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【Grachan60】無差別級T決勝へ、荒東‟怪獣キラー“英貴─01─「体の力じゃなく体重移動で打撃の力を生む」

【写真】首筋、輪郭がすっきりとした荒東。笑顔は変わらないが、以前よりも大人に感じる表情になっていた (C)SHOJIRO KAMEIKE

26日(日)、大阪府豊中市の176Boxで開催されるGRACHAN60で、荒東‟怪獣キラー“英貴がハシモト・ブランドンと無差別級トーナメント決勝戦で激突する。
Text by Shojiro Kameike

タイでMMAを始めたという荒東は、2019年8月にタイでプロデビューし、ここまで8戦無敗のレコードを持つ。2021年からはグラチャンに参戦し、今回の無差別級トーナメント決勝にたどり着いた。まずは自身のことを「タイからの逆輸入MMAファイター」という、謎に包まれた荒東のMMAキャリアと吉鷹理論に基づく打撃について訊いた。


――無差別級トーナメント決勝を控えて、現在の練習とコンディションはいかがですか。

「もうバッチリです! 今回はタイのプーケットにあるバンタオ・ムエタイ&MMAというところで練習してきました。3日間しかいられなかったんですが、その時にKSWのミドル級ランカーとも手合わせしてきて。ちょっと名前を忘れてしまったんですけど……。そこで、僕が今までやってきたことが間違えていなかったなと思って日本に帰国しました」

――「今までやってきたこと」とは何でしょうか。

「僕はチビデブファイターなので、相手とのリーチ差をどう潰すかが試合のポイントになります。特に初めて手合わせする相手とのリーチ差ですね。普段一緒に練習している人は、もう相手が何をやってくるか知っていて、僕の中でも何をどうすれば良いか分かっているんですよ。

でも今回、初めて手合わせする人にもある程度は同じようにやることができました。だから今までやっていたことは間違いじゃないし、『ここからプラスアルファ、どうするかやな』と思いました。あとは大きな選手とケージレスリングをやっても負けなかったし、『チビでもやれるんやな』と思って。そういった経験が、すごく自信になりましたね」

――前回の桜井隆多戦では、通常ヘビー級ではない桜井選手のほうがリーチは長かったです。その体格を考えて、ヘビー級以外で戦うという選択肢はなかったのでしょうか。

「まずMMAを始めた時、選手層が薄いからヘビー級のほうが上に行きやすいと思ったんですよ。あとはライトヘビー級まで落とせるかどうか、自信がなかったです」

――ただ、以前よりも首周りがスッキリしていませんか。

「そうですね。試合に向けて体重を落とすためでもあるんですけど、実は今――めっちゃ筋トレやっています。フィジカルも良くなっているんですよ。体脂肪率を下げたほうが、反射神経そのものは変わらないけど、相手の攻撃が来てからのスピードが上がるので。

あとは肉がついていると、どうしても守るというか、受けても大丈夫っていう気持ちになっちゃうんですね。体重が軽いほうが『行かなアカン!』という気持ちになりやすいので、試合前は体重を落とすようにしています」

――桜井戦では左ジャブや右クロスを顔面に受けていました。あれは「守る」という気持ちが大きかったのか、それとも相手はミドル級の選手だからなのか……。

「『ヘビー級の選手を相手に同じことをやったらどうなんねん』ということですよね。正直、どちらでもなく『これは喧嘩やな』と思っていたんです」

――えっ、どういうことですか。

「もともと打ち合うプランじゃなかったんです。リズム取って、体重差を生かしてパンチを当てていこうと考えていました。でも試合が始まってすぐ、桜井選手が2回ぐらい出入りでパンチを当ててきて。『これキレイにやろうと思ったら間違いや。行ったろう!』と思ったんですよ。相手のパンチが効くか効かんか、というより『これは引いたら負けや。行くしかない!』という気持ちでした。

相手のパンチ自体は効いてはいなかったんですよ。ブロック&リターンも入れているし、よう見てもらうと、もらう時も後ろ重心でズラしたりしていました。皆さんが見ているよりは効いていなかったと思います」

――ブロック&リターンという部分で、荒東選手が師事している吉鷹弘さんの存在が見えますね。

「はい。僕のストライキングは、全て吉鷹先生のエッセンスです。吉鷹先生は今でも強くて。僕より強いですよ(笑)。その吉鷹先生と僕の考え方が似ていて、先生の仰ることがスッと僕の中に入ってきます。体の力じゃなくて、体重移動で打撃の力を生む。

それは攻撃でも防御でも使うことができる。結果、『攻防』が生まれるわけですよね。今は攻撃しか考えない選手が増えたと思うんですよ。攻撃だけで勝てるわけがない。ちゃんと技術を身につけて『攻防』をしないといけない――吉鷹先生からは、そう教わっています」

――チーム吉鷹で練習するようになったキッカケは、何だったのでしょうか。

「パラエストラ大阪のタクミさんから『チーム吉鷹に行ってきなよ』と言われたのがキッカケでした。タイから帰国した時、日本に格闘技界の知り合いがゼロで。そこでタイにいる時に知り合いだった清水俊一さんから今村豊さんを紹介していただいて、パラエストラ大阪で練習するようになりました」

――そうだったのですね。そもそもタイでMMAを始めた経緯を教えていただけますか。

「もともと柔道をやっていて、大学を卒業したあと飲食店に就職したんです。でもその飲食店がブラックで――1日18時間ぐらい働いていました(苦笑)。『何や、この生活……』と思っていた時に、帰り道にあった居酒屋の社長さんと仲良くなって。その社長さんがタイへ行きはってから『ヒデ、タイで働かんか?』と誘ってくださって。

その社長さんがタイで空手をやっていた繋がりで、まずフルメタル道場で僕も練習を始めたあと、ヨーキーMMAのトレーナーだったニック(ニコラス・リー)と知り合ったんです。人間としてはアレですけど(笑)、ニックは教えるのが上手くて。彼が教えてくれたレスリング&ボクシングは、僕のベースになっています。

そのヨーキーMMAからフルメタル道場主催の大会に出たのが、僕のMMAのスタートです。怪獣キラーというニックネームは、デビュー戦でテレビ実況の人が僕のことを怪獣キラーと呼んでいたので、そこから頂きました」

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