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【RIZIN LANDMARK08】RIZIN初陣で瀧澤謙太に勝利、野瀬翔平「圧倒してフィニッシュすることは想定内」

【写真】強い選手と戦い続けてきた野瀬にとって、この勝利は当たり前というのが陣営の考えだった(C)RIZIN FF

2月24日(土)、佐賀県佐賀市のSAGAアリーナで開催されたRIZIN LANDMARK08で野瀬翔平が瀧澤謙太に2RTKO勝利を収め、RIZIN初参戦を勝利で飾った。
Text by Takumi Nakamura

Road to UFCを見てきたファンにとっては納得の、RIZINファンにとっては衝撃のTKO勝利にはどんな技術と戦略があったのか。野瀬本人の言葉とともに紐解いていきたい。


――――2月のRIZIN LANDMARK 8 in SAGAでは瀧澤謙太選手に2RTKO勝利でした。試合後の周囲の反響はいかがでしたか。

「試合後は『今まで野瀬のことを知らなかったけど、こんな強い選手がいるんだ』という声が多くてうれしかったですね」

――野瀬選手のRoad to UFCでの試合を見ている人たちは野瀬選手の強さを知っている。一方でRIZINファンにはまだその強さが知られていなかった。試合前のその評価はどう受け止めていましたか。

「対戦カードが発表された時、RIZIN常連の瀧澤選手がRIZIN初参戦のよく知らない選手とやるみたいな感じで、瀧澤選手が勝って当然という予想が多かったんですよ。正直『分かってないな。俺が勝つから見てろよ』って悔しさはありましたね」

――改めて今年最初の試合としてなぜRIZINを選んだのですか。

「弘中(邦佳)先生とも話をして、今年はUFCにアタックするのではなく団体問わずに強い選手と戦って経験を積む1年にしようと思っていたんですね。そのタイミングでRIZIN佐賀大会があるということで、RIZINは国内のビッグイベントでもあるし、出ることを決めました」

――UFCへのチャレンジには一旦区切りをつけたということでしょうか。

「2年連続でRoad to UFCを勝ち抜けなかったので、今年もまた3度目のチャレンジというのは考えていなかったです。それよりもちゃんと試合経験を積んで強くならないといけないなと。やっぱり2年連続でチャンスを逃してしまって、僕としてはチャンスが遠ざかったと思っているし、2回ダメだったヤツが3回目お願いしますは都合がよすぎると思いました。だったらちゃんと強くなって、また野瀬はUFCに行くんじゃないか?と言われるくらい成長してからチャレンジしようと思いました」

――またUFCを目指すにしても、今はキャリアの転換期でもあったわけですね。

「はい。今年は再出発の一年だと思っています」

――さて今回の瀧澤戦はどのような作戦を立てていたのですか。

「打撃の時間をなくして、組む時間を長くすれば勝てるだろうと思っていました。そのうえで瀧澤選手は蹴りを多用するので蹴りをキャッチする、もしくは奇麗にテイクダウンできなくても組みついてケージまで押し込む。それを考えて練習していました」

――クリンチする時間を長くするイメージですか。

「そうですね。もっと言えば打撃が出せない距離、くっついている時間、0(ゼロ)距離の時間を長くすることですね」

――瀧澤はテイクダウンディフェンスも意識する一方、思い切り蹴ったり、倒されるリスクよりも打撃でダメージを与えることを優先するタイプです。そこは警戒していましたか。

「はい。蹴りの距離が遠いし、ストレートやヒザ蹴りのカウンターも上手い。あとで試合映像を見返しても、何度か危ない部分があったと思います。ただ相手の打撃を怖がって中途半端に距離を取ると、もっと瀧澤選手ペースになるので、そこは打撃を怖がらずに密着する。それがさっきの0距離という感覚ですね」

――0.5すらも与えないと。

「はい。0距離、密着ですね」

――そして遠い間合いでは野瀬も積極的に打撃を出していた印象です。それを出さないと組めないという考えだったのですか。

「そうですね。瀧澤選手は経験値もあるし、いきなりテイクダウンに行っても切られると思ったんです。だからスタンドで『こいつもしかしたら打ち合ってくるかも』と思わせる打撃を出してから組むことを意識していました」

――最初にダブルレッグに入ったとき、瀧澤選手もヒザを合わせてきましたが、そのまま組んでリフトしてからテイクダウンしました。

「あれはポイントもずれていたし、僕のダブルレッグの方が速くてリフトもできたんで、組んでしまえばこっちのもんだと思いました」

――ああいった場面は中途半端に組みついた方がヒザをもらってしまうものなのでしょうか。

「きっとあそこで僕が躊躇してテイクダウンのスピードが遅くなっていたら、逆に危なかったと思います。ただあのあとすぐに腕十字にいっちゃったのは僕の悪い癖ですね(苦笑)。本当はもっとしっかりトップキープすべきだったと思うし、あれは反省点の一つです」

――結果的にスタンドに戻されましたが、最初にテイクダウンに成功したことで、次も組めば倒せるという手ごたえはありましたか。

「一度逃げられたのはミスでしたが、同じことを繰り返せばテイクダウンはとれると思っていたので焦りはなかったです」

――そして瀧澤選手の前蹴りをさばいてダブルレッグで尻餅をつかせ、立ち上がった瀧澤選手をバックコントロールしてグラウンドに持ち込みました。ここからはバックキープしてラウンドを終える展開でした。あれは野瀬選手が得意な形ですか。

「相手を寝かせる。背中を向けて立とうとしたらバックをとる。足を四の字クラッチする。これはもう僕の得意な形ですね」

――バックを取ってからシングルの四の字ロック、いわゆる“おたつロック”でキープする形でした。

「もしあそこから瀧澤選手が向き合ってきたらツイスターや前回極めたアームロックが狙えるのですが、瀧澤選手はバックをとられた状態で向き合おうとしなかったんです。事前の映像を見ていたのか感覚なのかは分からないですが。だからサブミッションは難しかったんですけど、逆にバックコントロールし放題なので、これだったら殴ろうと思って、途中から殴る方にシフトしました」

――1R終盤に右足で瀧澤選手の右腕をひっかけてバックキープしていましたよね。あれは練習でもやっていたのですか。

「あれも僕の得意な形で、柔術やグラップリングの練習でもよく使うんですよ。確かゴードン・ライアンが使っていたのを真似して、それを弘中先生や荒牧(誠)先生と改良した感じですね」

――世代的にはBJ・ペンがジョー・スティーブンソンにRNCを極めた時のものだ!と思って興奮してしまいました(笑)。一貫して1Rは自分のやりたいことが出来たラウンドだったのではないですか。

「はい。インターバル中も『同じことを繰り返せばいい。ただ相手は入り際の一発を狙ってくるから、そこだけは気をつけろよ』という指示でした」

――ただ2Rもその入り際で右ストレートやヒザ蹴りを被弾しました。

「そうなんですよ(苦笑)。ヒザ蹴りを腕で受けたんですけど、テイクダウンにいこうとして頭を下げていたら危なかったし、一発の当て勘やそこに持っていくまでのフェイントのかけ方は本当に上手いなと思いました」

――ただ野瀬選手も左ストレートからダブルレッグで組みついて、1Rと同じようにバックコントロールからのテイクダウン、おたつロックでのバックキープという展開になりました。ここで瀧澤選手向き合おうとしたところで、首を右腕・右ワキで抱えていましたよね。いわゆるエクセキューショナーチョークですが、あれは練習でも極めているのですか。

「四の字ロック(おたつロック)から向き合おうとする選手にはあれでタップを取れるんですよ。瀧澤選手にも狙ってみたのですが、首の位置だったり胴の長さだったり、体系的なところもあって極まらなそうな感じだったんですね。それでキープの方に移行しようと思いました」

――腕ごとひっかけるバックキープはゴードン・ライアンがきっかけとのことでしたが、エクセキューショナーチョークも何かきっかけがあったのですか。

「これは練習でやってみて思いついた技ですね。ちょうどRoad to UFCで鶴屋怜選手もやっていたので、四の字ロックを使う人はあの形に行き着くんだなと思いました」

――その後の展開にもつながりますが、あそこからマウントにも移行できるし、仮に一本とれなかったとしても、次に展開できるキープの形ですよね。

「はい。この試合もあそこから僕がマウントを取って、相手にとって致命傷になるヒジを落とせたので、あの(エクセキューショナーチョークの)プレッシャーがフィニッシュにつながったと思います」

――こうして野瀬選手のお話を聞いていると、サブミッションのアプローチがあるからこそ、相手の動きが止まる→殴りやすいという展開だったことが分かります。

「僕もそう思います。瀧澤選手はかなり僕のサブミッションを警戒していたので、それで殴りやすかったですし、逆に僕が殴りに固執していたら立たれたり逃げられていたと思います」

――あとはフィニッシュ前に落として縦ヒジですが、あれは見ていてもえぐかったです。ルール的にOKとはいえ、ガンガンいっていましたね。

「前日のルールミーティングでも耳のラインまでだったら縦ヒジもOKと言われて、エグいルールだなとは思いつつ、自分に使える場面が巡ってきたので、そこはフルに使わせてもらいました」

――試合を終えてのチームとしての感想はいかがでしたか。

「大舞台でも練習でやったことを練習通りに出来たことは褒めてもらいました」

――戦前の下馬評はあったにせよ、自分の実力を出せればしっかりフィニッシュできるという自信はありましたか。

「はい。このくらい圧倒してフィニッシュすることは想定内だったので、驚きでもアップセットでもないです。それと同時に先生たちからは『これをもっと強い相手にできなきゃだめだぞ』とも言われました」

――Road to UFCで培ってきたものはRIZINのトップ選手と比べてもそん色ないものだという自負もありますか。

「僕は日本での知名度がないかもしれないですが、Road to UFCでは強い選手たちと戦ってきたので、そこで経験値が足りないとか、そういうことは一切ないと思っています」

――今後も国内ではRIZINで戦うことになると思います。次戦へ向けた意気込みをいただけますか。

「日本国内で一番強い選手と試合を組んでもらえる舞台がRIZINだと思うので、是非またオファーをいただきたいと思います。今回下馬評を覆す試合が出来たので、次はもっと強い相手に同じような試合・勝ち方をして、皆さんをもっともっと驚かせたいです」

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