【Gladiator030】ラカイ所属・ガンドルフィ戦へ。小森真誉「前回の試合がまぐれじゃないことを証明する」
【写真】ライト級転向は自分が高みを目指すための選択、Gladiatorでの王座戴冠は小森のターニングポイントになった(C)TAKUMI NAKAMURA
4月6日(日)に大阪府豊中市176BOXで開催されるGLADIATOR030で、新ライト級王者の小森真誉がナウエル・ガンドルフィとノンタイトル戦で対戦する。
text by Takumi Nakamura
1月大会ではデマルケス・ジャクソンの欠場を受けて代打出場、ライト級王座決定戦で田中有にTKO勝利してベルトを巻いた小森。この王座奪取をきっかけにフェザー級からライト級への転向を決意し、ライト級で戦う準備を続けてきた。
今回対戦するガンドルフィはチームラカイに所属するアルゼンチン人ファイター。最近の情報がほとんどないガンドルフィだが、小森はこうした相手にも勝っていくことでライト級における自分の価値を上げたいと語る。
――今日は小森選手よろしくお願いします。本題に入る前に、小森選手は中邑真輔選手の新日本プロレス時代の入場曲(Subconscious)を使っていますが、中邑選手のことが好きなんですか。
「はい。小学生の頃からプロレスが好きで、ずっと中邑選手のファンなんです。実はあの曲を使い始めたのはアマチュア時代からで、僕がファイティングネクサスのアマチュア大会に出た時、アマチュアでも入場曲ありだったので、大会側から入場曲を選んでくださいと言われたんです。ちょうどその時期に中邑選手が新日本プロレスからWWEに移籍することになって、何かのインタビューで中邑選手が『WWEに行ったら入場曲が変わる』と言っていたんです。だったら他にあの曲を使う選手が誰もいなくなるよなと思って、自分の入場曲としても使わせてもらっています(笑)」
――ずっと気になっていたので、謎が解けました(笑)。さて1月のグラジエイターではデマルケス・ジャクソンの欠場を受けて代打出場、田中有選手にTKO勝ちし、ライト級王座に就きました。チャンピオンになって、どんな変化がありましたか。
「大きく変わったことはないですけど、やっぱり色んな方が喜んでくれました。ちょうど僕の試合前に八隅(孝平)さんがロータスのプロ部門を解散するかもしれないと言っていて、ジム内にそういう空気があったんですよ。そこで自分が勝つことができて、空気を変えられたのは良かったかなと思います」
――今だから話せることかもしれませんが、ジムの雰囲気があまりよくなかったのですか。
「12月は河名(マスト)くん、平田(直樹)くん、矢地(祐介)さんが負けて…ロータスに来ているメンバーの負けが続いていたんです。それで八隅さんも自分は(プロを教えるのは)向いてないみたいになって『次で小森が負けたら解散だな』と。そういうことがあって試合後のマイクではロータスの名前を出して、ああいう言葉(『ロータス世田谷は強いことを、もっともっと証明していきます』)が出ていました」
――そうした事情があったんですね。その中で試合で結果を出してベルトを巻いて、自信がついた部分はありますか。
「ちょっと自信を取り戻したというか、自分はずっと練習では強いのに試合では勝てないと言われていて。青木(真也)さんにも『強くないわけじゃないけど、試合で勝てないというのはもう単純に向いてない』とはっきり言われました(苦笑)。自分としては『もう少し頑張ります』みたいな感じになっていたんですけど、そこで前回タイトルマッチが決まって、いつも以上に気合いが入っていたかもしれません。しかもそこで勝つことが出来て、その後の練習でも調子が良くなっているので、少しずつですけど自分の中でもここから上を目指せるのかなという気持ちになっています」
――例えば練習では伸びている実感があるのに試合では勝てないという時期もあったのですか。
「そうですね。常に試合をした後は、これがダメだった、あれがダメだったという部分を反省して、練習に取り組んでいます。もちろん最初はやられるだけなんですけど、ちょっとずつ自分がやられないようになって、攻めにいけるようになったり、練習での成長は感じていました。ただ試合では結果につながらず、毎回負ける度に『なんでだ?』とは思っていたので、前回の試合はそこを変える試合になったと思います。あとは判定じゃなくて極めて勝てたのもデカかったですね」
――タイトルを持っていることもあり、今回はライト級での試合になりますが、これからはライト級に照準を絞る考えですか。
「前回は急遽のオファーでライト級という感じだったし、最初にオファーを受けた時はタイトルマッチではなかったんです。だから1回ライト級でやらせてもらうというぐらいだったのですが、最終的にライト級のタイトルマッチになって、自分がベルトを巻くことになって。それで今後のことを考えた時に、チャンピオンとしてライト級で試合をしていくことになるし、ロータスにはライト級の練習仲間も多くて、自分が上に行くための環境を作ることが出来る。それで中途半端ではなくライト級に専念しようと思いました」
――では体重調整というよりも、自分の練習環境など諸々を考えて、ライト級で戦おうとういう判断なんですね。
「はい。自分のファイトスタイル的に相手にやられてからやり返すという部分があって、例えば自分ではやられてないと思うポジションでも、見ている人にはそれが伝わらないんですよね。それだったらもっと分かりやすく組み伏せたり、自分が攻めている状況を練習から作らないといけない。それを考えると自分の場合はライト級でやった方が合っていると思っています。ロータスで一緒に練習している岩本(健汰)くんも、もともとフェザー級だったんですけど、77キロでADCCに出るために体を大きくしたんです。そしたら単純にデカくて強い感じになって、岩本くんからも『小森さんもでかくした方がいいですよ』みたいなことを言われていました。やっぱり生物的にもデカい方が強いし、これを機に体をデカくしてライト級で戦っていこうと思いました」
――実際に練習における変化は感じますか。
「フェザー級時代はフィジカルが強いと言われる選手と練習すると、相手の攻撃を受けることで精一杯で自分から技を仕掛けられないことが多かったんです。でもライト級に合わせて体を大きくしようと思ってからは、相手の攻撃を受け切れるようになりました。組みの攻防で心が折れなくなったというか」
――例えばスパーリングでやられっぱなしにならなかったり。
「そうです。今までは相手の攻撃を受ける・凌ぐで終わっていた場面でも、自分から反撃するチャンスを作り出せるようになってきました。まだ完全にそれが出来るようになったわけではないですが、ライト級では少しずつ自分が展開を作れるところまで持っていけるなという手応えがありますね」
――今は相手の攻撃を受けて自分の攻撃に移る・自分のターンを持ってくるための練習を意識しているところですか。
「はい。相手の攻撃を受け続けるのではなく、受けてから攻める。そういう形をもっと明確に作れるようになりたいと思います」
――そして今大会ではチームラカイのナウエル・ガンドルフィと対戦が決まりました。今回はほとんど対戦相手の情報がないそうですね。
「昔の試合映像はYouTubeで見たのですが、チームラカイに移ってからの試合映像がなくて……。しかも昔の映像を見る限り、自分から寝技に引き込む軟体系の感じで、それがラカイに行ってどう変わっているのかは不気味ですね。やってみないと分からないです」
――ガンドルフィが打撃が強いスタイルであればラカイ入りしてもファイトスタイルをイメージしやすいですが、引き込んでガードから寝技を作るタイプであれば、ラカイのスタイルとは正反対ですよね。
「そうなんです。だからいざ試合になると、いきなりパンチを振ってカーフを蹴ってくること可能性もあると思います(苦笑)」
――そういった事前情報が少ない相手だからこそ、自分の強みをぶつけて戦いたいですか。
「それこそ中邑選手の名言“なりたい自分になる”じゃないですけど、そうするためには今回も勝たないといけないし、前回の試合がまぐれじゃないことを証明するために、自分の立ち位置を作っていかないといけないと思っています」
――もしここでガンドルフィに足元をすくわれると、周囲の評価も「小森がよく分からない外国人に負けた。前回の勝ちはラッキーだ」となりかねません。
「実際にそう思われちゃうだろうし、それはベルトを巻かせてもらっているグラジエイターにも、前回対戦してくださった田中選手にもよくないと思うので、やっぱりあいつ強かったんだなと思われる結果を出したいと思います」
――そういうことも含めて、これからの目標を聞かせてもらえますか。
「自分自身、1月から時間も経ってないので、ライト級の体を作れたとは思っていません。でもここから勝ち続けて、ライト級で誰とやっても負けないと思われるような選手になりたいです。僕の一つ前の試合で岩倉(優輝)さんとダギースレン(・チャグナードルジ)が試合をするので、この試合で勝った方とやれたらいいなと思います。そういう試合に勝っていけば、自分のライト級の選手としてレベルや価値も上がっていくと思うので、日本のライト級で強いと言われる選手になるまで、今年は上がっていきたいです」
――あくまで前回のベルト奪取はライト級でのスタートという位置付けですね。
「そうですね。グラジエイターのベルトを巻いて、半端な気持ちではなくて、本格的にライト級で戦っていく気持ちになりましたし、今回はその第一歩として必ず結果を残します」
――ずばり2025年はライト級における小森真誉の存在感を見せていく一年にしたいですか。
「現時点で僕のことを日本のライト級で強いと思っている人はいないと思うんですよ。その状況を結果で変えていきたいし、そういう人間がベルトを巻いていることはグラジエイターにとっても良くないと思うんですね。その意味で他団体の選手からも『グラジエイターでチャンピオンの小森って強いよね』と言われるような選手になります」