【Pan Championship】パン柔術ウルトラヘビー&無差別級優勝は?
ガルバォンがウルトラヘビー級&アブソルート制覇
12日(水・現地時間)から16日(日・同)まで、米国カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターでIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。大会クライマックス=日曜のアダルト黒帯の部。レポート最終回はアンドレ・ガルバォンが大活躍した最重量級=ウルトラヘビー級と無差別級の模様をお届けしたい。
【ウルトラヘビー級】
<ウルトラヘビー級準決勝10分×1R>
アンドレ・ガルバォン(アトス)
Def. ギチョーク
アブラハム・マルテ(ヤマサキ)
この階級の話題はなんといっても、ミディアムヘビー級のアンドレ・ガウヴァオン(アトス)の参戦だ。初戦を突破したガルバォンは、準決勝で長身のアブラハム・マルテ(ヤマサキ)と激突。クローズドガードを取ったマルテは、長い手足を活かして三角を仕掛けてガルバォンを脅かす。三角から十字に移行し、さらにオモプラッタに変化したマルテはそのままガルバォンの体を返し、バックに付きかけてアドバンージを先制。スタンドに戻ると、テイクダウンに来たガルバォンを投げ返して2Pを先取。体格による優位さをうまく利用して優位に進めた。
しかし、下になったガルバォンもバタフライスイープでマルテの巨体を浮かし、逃げたマルテの背中に付く。場外ブレイクを経て試合が再開されると、すぐさまガルバォンははフックを入れてバックを奪い、そのままギチョークで逆転勝利した。
<ウルトラヘビー級決勝10分×1R>
アンドレ・ガルバォン(アトス)
Def. アドバンテージ 5-1
アレキサンダー・トランス(チェッキマット)
決勝の舞台でガルバォンを待ち受けていたのは、重量級新世代戦士のアレキサンダー・トランス(チェッキマット)。前日の無差別級ではキーナン・コーネリアスからパスを奪って勝利し、さらにレアンドロ・ロとも一進一退、紙一重の好勝負を繰り広げた選手だ。試合開始後、すぐに引き込んで得意のハーフの形を作りにゆくトランス。ガルバォンはすかさず上から胸を合わせてアドバンテージを奪取。トランスは戻してディープハーフの体勢を作るものの、ガルバォンはバランスを保っては胸を合わせ、またパスを仕掛けてアドバンテージを重ねてゆく。
やがてガルバォンが左右のフェイントから大きく逆サイドに飛んでのパスを仕掛けると、逃れようとしたトランスはうつ伏せに。すかさず得意のバック取りを狙うガルバォン。トランスは、ガルバォンがフックを狙って来た足を捕らえて体をずらし、50/50のように足を絡めると立ち上がる。ガルバォンもすかさず立つが、トランスはその背後から飛びついて上に。2Pが入って逆転かとも思われたが、レフェリーの判断はアドバテージ止まり。トランスはそのままパスを狙って行くが、ガルバォンは強靭な両腕を利したエビで防ぎ切り時間切れとなった。
終盤のトランスの逆襲の場面、「両者スタンド状態から、バックに飛びついたトランスがそのまま倒して上を奪った」と考えるならテイクダウンの2Pが入ってもおかしくないだろうが、「パスで煽ってバックを奪いに来たガウヴァオンに対して、トランスがスクランブルの攻防の末に上を取った」と考えるならアドバンテージが妥当といえるかもしれない。とまれ、3階級差を跳ね返して攻撃を続けたアトス総師の面目躍如というべき勝利だった。
これで残る無差別級決勝は、ミドル級を制したロと、ウルトラヘビー級を制したガルバォンによる二階級制覇を賭けた戦いとなった。
【無差別級】
<無差別級決勝10分×1R>
アンドレ・ガルバォン(アトス)
Def. アドヴァンテージ 1-0
レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)
試合開始早々引き込んだロは、得意のスパイダーからの展開を狙うが、ガルバォンは上体を低くかがめ、両足かつぎの要領で両腕をロの足の下に入れてゆく。そこからロをリフトして状況を打開しようとするガルバォンだが、ロは強固なグリップを離さず隙を見せない。逆にロは低く置かれたガルバォンの前腕の内側に足をねじ込んでスパイダーから仕掛けようとするが、ガウヴァオンは低い重心を保って崩れない。
お互いにペナルティをもらいつつも、ギャンブルをしないまま残り一分となったところで先に動いたのはロ。スパイダーグリップから、ガルバォンの上腕二頭筋に押し当てた右足の裏を高々と上げて煽ると、その足を一気に下降させながら逆方向へのスイープを狙っていく。しかし、重心の低いガルバォンは崩れない。ここ立ち上がったガルバォンが、逆に左右に方向を変えながらの噛み付きパスへ。ロもすぐに反応して正対したものの、これがアドバンテージとなった。
残り約20秒で後がなくなったロは、片腕をポストして立ち上がって勢いを付け、背後に倒れ込みながらガルバォンの体を返しにかかる。これで体を浮かされたガルバォンだが、返されることはなく立ってみせる。すると次の瞬間ロは、再び後ろに倒れ込みながらのカラードラッグ(襟引き)!! 体勢を崩されたガルバォンが膝を付くと、残り5秒のところで場外ブレイクが掛かる。このロの波状攻撃に対するレフェリーがアドバンテージを付けるかどうかが注目されたが、無情にも何もなし。再開後、残り5秒ではいかんともしがたく、時間切れに。ガルバォンがウルトラヘビー級に続いて二階級制覇を成し遂げ、さらに自らが率いるアトスの団体優勝にも大きく貢献したのだった。
開始後9分は動きの少なかった大会フィナーレだが、、最後の1分間の一つのアドバンテージを廻る攻防は凄まじいの一言。この日、世界最高峰の柔術家2人は、サブミッションはおろか、スイープやパスといったポイントにすら至らない微差を争う攻防でも、十二分に観るものを魅了することができるということを示したのだった。
■パン選手権、男子黒帯アダルトの部結果
【ルースター級】
優勝 ジョアオ・オリヴェイラ(チェッキマット)
準優勝 ミルトン・バストス(ブラザ)
3位 芝本幸司(トライフォース)
3位 イヴァニエル・オリヴェイラ(チェッキマット)
【ライトファザー級】
優勝 パウロ・ミヤオ(シセロ・コスタ)
準優勝 ジョアオ・ミヤオ(シセロ・コスタ)
3位 ハファエル・フレイタス(バッハ)
3位 ヴィトー・パスコール(ブラザ)
【フェザー級】
優勝 マリオ・ヘイス(アリアンシ)
準優勝 ジャンニ・グリッポ(アリアンシ)
3位 サミール・シャントレ(ブラザ)
3位 オズワルド・アウグスト(ブラザ)
【ライト級】
優勝 ルーカス・レプリ(アリアンシ)
準優勝 マイケル・ランギ(アリアンシ)
3位 JTトレス(アトス)
3位 フィリッピ・デラモニカ(バッハ)
【ミドル級】
優勝 レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)
準優勝 オターヴィオ・ソウザ(バッハ)
3位 ヴィクトー・エスティマ(バッハ)
3位 ルーカス・ホシャ(バッハ)
【ミディアムヘビー級】
優勝 グットー・カンポス(アトス)
準優勝 キーナン・コーネリアス(アトス)
3位 ホドリゴ・ピンポーリョ(バッハ)
3位 ヘナート・カルドッソ(チェッキマット)
【ヘビー級】
優勝 ユーリ・シモエス(ブラザ)
準優勝 ルーカス・レイチ(チェッキマット)
3位 ラファエル・ロバトJr(ヒベイロ)
3位 ホベルト・トゥッサ(バッハ)
【スーパーヘビー級】
優勝 ルイス・パンザ(バルボーザ)
準優勝 ベルナルド・ファリア(アリアンシ)
3位 タルシシオ・ジャーディム(チェッキマット)
3位 アンドレ・カンポス(バッハ)
【ウルトラヘビー級】
優勝 アンドレ・ガウヴァオン(アトス)
準優勝 アレキサンダー・トランス(チェッキマット)
3位 アブラハム・マルテ(ヤマサキ)
3位 レオナルド・エンリケ(アトス)
【無差別級】
優勝 アンドレ・ガウヴァオン(アトス)
準優勝 レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)
3位 アレキサンダー・トランス(チェッキマット)
3位 フィリッピ・プレギウソ・ペナ(バッハ)