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【Pancrase Blood03】山上幹臣を下した今井健斗、松原聖也戦へ「相手にとって一番嫌な距離で戦いたい」

【写真】試合内容もそうだが、言葉の一つひとつに明確な意志が感じられる24歳の今井健斗だ(C)SHOJIRO KAMEIKE

28日(日)、大阪市住吉区の錦秀会 住吉区民センター大ホールで開催されるPancrase Blood03で、今井健斗が松原聖也と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今井が今年5月にグラジエイターで、元修斗世界王者の山上幹臣にKO勝ちした一戦は大きなアップセットだった。スタンドの打撃戦、さらにテイクダウンやスクランブルで山上を削り続けた末のストップをもたらした、自身の成長とは?


最初は組めば勝てるような状態でした。でも……

――本日はよろしくお願いします。おぉ、UFCジャージ着用ですね。

「あぁ、これですか(笑)。去年の5月から6月にかけて、パラエストラ沖縄(当時、現THE BLACBELT JAPAN)へ出稽古に行かせていただいたんですよ。その出稽古が終わった時に松根良太さんから頂いたジャージで。試合の時とかも結構着させていただいています」

――松根さんが平良達郎選手と共にUFCで戦う際の、いわばセコンドのコスチュームです。それを譲り受けるとは、プレッシャーに感じませんか。

「いやぁ、もう本当に……でも自分にとっては、このジャージを着ていると計量でも試合でも気分が上がります。ちょっと強そうに見えるかな、って。アハハハ。

あの時期に仕事でお休みを頂いたけど、何もすることがなかったんですよ。せっかくなのでお休みを有効に使おうと――平良達郎選手は同い年で、さらに同じフライ級でどれくらい強いのか。一度手合わせさせてもらいたいと思って、練習に行かせてもらいました」

――もともと松根さんや沖縄の関係者と繋がりがあったのですか。

「いえ、何もなかったです。まず松根さんに『3週間ぐらい練習に行きたいです』と伝えたら、『ぜひ来てください』と言ってもらえたので、沖縄に行きました」

――何も繋がりがないなかで、いきなり松根さんにコンタクトを取るとは度胸があるというか……。

「アハハハ、そうですかね。MMAをやるうえでは、度胸があるのは良いことだと思います(笑)。昔から、思い立ったらすぐ行動に移すタイプで。MMAを始めたのも『やってみるか!』と、勢いの部分は大きかったですね」

――MMAを始めたのは、いつ頃ですか。

「20歳の時です。もともと5歳から19歳まで柔道をやっていました。柔道から離れたあとに『少し体を動かしたい』という感じで、今のジムに入会したんですよ。最初はプロになりたいとかっていう気持ちもなく、ただただ格闘技を始めたいという気持ちだけで。どのジムが良いとかも全然分からず、とりあえず家から一番近いこのジムに入りました」

――柔道時代の実績は?

「実績は全然ないです。なんとか地区大会で優勝し、県大会に行くと2回戦で負けるというぐらいのレベルでした」

――MMAでもキャリアの序盤は、柔道をベースとした組み技を主体に戦っていました。しかし徐々に打撃主体のスタイルに変わってきています。

「最初は組めば勝てるような状態でした。でも自分より組みが強い選手に負けてしまう傾向があって。だから、まずは打撃を頑張らないといけない。打撃も極めも全てできるようになろうと思いました」

――なるほど。今年2月の岸田宇大ではスクランブルで優位に立ったにも関わらず、三角絞めを極められてしまいました。あの時点では、まだ打撃主体のスタイルに変えられていなかったのでしょうか。

「あの試合は相手に飲み込まれてしまったというか……。相手は柔術黒帯で、自分も寝技で勝負せずに打撃で行きたいと考えていました。でもケージに入って最初に組んだ時、自分のほうがフィジカルは強いなって思ったんです。『もしかして組みで行けるかも……』と思いながら、途中で『やはり打撃で行こう』と変えた時には、すでにもう遅くて」

自分が強すぎず弱すぎず――ちょうど良い噛ませ犬なんだろうなっ、て

――その敗戦を踏まえて、山上戦は打撃主体で行こうと。

「いえ、あの試合も最初の作戦とは違っていたんですよね(笑)」

――えっ、どういうことですか。

「だって山上選手は打撃が強いじゃないですか。自分が勝てるのは組みやフィジカルの部分かなと思って、本当はフルラウンド漬けて殴って――という試合をするつもりでした。だから、まず自分からテイクダウンに行ったんです。でも試合が進んでいくうちに『近い距離の打撃だったら勝てるかもしれない』と感じて、途中で切り替えました」

――作戦の切り替えが功を奏しましたね。結果的にKO勝ちを収めましたが、まず山上戦のオファーが来た時の気持ちを教えてください。9年ぶりのMMA復帰とはいえ、元修斗世界王者との対戦は大きなチャンスでもあります。

「山上選手が復帰戦ということで、自分が強すぎず弱すぎず――ちょうど良い噛ませ犬なんだろうな、って思いました。アハハハ。でも怒りとかはなく、2月に負けている自分に、山上選手のような名前のある選手と試合するチャンスを頂けて嬉しかったです。あとは試合映像を視て、とにかく左ストレートは食わないようにしようと思いました」

――実際、試合では何度か山上選手の左を被弾しているにも関わらず、ダメージを受けているようには感じられませんでした。

「一発目の左を受けた時に『これで倒れることはない』と感じました。あとは左を受けてもダメージがないような距離の設定で、どんどん前に行けると思って。結果……何て言ったらいいんですかね。もちろん勝ったことは嬉しいです。でも自分が想像していた以上の勝ち方ができたというか。打撃が巧い山上選手に――自分の打撃はまだまだヘタクソですけど、それでもKO勝ちできたのは本当に嬉しかったですね」

――さらに驚いいたのは決着が一撃によるKOではなく、山上選手が削られてダメージが溜まった状態でパウンドを受けて敗れたことです。つまり今井選手が打撃を、山上選手の体の芯まで効かせていたのだろうと思います。

「2Rの途中から自分のパンチが当たり始めて、『効いている。削れている』という手応えはありました。1Rは取られていると思ったので、2Rはパンチを効かせてからテイクダウンに行ったんですよ。2Rを抑えることで、気持ちにも余裕を持って3Rに行きたいと考えて、一発を狙うより削りに行きましたね」

自分の距離が分かって、MMAとしての幅も広がった

――同じジムの桐島龍輝選手も、絶妙な距離感で相手を削っていくスタイルです。ジムでは、そのような打撃の練習を行っているのですか。

「特に打撃専門のジムに通っているわけではなく、ジムでミットや打ち込み、スパーをしているだけで。そういう距離設定を集中して練習しているわけではないです。

ただ、自分の得意な距離が分かってきました。この距離なら勝負できる、この距離で勝負してはいけない――って。特に山上選手との試合で、もともと組み技が得意だった自分、打撃で良い展開をつくることができたのは大きかったです。打撃で勝負できるようになったことで、さらに組みやすくもなって。MMAとしての幅が広がったと思います」

――次に対戦する松原選手の印象を教えてください。

「ざっくり言うと『一発があるストライカー』という印象です。パンチをフルスイングしてくるところは気をつけないといけない。でも打撃以外では甘いところも見られますよね」

――松原選手は、スタンドの展開では中間距離からパンチを伸ばしてくるタイプです。それは、今井選手にとっては得意な距離でしょうか。

ここまで4勝1敗の松原。中距離のパンチとテイクダウンディフェンスは強い

「どちらかと言えば得意な距離だと思います。でも相手にとっても得意な距離だから、そこで無理に勝負することなく、相手にとって一番嫌な距離で戦いたいですね」

――なるほど。今後のファイターとしての目標を教えていただけますか。

「技術的には、もっと極め力が必要です。打撃戦からテイクダウンまでは行ける。あとは倒してからの技術を身につけたら、もっと強くなれるんじゃないかと思っています。

ここで松原選手に勝ってから、海外勢や国内の強い選手と戦っていきたいですね。自分はチャクチャ強い相手に勝った瞬間が一番好きなので。特に海外のゴツい、地味強みたいな相手を倒していくキャラで行きたいです!

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後1時分~U-NEXT

■Pancrase Blood03 対戦カード

<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
氏原魁星(日本)

<フェザー級/5分3R>
名田英平(日本)
シュウジ・ヤマウチ(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
遠藤来生(日本)
中村晃司(日本)

<ストロー級/5分3R>
植松洋貴(日本)
尾崎龍紀(日本)

<女子フライ級/5分3R>
ライカ(日本)
和田綾音(日本)

<バンタム級/5分3R>
千種純平(日本)
田中千久(日本)

<フライ級/5分3R>
今井健斗(日本)
松原聖也(日本)

<バンタム級/5分3R>
前田海(日本)
山木麻弥(日本)

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