【BJJ STARS05】大会ベストバウト、ノンストップ・ノーギ柔術はバイエンスがヒメネスを破るも──
【写真】防御方法が場外逃避に通じるヒールの攻防、防御しないわけにはいかないがどのような着地点を見せるのだろうか(C)CALOR HABER/BJJ STARS
6日(土・現地時間)、ブラジル・サンパウロでプロ柔術大会BJJ Stars05が開催された。道着とヒール解禁IBJJFノーギルールが用いられたスーパーファイトと、道着の8人制ワンデー・トーナメントが組まれた今大会。ここでは大会ベストバウトながら、ヒールの防御と場外逃避ということで今後の課題も見えたIBJJFノーギルールのスーパーファイト=イザッキ・バイエンス✖ロベルト・ヒメネスの一戦の模様をお届けしたい。
Text by Isamu Horiuchi
<ノーギ/10分1R>
イザッキ・バイエンス(ブラジル)
Def. by 4-0
ロベルト・ヒメネス(米国)
柔術世界王者バイエンスと、新星ヒメネスの注目のノーギマッチ。ヒールフック等が解禁された、IBJJFノーギ新ルールで行われるという点でも注目だ。
まずはスタンドで頭を付けて積極的にテイクダウンを仕掛け合う両者。1分過ぎ、ヒメネスが飛びついてクローズドガードに。すぐに立ち上がったバイエンスは中腰の姿勢をとる。
ここでヒメネスは、ガードを開くと同時にバイエンスの両かかとを掴んでのスイープ狙い。が、強靭なベースでこらえたバイエンスは、ヒメネスの右足首をワキに抱える。そのまま外掛けをしながら倒れ込んだバイエンスは、ヒメネスの左足の方向に捻っての足関節を狙う。ヒメネスも同方向に回転し、両者は場外へ。これが場外逃避とみなされてバイエンスに2点が与えられた。
「外掛け」と「捉えていない方の相手の足側へのプレッシャー」。今回の新ルールで解禁された二つの攻撃を駆使して、バイエンスが先制点を奪ってみせた。
スタンドから再開。お互い積極的にいなし合い仕掛け合う両者。シングルを狙ったヒメネスに対して、バイエンスはギロチンで切り返して立ち上がる。その後逆にバイエンスがダブルを仕掛けるが、ここは場外際のブレイクで終わる。
スタンドで崩すのは難しいと見たヒメネスは、再び飛びつきガードを試みるが、バイエンスは距離を作って付き合わず。
残り5分。ヒメネスがダブルを狙うが、バイエンスはがぶって体重をかける。そこから逆にバイエンスが右足にシングルを仕掛けると、ヒメネスがすかさずギロチンでカウンター。ハーフ下を取った後、ガードを開けてバイエンスの体を跳ね上げにかかるヒメネス。が、バイエンスは空中で体を捻ってヒザから着地して上をキープ。テイクダウンが成立してバイエンスが2点を追加した。
残り3分半。ヒメネスは再びクローズドガードへ。バイエンスが立ち上がると、ガードを開いたヒメネスは、再びバイエンスの両かかとを掴んで崩しに。これでバイエンスの足が開いたところで、ヒメネスは迅速の内回りへ。体勢が崩れたバイエンスの背中にあっという間に回ってみせたヒメネスだが、ここで両者の体が状態に出てしまい、ブレイク。アドバンテージ1つを得るに終わってしまった。
残り時間が少なくなるなか、ヒメネスはテイクダウンを狙い、また引き込んでの仕掛けを試みるがバイエンスは距離をとって回避。先ほどバイエンスを崩したクローズドガードからのスイープも狙うヒメネスだが、バイエンスは同じ手はもらわずすぐに距離を取る。
最終盤、下からの仕掛けを試みるヒメネスに対して、バイエンスは側転を3度繰り返してその攻撃を遮断。4点のリードを守って勝利を挙げた。
世界王者バイエンスが、新ルールを活かした攻撃と決して下を許さない天下一品のスクランブルの強さを用いて快勝。しかし、そのバイエンスの一瞬の隙をついてあっという間に崩してバックを奪いかけたヒメネスも、その恐るべき潜在能力を十分に見せつけた試合だった。
ところで、バイエンスが先制点を奪った外掛けからの極めに関する新ルール運用において、一つ気になる点があった。あの攻撃を仕掛けられた側としては、ヒメネスのように同方向に回転しながら対処するのが自然だろう。
その結果場外に出てしまうのを逃避とみなされて、今回のように攻撃側に2点が入るとするならば、この攻撃は、仕掛ける側にとっては絶好の「ハメ技」となり得るのではないか。場外やや近くで外掛けからの極めを仕掛けてしまえば、相手は2点を失ってでも回転するしかなくなるからだ。
それを回避したければ、仕掛けられた側は1回転以内で足を抜くしかない。逆に攻撃側が、極めることよりも相手を逃避に誘うことを目的とした仕掛け方を発達させてゆくこともあり得る。
今後ルールの運用が変わるのか、それともルールに合わせて競技者が技術を変化、あるいは進化させてゆくのか。新ルールがもたらす変化にも注目したい。