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【Fight & Life】青木真也&飯村健一「ゆっくり」、「しっかり」、「綺麗に」 スロー格闘技のすゝめ

【写真】対談では青木の創り上げてきたムエタイ式打撃のMMAにおける効力、構えの大切さ。キャッチされても殴られない、倒されないミドルの蹴り方などが語られています(C)t.SAKUMA

明日24日(水)発売のFight&Life#83に1月22日、シンガポールで開催されたONE Championshipで北米世界標準の強豪ジェイムス・ナカシマを1R2分42秒、ネックロックで一蹴した青木真也とムエタイの師・飯村健一氏の対談が掲載されている。

ナカシマを相手にムエタイ流の構えで、蹴り、パンチ、首相撲を見せていた青木の口から、試合終了後のインタビューで「綺麗な構えでゆっくり、近くに行ってしっかり見る」という言葉が聞かれた。

ハイペース、ラッシュの連続という現代MMAにあって、青木と飯村健一が創り上げてきたスタイルとは何かを尋ねる対談の終盤に、格闘技を長く続けるチョイスにプライオリティを置いている青木と、彼を支えリードしてきた飯村氏が、日本の格闘技界にも訪れるであろう──えぐい未来について語った箇所をここで抜粋してお届けしたい。


──ムエタイのMMAにおける有効性は分かるようになってきました。それでも、MMAファイターとしてムエタイをやり込むことは異質です。

青木真也 これをやろうとする人が極端に少ないのは、時間がかかるからです(笑)。

──対してMMAは即効性のあるモノが求められますよね。やるべきことが多いので。

青木 MMAだけでなく、K-1もRISEも──キック系にも横たわる問題だと思います。

飯村健一 やはりガチスパーは強くなるのが早いので。そこをやらせるようになるのでしょうね。

青木 ガチスパーをやると、早く良くなるって聞きます。

──と同時に練習でダメージが蓄積するかとも……。

青木 だから長くやるつもりがないんですよ。20代後半で引退するのであればガチスパーをやれば強くなれると思います。

飯村 MMAファイターもガチスパーが多いと思います。ボクシングやK-1のジムで練習しますしね。

青木 なので、長く続けるには僕は自分がやっているスタイルだと思っています。信仰だから、自分の信じたことをやれば良いけど、特効薬のようなガチスパー信仰は、それはそれで危うくて怖いです。

──その危うさというのは?

青木 ガチスパーとストレングスで強くなろうとすると、技術の差がなくなります。そうなると那須川天心選手や堀口恭司選手のような異常な才能を持っていないと、そういう選手の生贄になっていくだけで(笑)。

──MMAって工夫と努力で探求できるところがあったはずなのに。100メートル走ではなくて、中間距離の障害物競争のようなところがあったかと思うんです。

飯村 ハイ。ボクシングやK-1って体育の通信簿が5の人が上に行けるスポーツなんです。でもMMAやムエタイって体育が3の人間でもチャンピオンになれるもので。

青木 駆け引きと経験が生きるし、技術もゆっくりとしっかり身につけることができるから。ストレングスとハードな打撃を詰め込んでやると、体にダメージを与えますよ。

──ライフとして取り組む格闘技と、20代で稼げるだけ稼ぐ格闘技では、その目的が違うから手段も違う。

青木 えぐめの話をするとストレングスを究めていくなら、ステロイドに頼るっていう風に近々なっていくと思います。格闘技に関しては、日本人はやっていないって信じたい部分があったじゃないですか。

──ハイ。確かにあります。

青木 でも、ガチスパーをやっていく思想はダメージの回復力も含めてステロイドに近づくと思います。

──喘息の薬を入れて、気管支を広げて練習するとか……。

青木 一財産を築いて辞めれば良いのだから。そうなっていくかと。

飯村 いやぁ、もう考えも及ばないところに来ているのですね……。

──それもライフといえばライフで。ただし、稼ぎきれなくてずっと続けるとどうなるのだろうかと。

青木 そこも、そうなっていくと思います。稼ぐ、稼げないだけでなくて勝ちたいと思うと、そっちに走る人間だっているんだろうなって。格闘技って人生を豊かにするモノであってほしいから、そういう破滅的な方向には本当はいってほしくないのですけどね。僕は理屈をもって格闘技をやっていきたいので。

※24日発売のFight & Life#83は、上記以外に4ページに渡り両者の格闘技との向き合い、勝ち方など興味深いやり取りが掲載されています。

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