【ONE FN04】クリスチャンのクレイジージャーニー=ウェルター級王座挑戦「マーシャルアーチストして」
【写真】自身が大きくなり、対戦相手も大きくなる。そのなかでライト級の時と同じ動きができれば、それこそ驚異的だ(C)ONE
19日(土・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE Fight Night04「Abbasov vs Lee」のメインは、大会名にある通りクリスチャン・リーがONE世界ウェルター級王者キャムラン・アバソフに挑戦する一戦だ。
ONE世界ライト級王座を8月に奪還したばかりのクリスチャンが、1階級上の王座に挑む。そのクリスチャン、7年前のデビュー戦は北米ユニファイドの145ポンドで戦っていた。北米基準でいえば当時から3階級の上のファイターと戦うことになる。
普段の体重は185ポンドオーバーというクリスチャンはこれだけ大きくなって、あのスピードとスタミナ、そしてテクニックを維持できるのだろうか。クレイジー・ジャーニーに挑む、クリスチャンに話を訊いた。
──クリスチャン、ライト級王座を取り戻したと思ったら次はウェルター級王座に挑戦。185ポンド……83.9キロで戦うなんて、素直に言えばちょっと信じられないクレイジーな選択だと……。
「そういう機会を与えられたということだよね。前回の試合が終わり、この話をもらった。幸運にもオク・レユン戦ではケガもなかったし、気持ちが上がる大きな機会になる。だからチャレンジをすることにしたんだ。ショートノーティスといえばショートノーティスだけど、ちゃんとトレーニングキャンプはやりきれたよ」
──ところで8月の試合ですが、判定にもつれこまないばかりか一方的な勝利を手にしました。
「試合前から宣言していたことを完遂できたよ。ほぼ1年振りの再戦だったけど、オク・レユンのことを研究し対策練習をハードにこなした。そのなかで技術的にも向上したことで、2Rで仕留めることができたんだと思う。タイムオフの間の成長が、勝因だね」
──一方でお姉さんのアンジェラは、クリスチャンと同じようにフィニッシュ宣言をしていましたが、初回に大ピンチがあり、そこから盛り返したものの判定負けとなりました。アンジェラ自身は判定で負けていないと言っていますが、ONEの裁定基準でいえばクリスチャン✖オク・レユンの初戦とは違い──ジャッジの判断は間違っていなかったかと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。
「僕の立場で言えば、姉をずっと応援している。良い試合だったよ。あの1Rがなければ、2Rから5Rまでで彼女は勝っていた。でもONEはニア・フィニッシュ重視だから……それでも、僕は姉の味方だ。アンジェラは最後までフィニッシュを狙っていたし、勝負を諦めていなかった。そこはシィオン・ヂィンナンを上回っていた。これがね、ラウンド・バイ・ラウンドの他のスポーツだったら、彼女は勝っていた……。でもいつも言っているように、ジャッジの判定までいくと、色々と難しいことが起こる。それが僕の考えだよ」
──スミマセン、クリスチャン自身の大切な試合前に。つまりONEの裁定基準だと、初回でもニアフィニッシュがあれば、同じくニアフィニッシュがないとスコア的に相殺されることはない。となると、初回から躊躇なく試合を終らせにいくことが正解になります。その一方で、残りの4Rをやや劣勢でも戦い抜くスタミナが必要で。そのような試合をウェルター級で、ずっと大きな相手にクリスチャンはできるのかと。
「僕は5R戦い抜けるようトレーニングをしている。そしてパンチを打ち合い、激しい試合のなかでテイクダウンを奪う。それが僕の戦い方だよ。でも、そうならなくても大丈夫。いつも最悪の状況を考えて、練習をしているから。特に次の試合の相手、アバソフはタフで簡単にフィニッシュできるわけがない。だから距離を取って戦うことも視野に入れているよ。とはいっても、僕がやるべきことはこれまで通り──試合開始直後からフィニッシュを狙う。できれば5R終了の前に試合を終らせたい」
──ところで今の体重はどれぐらいなのですか。
「今は190ポンド(※86.18キロ)で、ウェルター級のリミットには5ポンド落とすだけだよ」
──えっ、そんなにあるのですか!
「試合後は大体192ポンドぐらいになるんだ。それはリラックスして、好きに色々なモノを食べているからで。でも、今は違う。トレーニングをハードにして、この体重になっているんだ。この体重では、人生で最も体調が良い状態だよ。自分でも力強く感じるし、いつもの試合の時より20ポンド重いだけで動きは変わらないんだ」
──体が大きくなっていても、スピードやスタミナが落ちてないということですか。
「階級を上げてもスピードもスタミナもこれまで通りだよ。いや、これまで以上を目指してトレーニングしてきた。今回の試合のために、サイズの大きなスパーリングパートナーにも来てもらって、しっかりと調整してきたよ。彼らとのスパーリングで、これまでと同じように動けていることは確認できているし、変わったのは体重だけさ」
──少し安心しました。やはり組み技はともかく、打撃のある試合で体格差や体重差は安全性の部分で心配になりますし。それでも試合当日、アバソフは大きいかもしれないですが。
「心配していないよ。アバソフと打撃でも、レスリングでも、グラップリングでもやりあえる。打撃という側面にしてもマニー・パッキャオやロベルト・デュランは、どれだけの上の階級で結果を残してきただろうか。ナチュラルな階級から2、3階級上の試合でも対戦相手をKOしている。グラップリングでは20キロや40キロ重い相手とオープンクラスで戦い勝つ選手もいる。
僕はMMAファイターだ。MMAでも同じように、相手が大きくなってもいつものように戦う。そして、自分が勝てると信じている」
──マニー・パッキャオはフライ級からスーパーウェルター級まで、17年かけて19キロの間にある6階級を制しました。クリスチャンは7年前のデビューは145ポンド、その2年後にONEの計量システムが代わりフェザー級は155ポンドになりました。そこから170ポンドのライト級世界王者になり、今回のウェルター級は185ポンドです。つまりでデビュー時の体重より、名称的には3階級の違いで18キロも重くなっています。
「そこまで心配させて申し訳ない(笑)。でもMMAでもBJ・ペンはフェザー級からUFC世界タイトルを獲得したライト級、そしてウェルター級だけでなく他の大会では191ポンドとミドル級より重い体重で、225ポンドのリョート・マチダと戦っている」
──自らの体重幅は20キロで、対戦相手になると36キロの幅がありますね……。
「ユーキ・コンドーもそうだよね。彼らはMMAでもマルチな階級で成功を収めることができると示している。考え方次第だよ。自分より100ポンド体重が重くても、勝てるっていうマインドでないと。僕はファイト・デーは常にそういう気持ちになっているんだ。体重、体格は関係ない。どちらが優れたファイターか、そしてより強い気持ちで勝利を欲しているのはどちらなのかが問われるんだ」
──その考え方の根本には、体重差に関係なく戦うマーシャルアーツの思想があるからなのか。それともプロフェッショナルMMAを戦うエンターテイナーとして、常識を超えた何かを見せたいという着眼点からなのか。どちらでしょうか。
「どっちもだと思う。マーシャルアーチストとして、体重差は関係なく世界のベストになるために練習を重ねている。誰とだって戦う。同時にエンターテイナーとして、ファンに良い試合を提供したい。僕とアバソフの試合はきっとそうなる。ライト級の世界王者とウェルター級の世界王者が戦うんだから、ファンも喜ぶ。正真正銘のビッグファイトだから、僕も楽しみでしょうがないんだ。それに……やはりマーシャルアーチストとして、体の大きな相手にチャレンジする気持ちを大切にして、楽しみたいと思っている」
■放送予定
11月19日(土・日本時間)
午前10時00分~ ABEMA格闘チャンネル
■ONE Fight Night04対戦カード
<ONE世界ウェルター級(※83.9キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] キャムラン・アバソフ(キルギス)
[挑戦者]クリスチャン・リー(米国)
<ONE Super Seriesムエタイ世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者]ロッタン・シットムアンノン(タイ)
[挑戦者] ジョセフ・ラシリ(イタリア)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)
スティーブン・ローマン(フィリピン)
<ムエタイ・ウェルター級/3分3R>
コズモ・アレッシャンドリ(ブラジル)
フアン・セルバンテス(英国)
<バンタム級 (※65.8キロ)/5分3R>
ケビン・ベリンゴン(フィリピン)
キム・ジェウン(韓国)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ジョナサン・ハガティー(英国)
ウラジミール・クズミン(ロシア)
<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
ラスラン・エミルベク(キルギス)
イシ・フィティケフ(豪州)
<グラップリング女子アトム級(※52.2キロ)/12分1R>
ダニエラ・ケリー(米国)
マリア・モルチャノワ(ロシア)
<ムエタイ・ライト級/3分3R>
リアム・ノーラン(英国)
エディ・アバソロ(米国)
■放送予定
11月19日(土・日本時間)
午後7時00分~ PPV ABEMA格闘チャンネル
■ONE163対戦カード
<ONEキックボクシング世界バンタム級選手権試合/3分5R>
[王者] 秋元皓貴(日本)
[挑戦者] ペッタノン・ペットフォーガス(タイ)
<キックボクシング・ヘビー級ワールドGP決勝/3分3R>
ロマン・クリキア(ウクライナ)
イラジ・アジズプール(イラン)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
ザイード・イザガクマエフ(ロシア)
<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
オンラ・ンサン(ミャンマー)
岡見勇信(日本)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
平田樹(日本)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
クォン・ウォンイル(韓国)
マーク・アベラルド(ニュージーランド)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
若松佑弥(日本)
ウ・ソンフン(韓国)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
アブラォン・アモリン(ブラジル)
アフメド・ウジタバ(パキスタン)
<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
ルイ・ポテーリョ(ポルトガル)
朝陽PKセンチャイムエタイジム(日本)
<キック・ヘビー級/3分3R>
ブルーノ・シャベス(ブラジル)
アフメド・クリッチ(ボスニアヘルツェゴビナ)
<サブミッショングラップリング女子ストロー級(※56.7キロ)/12分1R>
ミレーナ・カオリ(日本)
ビアンカ・バシリオ(ブラジル)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
キム・ジェウン(ウクライナ)
キリル・ゴロベッツ(ウクライナ)