【Road to UFC2023】未知の中国人選手にスプリット判定勝ち、上久保周哉─01─「中国は強いと思います」
【写真】しっかりと自身を試合を振り返ってくれました (C)MMAPLANET
5月27&28日の両日に、中国は上海のUFC PIにおいて開催されたRoad to UFC。日本人選手は7人が出場し、準決勝に勝ち残ったのは4名だった。
そのうちの1人、上久保周哉は今大会で最も勝ち上がりが期待される選手であったが、チィルイイースー・バールガンを相手に初回にダウンを喫し、それ以降もこれまでとは違う打撃を織り交ぜてのファイトと、全力戦を強いられた。
帰国後、Road to UFC初戦を終えての心境を上久保に尋ねた。
──まさか、上久保選手の試合であんなにヒヤヒヤするとは思わなかったです。
「アハハハハ。まぁ周囲が予想している以上に、強いだろうとは思ってはいました。体のフレームがデカいのは一目瞭然で。ただ思っていたほど大きくなかったけど、実際に組むと相当に力は強かったです」
──想定内の苦戦だったのですか。
「正直、あのヒザはしてやられたなっていう展開ではあったんですけど、組みで苦戦するのはある程度は想定していました」
──そこまでだったのですね。いや、でもONE最後の試合となったトロイ・ウォーセン戦を見ていると、やはりチィルイイースー・バールガンに苦労するのは予想外でした。
「トロイ・ウォーセンは受けて立ってくれたので。ONEで戦っていた相手は僕のことを『打撃ができない』と軽く見ていました。だから彼らは攻めてくるので、僕も組んで倒せた。ウォーセンも攻めてくるから、攻防が成り立ち自分の試合ができたんです。
拒否じゃなくて、来たモノに対して自分の持つ技術で返してくるので攻防が成立しました。向うも攻めてきますし。だから攻守の入れ替えがずっとありました。正直、自分が自分と試合をするとバールガン・チィルイイースーみたいにするわなって。組みに付き合わないことは絶対にあり得ると思っていました。
ただしバールガンも勝ってきたのは組み。そういう選手なのでどこかで組んでくるかと思っていたのですが、自分の得意な部分を防御に徹底して使ってきましたね。全力で拒否してきたので、試合の冒頭から『こうくるか!!』とは思いました」
──最初は向うも組み勝ちにくるだろうと。
「ハイ。それでも僕のやることは変えなかったです。変えないけど最初に組んで組み勝って、グラウンドに持ち込めるのが理想的なプランAだとすると、BやC──上手く行かなかったときのパターンに切り替えていかないといけないと最初に想いました」
──プランBにもプランCにも、あのヒザ蹴りは入っていなかったということですよね。
「ヒザがあるということは、自分と戦うなら下からの突き上げ──ヒザ、アッパー、それとヒジを狙われるのは絶対にあることです。ただ、あのヒザ蹴りはそこまでの組手の創り方にハメられた感はあったかと。ちょっと、自分が攻防をミスった瞬間があって、頭を下げた時にヒザが来るのが見えました。『あっ、やばっ』と思ったら、尻もちをついていました(笑)。
『あっ、当てられたな』って。でもフラッシュなので、立ち上がってケージに押し込んだ時には元に戻ってはいました。でもダウンは取られましたからね。それでもダメージは引きずっていなかったですし、自分の感覚的としてはメッチャ被弾しているのに、前に出るという展開はなかったとは思っています」
──それでも初回の最後はニーインベリーからキムラまで挽回しました。そして、30-27をつけたジャッジがいるということは、上久保選手が初回を取った風に判断したということですよね。
「30-27のコールを聞いた時は、『マジか』とは思いました。で、30-27をつける見方をするジャッジがいるなかで、自分の負けはあるのかなとか。でも、あのダウンがなくなっているのかと驚きましたね。ニアフィニッシュの方を取るのかって」
──いずれにしても他のジャッジの1人にしても、2Rと3Rを上久保選手につけた形で終われました。結果、やるべきことをやり切ったかと。
「やり切ったから、相手がバテてくれたのはあると思います(苦笑)」
──対戦相手への一方的な声援が、ジャッジの裁定に影響を当てるのではないかと怖かったです。
「あれは凄かったですね。中継でめっちゃ入っているということは、会場はとんでもない状態で。セコンドの声は聞こえないし、向うの当たったか当たっていないようなパンチもドーンと盛り上がる。最後の10秒とか会場はカウントダウンして、耐えろっていう応援のようでした」
──裁定が下るまで、どのような心境でしたか。
「まぁ3Rを取って、あわよくば2Rも取っていて。でも1Rは落とした。ただ契約書にはドローだと延長1Rと書いてあったので、それもあるかと」
──そんなレギュレーションがユニファイドでも適用できるのですね!! 驚きです。
「ハイ。契約書にそうあったので『もう1R、やろう』という気ではいました。ラウンドマストではイーブンって想像しにくいのですが、契約書に明記されているので、逆にそういう裁定もあるのかと考えてしまいましたね。『迷ったら、やれば良いじゃん』っていうスタイルなのかなって」
──DEEPのようなドロー&マスト判定だと、あの試合は落とす可能性があったかもしれないので、ドローの場合は延長がある方が良いですね。
「まぁ見る人の主観と多数決だから、難しいです」
──勝てて、素直に思ったことは?
「次も試合ができるな──ということでしたね。反省点がたくさんあるので、これからの練習のテーマも見えました。それも久しぶりのユニファイドのバンタム級で、水抜きもして動けたことには安心しました。リカバリーまで込みで、コンディションを創れて試合をして意外とちゃんと動けたなと。
フルラウンドはやりたいと思っていました、せっかくなんで。同時に、相手もよく研究していましたね。PIの選手はちゃんとしたコーチがついていて、しっかりとチームも研究してやってきているのを結果的には正面突破することができました」
──しかし、この試合を見て改めて中国を軽視することは絶対にできないと思いました。
「UFC PIの設備を見て、コーチが何をやっているのかという説明も聞きました。なんかああいうのを見ていたら、これは直ぐに追い越してくるだろうな。日本が上という感覚は持てないです。ばかりか、あれだけ選手にお金と技術を注ぎ込んでいたら、そう遠くない未来で中国は世界のトップに上がって来る。結果としては選手次第、意識や考え方次第ですけど一定水準は上がってくる。
中国は強いと思います。やっぱりそれを頭では分かっていたつもりでも、実際に戦って思い知った感じです」
<この項、続く>