【UFN286】DWCSから18日でデビュー戦、ビラル・ハサン「マクレガーの足の運び方が武道だったから……」
【写真】25歳、可能性は無限大。知己に溢れた言葉が、その将来をより楽しみにさせてくれた(C)Zuffa/UFC
本日29日(土・現地時間)、中国は上海の浦東発展銀行上海東方体育中心(プートン・ファジャン・インハン・シャンハイ・ドンファン・タイユィ・ジョンシン)でUFN286「Nurmagomedov vs Song」が開催される。同大会でUFC初陣をメインカードで戦うのが、ビラル・ハサンだ。
Text by Manabu Takashima
11日にコンテンダーシリーズで勝利し、契約を勝ち取ったビラルが18日のインターバルでデビューを迎える。米国で生まれ育ったが、国籍を取得するほどツール=インドネシアを想うビラルをインタビューすると、テコンドーとAMCパンクレーションが融合した――打撃が目立つ彼の試合とは違う、マーシャルアーツを軸とした格闘脳の持ち主であることが伝わってきた。
ニルソン・ロハスというハードパンチャーとの対戦は、ボクシングMMAとマーシャルアーツMMAのIQ戦となること間違いない、必見の一戦だ。
両親の勤勉さが、僕のラストネームには詰まっている
(ZOOMが繋がった瞬間に)「コンニチワ。スミマセン。ZOOMにジョインするのが、遅くなってしまった」
――いえいえ、たくさんのインドネシアのメディアから取材があったと聞いています。そんな忙しいなか、取材を受けてもらってありがとうございます。
「こちらこそ、アリガト!!」
――15日前にコンテンダーシリーズで勝利し、UFCとサイン。そして、今、既に上海にいてデビュー戦を控えています。
「凄いことだよね。コンテンダーシリーズからUFCのメインカードでデビュー、しかもマイケル・ジャクソンの誕生日なんだよ。めちゃくちゃエキサイトしている。この試合のオファーがあったのは、コンテンダーシリーズが終わって2時間後だったんだ」
――2時間後!! UFCと契約がなり、最高に盛り上がっているなかで、もう次の試合が決まったということですね。しかも太平洋を越えて戦うなんて。すぐにスイッチは入りましたか。
「これ以上ないくらいクレイジーだよ(笑)。時差ボケって文字通りなんだけど、幸い去年インドネシアを訪れた時に、ほとんど時差の影響がなかったことが頭にあったから、躊躇なく上海での試合に合意できたよ。減量こそ過去にない状況だったけど、今は順調に進んでいる」
――ビラルに注目し始めたのはRIZINがビラルに興味を持ち、RIZINフライ級のロースターに加わる可能性があったからなんです。
「ワォ!! 僕のコーチのチャールズ・ピアソンは、日本の修斗でも試合がしたことがあるし、何か日本とは縁があったのかな」
――ピアソン・コーチの現役時代、ワシントン州と東京、そしてハワイで取材をしたことがあります。
「えぇ、イッツ・ア・スモールワールドだねぇ。凄いや。チャールズがハワイで試合をした日が、実は僕がハワイで生まれた日なんだよね」
――それはもう運命的ではないですか。ところでビラルはハワイで生まれ、ワシントン州で大人になったわけですが、ここまでインドネシアに拘りを持つのはなぜなのでしょうか。
「僕の両親は揃ってインドネシア生まれで、父は16人の兄弟姉妹のなかで1人だけインドネシアを離れた。母もそうだ。2人は米国で良い生活を夢見て、家族の下から離れた。そして必死に、僕を育ててくれた。両親の勤勉さが、僕のラストネームには詰まっている」
――そのご両親にインドネシア文化のなかで、育てられたということですか。
「そこは余りないかな。僕はオアフ島で生まれ、言うと周囲には日本の文化の方が色濃かったよ(笑)。ただ現代アメリカ風の生活のなかで成長したけど、母はいつもインドネシア料理を創ってくれた」
――食文化は、アイデンティティの確立に凄く大切だと思います。
「あと3、4年に一度インドネシアを訪れ、全く違う環境で過ごすこともあった。そんな時も少しでも、自分のルーツを学ぼうと思っていた。とにかく両親が僕に注いでくれた愛情があって、僕はインドネシアを大切に想うようになったのは絶対だよ」
MMAの面白さって、色々なところで王道じゃないユニークな技術を使うことができる点にあると思うんだ
――素晴らしいです。ところでジュニアやユース時代にテコンドーで成功を収めていますが、五輪を目指そうとは思わなかったのですか。
「僕は常に教わる立場でいたかった。テコンドーを続けていて、もうこれ以上学ぶことはないと思ったんだ。その頃、コナー・マクレガーの試合を見て、彼の足の運び方が武道だったから、これに似たことができるんじゃないかと思ったんだよ」
――マクレガーの試合を見て、パンチやトラッシュトークではなくフットワークが入口になったと。物凄く興味深いですね。
「MMAって本当に学ぶことが多い。もちろん、今も1日、1日と学び続けている。これは人生の最後まで続くと思っているんだ。MMAとは学習の日々を過ごすこと。MMAを学ぶ限り、僕は生徒でいられる」
――テコンドーの経験が、ビラルのMMAに役立つことはありましたか。
「MMAの面白さって、色々なところで王道じゃないユニークな技術を使うことができる点にあると思うんだ。確かにテコンドーのフットワークは、MMAで蹴りを使う点においては生きている。ただ、僕が試合を終わらせているのはパンチ、そしてサブミッションだ。
試合中にハイライトリールのようなテコンドーのキックを織り交ぜてはいるけど、そういう目立つ部分よりも、MMAでいうアンオーソドックスな技術が、僕のベースになっている。この基礎の部分が対戦相手を混乱させ、相手は僕の動きを予測できなくなる。
こういう基礎を持つ選手って少ないから、多くの対戦相手がスパーでも僕のようなファイターと手合わせをしたことがないんだよ。最初の30秒から1分で、相手は既に迷い始める。それが手に取って分かるから、僕のアドバンテージになっているよ」
――ピアソン・コーチはAMCパンクレーションのマット・ヒュームの教え子ですし、MMAとして王道かつ正当な技術もしっかりとビラルに指導してくれたのではないでしょうか。
「チャールズは、実はテコンドーのバックグラウンドも持っている。面白いことに、僕らのジムはテコンドーの経験者が多いジムで。彼は僕の動きを理解しているし、互いに意見し合ってコンビネーションやスタイルを創造、構築してきた」
――あのステップの踏み方で、レスラーを相手にどのように戦えるのかも、実は興味を持っています。
「プロデビュー戦で戦ったジェラール・レシは強固なレスリングベースを持つ選手で、僕はビッグ・アンダードッグだったんだ。彼のホームタウンのニュージャージーの大会だったし。僕らは揃ってアマ戦績が6勝0敗同士だったけど、彼はスーパーストロングなレスラーだった。結果、これまでの僕のキャリアで判定までもつれ込んだのは、あの試合だけで。僕自身は3-0だと思っているけど、スプリット判定だった。
ジェラールは今も5勝1敗で、上を狙っている。彼があれから勝ち続けていることで、自分のテイクダウン防御力に自信を持てているよ。もちろん、UFCには彼以上のレスラーがいる。だからこの間も、ずっとレスリングは強化してきた。テイクダウン防御という面でも、成長してきたと断言できる」
――押忍。オクタゴンのなかで確認できる日が来ることを期待しています。
「そうだね。今回の試合では、テイクダウン防御でなくてテイクダウンを取るところを見てもらおうかな(笑)。ホント、何が飛び出すか。MMAに必要な練習をずっとしてきたからね。楽しみにしてほしい」
マット・ヒュームとデメトリウス・ジョンソンという、このスポーツで最もクリンチワークに優れた2人と練習をしていることを皆は見落としている
――その相手となるニルソン・ロハスも、またビラルと非常に似た戦績の持ち主です。互いに9勝無敗、ビラルは7つのKO勝ちと1つの一本勝ち。ロハスは7度のKO勝ちを誇っています。
「タフな試合になることを期待している。その方がワクワクできるから。僕が最高のパフォーマンスを見せるのに、最適な相手だよ。フットワークに長けた、グッドボクサーだ。しっかりとヘッドムーブもしている。彼は背が低いから、懐に入って戦いたいだろう。それで構わない。僕は打撃、レスリング、グラップリングと、どの距離でも戦える。彼が前に出てくるなら、それだけフィニッシュできる確率が高くなるっていうものだよ。
ロハスは接近戦のパンチが強い。でも、僕はどの距離でも戦うことができる。それに僕がマット・ヒュームとデメトリウス・ジョンソンという、このスポーツで最もクリンチワークに優れた2人と練習をしていることを皆は見落としているからね。
キックの距離、ボクシングの距離ばかりか、密着したクリンチ、そしてレスリングでも僕は戦える。彼が得意をしているボクシングレンジだけでなく、多くの局面で僕は戦うことができるから、それだけ選択肢も多い。しっかりと、自分の距離で戦ってロハスを攻略したいと思う」
――おお、DJやマットとこのファイトキャンプでも練習をしてきたのですね。いや、ゴメンなさい。この試合はファイトキャンプなんてなかったですね。
「そうだね(笑)。でも、ファイトキャンプでなくても金曜日はDJとの練習を続けているよ。今、DJはグラップリングに集中しているけど、彼もマットも僕の穴を埋めることができるピースを授けてくれる。そして彼らから学ぶことは、本当に楽しい」
デキる限り、タカヤ・スズキの戦い方を吸収したい
――まさに学びの姿勢を持ち続けているわけですね。今回のUFC上海大会は、フライ級の試合が並んでいます。まるで品評会のようですが、他の試合のことを意識しますか。
「今週末に関しては、自分の試合に意識を集中させている。でも自分の試合がない時は、いつもフライ級の他の試合は注意して観察しているよ。他の選手の試合を見ることで、自分の長所と短所も理解できるし、何をやるべきかが見えてくる。そういうことを考えるのが好きなんだ。でも今週は、自分のことだけを考えているんだ」
――なるほどです。UFCフライ級はアジア系のファイターも多いです。そして日本を代表する選手も、その中に名を連ねています。将来的にビラルも彼らと戦う日も訪れるかと思いますが、日本のフライ級ファイターをどのように見ていますか。
「日本のフライ級選手から学ぶことは多い。何もUFCだけじゃない。ONEで戦っているフライ級ファイターの打撃も、本当に素晴らしい。それとRoad to UFCで戦っているタカヤ・スズキ、彼は本当に凄いよ。キルクリフFCで練習したことがあるけど、スズキのスタイルが大好きで、凄く参考にさせてもらった。彼の角度の取り方、そしてスピード……信じられないよ。デキる限り、タカヤ・スズキの戦い方を吸収したいんだ」
――鈴木崇矢選手と、一緒に練習をしたことがあるのでね。なら試合とそれ以外のギャップがおかしくないですか。
「4週間だけど一緒にいて、本当に面白いヤツだった(笑)。ジョークしか口にしないような感じで。凄く波長があったんだ。とにかく、あんなにクールに戦えるヤツはいないよ」
――でも、2人も目指すところは同じですね。
「そうだね。UFCフライ級をアジア人ファイターが乗っとるよ」
■視聴方法(予定)
8月29日(土・日本時間)
午後4時~UFC Fight Pass
午後3時30分~ U-NEXT
■UFN286対戦カード
<ミドル級/5分5R>
ウスマン・ヌルマゴメドフ(ロシア)
ソン・ヤードン(中国)
<女子ストロー級/5分3R>
イェン・シャオナン(中国)
デニージ・ゴミス(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
アオリーチーラン(中国)
朝倉海(日本)
<フライ級/5分3R>
アレックス・ペレス(米国)
スムダーチー(中国)
<ライトヘビー級/5分3R>
レヴィ・ホドリゲスJr(ブラジル)
リウ・ツォ(中国)
<フライ級/5分3R>
ビラル・ハサン(バーレーン)
ニルソン・ロハス(ペルー)
<フライ級/5分3R>
アンドレ・リマ(ブラジル)
ナムスライ・バットバヤル(モンゴル)
<フライ級/5分3R>
鶴屋怜(日本)
ケヴィン・ボルハス(ペルー)
<バンタム級/5分3R>
シャオ・ロン(中国)
フランチェスコ・ヌッツィ(イタリア)
<フェザー級/5分3R>
ジャック・ジェイキンス(豪州)
ショーン・ウッドソン(米国)
<バンタム級/5分3R>
ローレンス・ルイ(ニュージーランド)
エクトル・サンチアゴ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
シィォン・ヂィンナン(中国)
ジュリア・ポラストリ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
ティン・モン(中国)
キャム・ネルソン(カナダ)





















