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【Pancrase318】半年を経て、実現する暫定ライト級KOPTへ。雑賀ヤン坊達也「その分、強くなれた」

【写真】結果的に昨年9月のトム・サントス戦以来、364日ぶりの実戦となるヤン坊(C) KEISUKE TAKAZAWA

27日(日)に東京都江東区のスタジオコーストで開催される──パンクラスにとって、初の無観客大=Pancrase318-Beyond317-のメインで、暫定ライト級KOP王座決定戦=雑賀ヤン坊達也✖林源平が組まれている。

ヤン坊にとっては2月16日に暫定王者サドゥロエフ・ソリホン(※当時)に挑戦する予定がチャンピオンの負傷欠場で6日前に試合の中止が決まった。このタイミングで暫定王者決定戦として3月8日に林との対戦が決定も、パンデミックにより5月31日にスライドされる。

結果的に今週末にようやくデカゴンに上がることができるようになったヤン坊に、この間の気持ちを浮き沈み、コロナ禍でのファイターとしての生き方、改めて対戦相手について尋ねた。


──ようやくという気持ちではないしょうか。2月のソリホンへの挑戦がなくなり、3月に林選手との試合が決定。しかし、コロナ禍で5月に延期され、その大会も中止。もう、それぐらいまでしか私も記憶の整理がつかない状況です。

「そうですね。5月が中止になってから、僕の試合の発表は9月だけですね」

──5月大会の8月への延期が発表されたのが5月2日でした。緊急事態宣言期間中でしたが、タイトル戦に向けて練習はどのような形で行っていたのでしょうか。

「隠れてというか……ジムも一般会員さんには開放されていなかったのですが、プロ選手は週に2回ぐらい集まって練習はしていました。あとは1人で借りて自主練とかでしたね」

──格闘技イベントの開催、練習すること自体に逆風が吹いていた時期です。

「僕としては……やるしかない。やるべきことをやるしかなかったです。僕は格闘家なので、練習しなければいけなかった。あの頃、練習を続けていたのでコンディションを保てていたというのはあります。

正直なところ大会があるのか、ないのかハッキリしてほしいというのはありました。どうなるか分からないけど、やるべきことはやらないと当日に戦うことはできないですから。結構メンタル面はきつかったですね」

──ヤン坊選手は感染拡大前、2月にファイトウィークになりタイトル戦が中止になっているので他の選手より1度多く浮き沈みを経験していますし。

「もう去年の12月から追い込み練習をして試合が無くなるというのを3度ほど経験しましたからね(苦笑)。でも、その分強くなれたと思っています!!」

──死者数、重症者数、病床の確保という部分で今と状況が違いますが、格闘技の練習や試合で感染する可能性は何も変わらないですが、社会活動の再開とともに空気は変わったと思います。

「そうですね、6月からジムも再開されたのですが、それまではひっそりとやっていましたね。ただ僕は子供もいるし、奥さんは『本当に気を付けてよ』という感じで。僕もやらないわけにはいかないので、『そこは理解してくれ』という気持ちでした。本音を言えば罹った時は罹った時だ、ぐらいでした。それぐらいの覚悟は必要でしたし、それだけに手洗い、うがいは徹底していましたね。

ジムが再開してからも、それは変わりません。特に僕は昼は仕事をしている身なので、夜に一般の人たちが来ているなかでスペースを使って練習していますし。ジムの方もアルコール消毒、検温を必ず行っています」

──緊急事態宣言が終わってからも、ワクチンや薬がない状況は変わらず、それこそ罹った時は罹った時という状況で予防をしつつ生活するのが普通になりました。

「それでもパンクラスも新しい検査を採り入れたり、これだけのことをして大会を開いてくれるわけですしね」

──8月には当日に大会中止という問題も起きました。

「実は5月が無くなった時に8月という話があったんです。僕はそれで了解しているのですが、確か林選手が『より確実な9月で』と返答したみたいで。それを知っても僕も、確かにそうだと思い9月に決まったんです」

──そのような経緯があったのですね。それは結果論ですが、8月になっていたらと考えるとゾッとしませんか。

「そうですね(苦笑)。実際に試合が無くなってしまった選手もいるので余り言えないですが、8月でなくて良かったです。あの大会もウチのジムからアマチュアの子が出ていたので、YouTubeの中継が始まるのを待っていたんです。でも全然始まらなくて、コメント欄に『中止らしい』っていう書き込みがあり、下らない冗談言う奴がいるなぁと思っていました(笑)。いやか、当日の中止は衝撃的でしたね。危なかったというのは、本音としてありました」

──大会中止から9月27日大会の動向も危ぶまれたかと思います。

「またか……という気持ちになりました。でも、慣れてしまったというか、『どっちに転んでも良いや』って開き直ることはできていました」

──それにしてもMMAではなかなか1人の選手と戦うための準備期間が半年以上も続くというのはないかと思います。

「ないですよね(笑)」

──改めて林選手の印象を教えてください。

「それは3月の時と変わらないです。打たれても引かない、タフな選手です。打撃に関しては嫌なモノを持っています。だからこそ、どう対策していくのかというのを続けてきました」

──この間に引き出しが増えていることも十分に考えられます。

「そこが怖いんですよね。こんなことができるようになっているというのは、ギャンブルかもしれないですけど頭には幾つか入れています。でも僕だって極めのバリエーションも増えましたし、この間に伸びているはずです。ただし、試合でそれが出るかどうかは……『分かりません』って感じです(笑)」

<この項、続く>

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