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【Pancrase344】勝負のキム・サンウォン戦へ、中田大貴「同じようなレベルで競っている。1段階超えて」

【写真】勝って、ケージのなかでティラノサウルスをやってほしい (C)TAKUMI NAKAMURA

30日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるダルヘッダー昼の部=Pancrase344で、中田大貴がキム・サンウォンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月のシュウジ・ヤマウチ戦はヤマウチの計量オーバーにより試合消滅、結果的に約1年ぶりの再起戦となった中田。この1年間で打撃・組技を一から磨き直し、韓国での練習を経て自分が目指すレべルがどこかを体感した。ランキング2位の強豪サンウォンとの一戦を目前にして「強い相手と戦って勝ちたいという気持ちは常にある。こういう相手と巡り会えたことは本当に嬉しい」と心境を明かした。


基本的なところをレベルアップさせるイメージで取り組んできました

──まず3月のパンクラス立川ステージガーデン大会、対戦相手のシュウジ・ヤマウチ選手の計量オーバーにより、試合そのものが消滅という形になりました。あの時のことを振り返っていただけますか。

「まず僕が計量をクリアして、相手が1.8キロオーバーだったんです。その時点では僕も大沢(ケンジ)さんもやる気だったんですよ。しょうがないねって感じで」

──ヤマウチ選手のオーバーの幅も試合が成立する範囲だったんですよね。

「そうですね。2キロ以内だったら試合が成立するんで。ただ1.8キロオーバーは危ないという意見もあったり、再計量の時に50~100グラムしか落ちてなくて、そもそも落とす気ないじゃんと思って(苦笑)。そういうこともあって当日計量の戻しを70.3キロにして、それを条件にしてもらえないかという交渉をしました」

――ようはリカバリーは1階級上までにしてくれということですね。

「そうです。そうしたら、もう体重を戻してリカバリーしてるから、それは無理だと。計量が終わって4~5時間以内の話だったんで、なんとかなるだろうと思いつつ(苦笑)、最終的には話がまとまらなかったです」

──試合がキャンセルになったあとはすぐ気持ちを切り替えられたのですか。

「1週間ぐらいは休んで、すぐに切り替えて練習を再開しました」

──結果的に昨年7月の高木凌戦(1R、TKO負け)から約1年間、試合が空く形になりましたが、この1年間で色んなことにトライしてきたと思います。もともと新しい練習をする時間が欲しいという考えはあったのですか。

「そうですね。あとはダメージですね。自分はコンスタントに試合をしていて、結構ダメージが溜まっているというか、毎回毎回顔が腫れるような試合だったので、一度ダメージを抜くじゃないですけど、頭を休ませて形もしっかり作り直したいと思いました。打撃、組み技、フィジカル、全部を見直した期間になったと思います」

――具体的にそれぞれどういう取り組みをしてきたのですか。まずは打撃から教えてください。

「もともと自分は打撃の基礎ができていなくて、ぶん回すだけでなんとかここまで来くることができてしまって、打撃のスキルがあまり伸びてないなと思ったんです。それでしっかりトレーナーについてもらって、打撃を教えてもらおうと。その時に出会ったのが良太郎さんで。良太郎さんとは髪の毛を切るところが同じで、そこのオーナーに『MMAの選手もたくさん指導しているから、練習を見てもらったら?』と言われて、一度良太郎さんにミットを持ってもらったんですよ。

その時に僕のMMAの形を崩さないように指導してもらって、脱力とか立ち位置とか本当に基本的なところを見直してくれて。それが自分的にすごくしっくり来たので、良太郎さんに練習を見てもらうことを決めました」

――MMAの選手が打撃を強化すると、打撃に特化した戦い方になってバランスが崩れることもありますが、それはないですか。

「はい。良太郎さんはMMAのことをものすごく研究されていますし、色んなタイプの選手を指導していて、それぞれみんな戦い方や特性が違うじゃないですか。だから良太郎さんは選手が持っている良さや個性を伸ばす力があるのかなと思います」

──指導内容としては構えやスタンスなど基本的なことですか。

「そうですね。『力が入りすぎ』、『足がずれている』、『立ち位置が悪い』…本当にそういう基本的なこと、自分が意識の中から抜けがちになることをしつこく言ってもらっています。自分の場合は(肩に力が入っているジェスチャーで)力がこもりすぎるので、そこで力を抜いてリラックスするみたいな。あと打撃と組みの繋ぎ、テイクダウンからパウンドまで、良太郎さんにミットを持ってもらっています」

――組み技に関してはいかがでしょうか。

「NEVER QUITやロータス世田谷に行ってスパーリングを中心にやらせてもらいつつ、HEARTSで江藤(公洋)さんに組み技を見てもらっています。基本的に自分は殴って戦いたい意識があるんで、それをやるための動きというか。逃げやディフェンスを中心にしつつ、自分から一本を取る練習やイメージを作っています」

――打撃・組み技どちらも新しいことを覚えるというよりも、中田選手の戦い方を肉付けしてペースアップするような形ですか。

「そうです。基本的なところをレベルアップさせるイメージで取り組んできました」

──またこの期間に韓国でも練習したそうですが、現地ではどんな練習をしていたのですか。

「技術練というよりもスパーリング中心のメニューが多くて、もう少し技術練ができると期待してたんですけど、日本でやっていることと変わらないと言えば変わらなかったですね。ただその分、色んな選手と練習する機会が多くて、それが自分の中で一番大きな経験になりました。

例えばコリアンゾンビ(ジョン・チャンソン)のジムは一度のプロ練習に30~40人ぐらい参加するので、あれはいい経験になりました」

──韓国のMMAファイターはタフで打ち合うスタイルという印象が強いですが、そういう選手が多いのですか。

「そうですね。ガンガンスパーやって、筋トレやりまくってみたいな。それでいくと筋トレやコンディショニングへの意識がものすごく高かったですね。もともと身体が強いのもあると思うんですけど、筋トレやフィジカルを鍛えることが文化として根付いていて、そこを強化することが当たり前みたいな感じなんですよ。日本人は筋トレやフィジカルをやる人・やらない人がいると思うんですけど、韓国はそれがないですね。筋トレはやって当たり前、そういう感じでした」

──そのうえでどのような収穫があったのですか。

「自分自身はフィジカル負けすることもなかったですし、勝負していけるなと思う一方、通用するだけじゃなくて、頭一つ抜けないといけないなと思いました。UFCで戦っているチェ・スンウ選手とも練習したんですけど、彼はやっぱり他の選手よりも抜けているなって印象があったんです。だから自分もそのレベルを目指さないといけないなと。

今のパンクラスのフェザー級もランカーは同じようなレベルで競っているので、そこからさらに1段階超えてチャンピオンにならないと、そこから先の舞台には行けないんじゃないかなと思います」

──手応えがある、通用すると思っていても、一歩引いてみれば韓国でプロを目指す選手たちの平均的なところにいるということですよね。

「そうです。10回やって5回勝てる、じゃなくて、10回やって7回、8回、9回、10回勝てる。それぐらい頭一つ抜けないと、この格闘技界を生き残っていけないと感じています」

キム・サンウォンは全然UFCに出ていてもおかしくないレベル

──そして今大会では奇しくも韓国のキム・サンウォンと対戦することになりました。どんな印象を持っていますか。

「基本ストライカーよりの選手で、フィジカルが強い。組みも結構タイミング良くタックルやバックを取ってきたり、RNCも極めてくる選手だと思います。まさに韓国で練習してきた選手の中のハイレベルな選手の1人かなという印象ですね」

──個人的にサンウォンはランキングの数字以上の強さを持っている選手だと思います。

「そうですよね。全然UFCに出ていてもおかしくないレベル、ランカーまではいかないまでも、ランカー手前ぐらいにはいるレベルの選手だと思います。だからこそ今回サンウォン選手に勝ったら本当に大きいと思いますね。ただ、今の僕は負けが込んじゃっているので、ここで負けちゃうと負け数が多くなってきてどうしよう?みたいな感じになるので(苦笑)、ここは勝ちに行きたいと思います」

──いろんなマッチメイクの巡り合わせもあると思いますが、このタイミングでサンウォンと戦えることはモチベーションになっていますか。

「強い相手と戦って勝ちたいという気持ちは常にあるので、こういう相手と巡り会えたことは本当に嬉しいです」

──話せる範囲でどういう試合をイメージしていますか。

「やっぱりストライキングがポイントだと思います。相手は距離を取りながら、ドーン!とワンツーで倒しにきたり、自分が追いかけていったところでタックルに入ってきたり、そういうイメージを持っています。だから相手のやりたいことをやらせないで、自分のやりたいことを押し付ける、プレッシャーをしっかりかけていくみたいな。まあいつも通りなんですけど、そこの精度が上がっていて、倒すイメージを用意してきました」

──反省点や伸ばしたい点があっても、自分の中で「こういう戦いをして勝つ」という信念は崩れてないようですね。

「結局自分って別に運動神経も良くないし、小さい頃からスポーツも得意じゃなくて、格闘技が好きという気持ちや何をやっても恐れないという気持ちで、ここまでやってきました。他の選手みたいに身体能力が高いわけじゃないし、打撃のキレがあるわけでも組技が上手いわけでもないから、自分の強いところを相手に押し付けて勝っていく、勝負していくというのは絶対に変わらないです。

ここから勝ち上がっていくためにも、そこの信念はブレたらいけないなと思うし、その信念はしっかり大切にしながらドンドンドンドンいろんなことができるようになっていきたいなと思います」

■視聴方法(予定)
6月30日(日)
午後12時00分~U-NEXT

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