって、コロラド州に初進出となった同大会では、ドゥエイン・ラドウィック×サム・モーガンの一戦をメインイベントに、フィル・バローニ×ジェイムス・マルチネスが突如中止となる不手際もあったが、フランク・トリッグ×ファラニコ・ヴィターレのミドル級マッチ、無敗のライト級ファイター=ビリー・エバンゲリスタの出場、ATT期待のルーキー=カーロス・セバーリョスのMMAデビュー戦など、注目の試合が行われた。
そのメインイベント。3年前の対戦では、典型的なグラップラー=モーガンに、まさかのパンチで敗れているラドウィックが雪辱戦に臨み、試合はボディ&顔面にパウンドを打ち分け、トラウマを払拭するようなTKO勝利でリベンジに成功した。
また、ミドル級の実力者・トリッグはヴィターレに判定勝利。ライト級の新鋭・エバンゲリスタは、ベテラン・カディーロに序盤からダウンを奪われ、苦戦を強いられるも、劣勢を徐々に挽回。最後は逆転の判定勝ちを収めている。
<フェザー級/5分3R>
テイラー・トナー(米国)
Def.2R3分44秒/TKO
リッキー・ジョンソン(米国)
ジョンソンが左ハイ、左ローを繰り出すと、トナーは距離を縮めて左ストレートを打ち込んでいく。左ハイを空振りしたトナーは、組みついて首相撲へ。ジョンソンはテイクダウンを狙ったが、自ら距離をとり離れる。再び左ハイを空振りしたトナーに、ジョンソンがショートレンジのフックを連打する。
ジョンソンの左にトナーが右を合わせると、この一発を鼻に受けたジョンソンが気にする素振りを見せる。トナーの左ハイをブロックしたジョンソンだが、追い打ちのパンチを受けて、鼻血の量が多くなる。後ろに下がるシーンが増えたジョンソン。トナーはローキックから右ストレートを見舞う。続いて首相撲からボディへヒザ、さらに顔面に打ち込むと、ジョンソンはあからさまに嫌そうな顔を見せる。試合を決めにいったトナーがハイでバランスを崩しグラウンドになったが、上を取り返したところで1Rが終了した。
2R、明らかに動きが重いジョンソンに対し、トナーは左ジャブからロー、さらに右ストレートを打ち込む。さらに右ハイをヒットさせると、組みついてきたジョンソンを突き放し、ヒザを見舞っていく。さらに組みついてボディにヒザを放つと、ジョンソンはダウンするようにガードポジションへ。トナーはインサイドから、パウンドを落とす。顔をそむけるように体を横に向けたジョンソン、トナーは足を払いパスからマウント奪取。チョークを嫌がり、上を向き直したジョンソンにパウンドを連打したトナーがTKO勝ちを収めた。
<女子112ポンド契約/3分3R>
ミッシュレ・ウォーターソン(米国)
Def.1R1分20秒/リアネイキドチョーク
タイラ・パーカー(米国)
現在はニューメキシコ州アルバカーキ在住だが、コロラド州オーロラ出身のウォーターソンに声援が集まる中、試合がスタート。パーカーは4ポンド・オーバーだったが、ウォーターソンは試合を受託。ただし、ケージの中の二人にそれほどフィジカルの違いは見られない。
いきなりローを見舞ったウォーターソン。パーカーが振り回す拳をよけ、組みついていく。ニーをボディ、顔面に放ったウォーターソンは、続けてボディにヒザ蹴りを見舞うと、バックを奪い後方に倒れ込み、そのままリアネイキドチョークへ。しっかりと首に食い込んだ右腕が離れることはなく、ウォーターソンが1分20秒で一本勝ちを収め、MMA戦績を5勝3敗とした。
<ライトヘビー級/5分3R>
カーロス・セバーリョス(米国)
Def.1R4分48秒/TKO
アンドレ・ウォーカー(米国)
注目のMMAデビュー戦となるATTのセバーリョス、デンバー在住の喧嘩屋ウォーカーと対戦。サウスポーのウォーカーに対し、オーソドックスのセバーリョス。いきなり飛び込んだウォーカーの左ストレートでダウンを喫したセバーリョスは思わぬ試合展開、ガードポジションを取り、立ち上がろうとしたセバーリョスの顔面を再びウォーカーの左フックが襲い、完全にグロッキー状態へ。
スタンドの攻防が続き、距離を取り直したセバーリョス。一応は危機を脱し、組みついた状態からヒザを繰り出す。再び距離を取ったウォーカー、セバーリョスはまだオープンスタンスから放たれる左のパンチが見切れていないようだ。
ここでウォーカーがテイクダウンを狙うが、体重をうまく乗せたセバーリョスがトップを奪うことに成功。マウントを奪取したセバーリョスは、思い切りパウンドを落としていく。右腕を差し出し、殴られるままになるウォーカー。セバーリョスは腕十字を仕掛けることなく、そのままパウンドで勝利を手にするも、寝技がザルのウォーカーが、なぜ寝技勝負に出たのか、その戦略に疑問符が残る一戦となった。
<ライト級/5分3R>
ビリー・エヴァンゲリスタ(米国)
Def.3R終了/判定
ルーク・カディーロ(米国)
無敗のライト級ファイター、エヴァンゲリスタの注目のキャリア8戦目。対戦相手のカディーロは3倍のキャリアを誇るファイターだ。
体格で一回り上回るエヴァンゲリスタだが、いきなりの左ストレートからヒザ蹴りを顔面に受けてダウン。パウンドを連打され、立ち上がってもカディーロのフックが顔面をとらえ続けると、距離を取り直したカディーロは、いつでも倒せるとばかりに余裕のカウンター狙いに切り替えた。
テイクダウン狙いからパンチを放つエヴァンゲリスタだが、前進しようにもカディーロのローキックでなかなか前に出ることができない。カディーロの右ミドルをキャッチし、テイクダウンを狙うが、ここでもカディーロはスクッと立ち上がる。左ジャブ、ヒザ蹴りが交錯する中、エヴァンゲリスタの左ストレートがヒットし、カディーロはテイクダウン狙いに切り替える。が、これをふさがれると、カディーロは4ポイントポジションとなり、顔面にパウンドの連打を受けてしまった。序盤とは正反対の展開となったところで、1Rが終了した。
2R、右サイドキックでカディーロの態勢を崩したエヴァンゲリスタだったが、得意のレスリングの展開でテイクダウンを奪われてしまう。しかし、冷静にケージを蹴り、後方回転でスタンドへ戻ると、ジャンピングニー、右ストレートでペースを再び握り始める。
両足タックルから、ヒザ蹴りを見せたエヴァンゲリスタに、カディーロは手数が極端に少なくなる。再びタックルからヒザ蹴り、そして右ストレートまでつないたエヴァンゲリスタは、その後もローキックやジャブで自分の距離をキープする。完全に待ちの状態となったカディーロは、このラウンドを体力温存に当てたかのように動かないまま終えている。
3Rは、エヴァンゲリスタの右ローでスタート。左ハイを蹴り込むエヴァンゲリスタが、左フックをヒットさせプレッシャーを与え続けると、ここで初めてテイクダウンに成功する。ケージにカディーロを押し込み、パウンドを落としていく。必死でガードから両手を差し上げ、エヴァンゲリスタの頭をホールドしようとするカディーロだが、エヴァンゲリスタは構わずパウンドを落とし続けた。
レフェリーがブレイクを命じ、試合がスタンドで再開すると、カディーロは直後にテイクダウンを狙う。これを切ったエヴァンゲリスタは、思い切りアッパーカットを放つが、空振り。左ボディフック、右ストレートと渾身の力を込めたパンチを放つエヴァンゲリスタは、肩で息をするようになるが、それでも動きを止めることはない。
最後の1分となり、カディーロも動きを取り戻したが、時すでに遅し。序盤の危機的状況を切り抜けたエヴァンゲリスタは、29-28が二人、30-27が一人という裁定で、3-0の判定勝ちを手にした。
「ペースを考えていたんだけど、出足が悪かったね。とにかく動き続けよう、前に出ようと言い聞かせて戦った。レスリング、柔術、打撃のコンビネーションを使えっていうセコンドの声に従って戦った。次?今は何も分からないよ」とコメントを残し、エヴァンゲリスタはケージをあとにした。
<ウェルター級/5分3R>
ドーニー・ライルス(米国)
Def.3R1分59秒/リアネイキドチョーク
ピート・スプラット(米国)
UFC出場時には、現EXC世界ミドル級王者ロビー・ローラーにも勝利しているベテランのスプラットは、思い切り踏み込んでパンチを狙っていくと、足を使って様子見のライルスは豪快なサイドキックを放つ。パンチのラッシュで突っ込み、組みついたスプラットだが、続いて放ったヒザ蹴りがライルスの急所を直撃してしまい、試合が一時中断する。
再開後、スーパーマンパンチを狙ったスプラットだが、ライルスはステップバックで難なくかわす。逆に、飛び込みながら放たれたライルスの左フック、ここで彼の肩口がスプラットにヒットし、一瞬動きを止めたスプラットだったが、直後にパンチの連打を放っていく。互いに決め手のないまま、試合はラウンド終盤へ。最後はケージ際で組みあった中で、スプラットがテイクダウンに成功。パウンドを2発落としたところで、ラウンド終了のホーンが鳴り響いた。
2R、いきなりジャンピングガードを見せたライルスは、リバーサル、三角絞めを狙うが、これを察知されると、スプラットは草刈りから立ち上がることに成功する。続いて、がぶりからヒザを放ったライルス、手繰りからバックを狙うが、またしても察知されてしまった。スプラットは、アッパーから左ハイ、さらに右ストレートと、ライルスのステップを読んだかのような打撃を繰り出すがクリーンヒットには至らない。
思うように攻めることができない両者だったが、スプラットのボディが決まり始めたところで、ライルスがテイクダウンに成功する。マウントを奪取したライルスは、ここでチョークを狙うが、タイムアップとなった。
最終ラウンド、開始早々テイクダウンを狙ったライルス、尻もちをついたスプラットもすぐに立ち上がることに成功。再び、両足タックルでテイクダウンの奪ったライルスは、そのままマウントへ。パウンドを落とし、バックマウントへ移行すると、まるで2Rの最後の展開のようにライルスがチョークを狙う。
違っていたのは、残り時間――、残り時間に追われることなくライルスはパンチを後方から叩きこみ、チョークへ。しっかりと咽喉にライルスの左手が食い込むと、スプラットはタップアウト。3R1分59秒、ライルスが一本勝ちを手にした。
<ミドル級/5分3R>
フランク・トリッグ(米国)
Def.3R終了/判定
ファラニコ・ヴィターレ(米国)
王者カン・リーが、ハリウッドに進出、09年をもって引退を宣言したミドル級戦線。ミドル級のベテラン実力者同士の対戦は、トリッグの左ローでスタートした。サウスポーのトリッグは、左ジャブから組みつくと、ここでヒザ蹴り。しかし、これがローブローとなり試合がいきなり中断してしまう。
再開後、トリッグの左とスレートに右フックをかぶせようとしたヴィターレだが、ケージに詰められ、エルボー、ショートフックの連打、ボディへのヒザ蹴りで追い込まれてしまう。しかし、ヴィターレはトリッグのヒザ蹴りに合わせ、足払いでテイクダウンを奪うと、そのままバックを奪う。
正面を向き直したトリッグは、距離をとってローキックから、左ストレートを放つが、ヴィターレも右ボディを返していく。トリッグの左フックで、後ろに下がる場面が見られるヴィターレだが、ケージに詰められてもテイクダウンは許さない。すると、テイクダウン狙いと見せ、ヒザを突き上がるトリッグ。テイクダウンを奪えないものの優勢のまま1Rを終えた。
2Rに入っても、同じような展開が続き、トリッグの左ストレートがヴィターレの顔面を捉え、組みつかれたヴィターレがテイクダウンを耐えるという展開が続くと、トリッグの左フックと、ヒザ蹴り、ヴィターレの右が交錯するが、手数ではトリッグが圧倒する。
しかし、組みつかれたヴィターレが右ヒザ、そしてボディへのヒザ蹴りを見舞う。スタミナに難があるトリッグは、ここでボディフックを受けると、一気に動きが落ち、組みついて時間の経過を待つ展開が増えていく。ブレイク後、ケージ中央での殴り合いで、ヴィターレの右フックがヒット。さらに右ストレートを浴び、トリッグが後退し始めたところでタイムアップとなり、試合は最終ラウンドへ。
ポイントではトリッグが優勢だが、コンディションはヴィターレが上という中、3Rがスタート。と、インターバルで息を吹き返したのか、作戦通りの展開なのか、トリッグがテイクダウンを奪い、トップをキープする。寝技ではエルボーが反則のストライクフォースでは、得意のパターンに持ち込めないトリッグ、ワキを差されて立ち上がられてしまう。
ケージ際の組み合いが続き、館内の怒号が大きくなるなか、ようやくレフェリーがブレイク。再開直後、ヴィターレの右ロングフックがトリッグの顔面を捉えると、左フック、さらにヒザを狙ったヴィターレが、ここでテイクダウに成功する。
すぐに立ち上がったトリッグ、ステップバックして、右ジャブを出すが、スピードがない。得意の左も力がなくなったトリッグに対し、ヴィターレは飛び込みながらボディをヒットさせたが、ここで痛恨のテイクダウンを奪われてしまう。残り20秒、トップキープのトリッグと、パンチを打たせないよう両手首をロックして、パンチを打たせないヴィターレ。ヴィターレがレフェリーにブレイクを促すよう見やる中で、試合終了のホーンが鳴った。
ジャッジの裁定は29-28、29-28、30-27でフランク・トリッグ。「ニコはスマートなファイターだ。1カ月で2試合はハードだった。家族もそうだったと思う。あと数試合で引退しようと思うけど、まだ情熱を持っている」と、試合中の疲れとは対照的に多弁なトリッグだった。
<メインイベント 165ポンド契約/5分3R>
ドゥエイン・ラドウィック(米国)
Def.1R2分1秒/TKO
サム・モーガン(米国)
3年前の対戦では、典型的なグラップラーながらパンチでラドウィックを破っているモーガン。しかし、現在3連敗中で、この1年勝利から遠ざかっている。そんなモーガンにリベンジを果たすべく、地元の大歓声を受けるラドウィックは、ローに合わせて右ストレートを放って行く。
直後にテイクダウンを奪われたラドウィックは、バタフライガードから立ち上がることに成功すると、パンチの交換から逆に組みつき、足払いでテイクダウンを奪った。試合はすぐにスタンドへ戻り、ここでラドウィックの左ボディフックがヒット、堪らずキャンバスに崩れ落ち、それでも、なんとかスタンドに踏みとどまろうとしたモーガンの顔面にヒザ蹴りを見舞ったラドウィック。ガードを取るモーガンは、ここでもボディに強烈なパウンドを浴びて万事休す。続いて顔面にパウンドを数発受けると、ここでタップ。レフェリーがストップするまで、殴り続けたラドウィックは、トラウマを払拭するような見事なTKO勝利を収めた。