【Special】ABEMA北野雄司に訊く、withコロナの格闘技─02─「PCR検査の実施を視野に」
【写真】客入れした大会も再開される。会場使用時間、キャパは3月以前とはらない。さらなる工夫と細心の予防策が必要になる格闘技イベント&中継だ (C)MMAPLANET
非常事態宣言下のRoad to ONE02、非常事態宣言解除後のプロ修斗公式戦を経て、MMAイベントの開催と中継は次のステップに進むなか、フェーズ02に向けて話を訊いたABEMA格闘ch北野雄司プロデューサー・インタビュー第2弾。
ゾーニングという動線という要素が加わる格闘技イベント、無観客からソーシャルディスタンスを取ったうえでファンの観戦も可能になっていくなか、さらなる感染対策とは。またグラップリング中継の可能性を尋ねた。
<北野雄司インタビューPart.01はコチラから>
──ゾーニングと動線、ここをしっかりと確立できれば交わらない分だけ人員は割けることができそうです。
「理想をいえば、大会の会場に行って生中継をしてきたけど、3人にしか会っていません……というようなことができれば良いですね。さすがにそこまでの実現は難しいかもしれないですが、『ABEMA』で生中継や配信を行う団体とは、しっかり安全対策を行ったうえで観客を動員した大会を開けるようにしていきたいです」
──UFCではケージ内でのインタビューがない。視聴者レベルでいえば、そういう変化が見られますが、取材する側からするとセミ、メイン出場の選手は会場で会見が行われ、それ以外の選手はバーチャルで質疑応答が行われている状態です。
「5月31日の修斗の大会では、岡田遼選手がソーシャルディスタンスをとってメディアの質問を受けているのを見て、やはり勝手知ったる人達の前だからこそ、見せることができる表情があるなと思いました」
──今、言うべきではないかもしれないですが、生の声が聞きたくなるモノです。
「記者の皆さまのお気持ちもわかります。だからゾーニングや時間割を取り入れていくことで、よりリスクを減らしていきたいと思います。そして抗体検査やPCR検査の実施を視野にいれるべきかと思います。
実際、僕宛てに受託検査会社を紹介していただいたりもしています。一定人数のPCR検査を受託検査会社に請け負ってもらえるようでしたら、『高島さん、取材で会場に行くうえで心配であれば、PCR検査を受けてもらうことも可能ですよ』と言えるようにもなります」
──会場を訪れる人間として、自分が感染するのも、感染していたとして人に感染させるリスクも下げたいと思っています。検査が行われると選手やセコンド、スタッフとそれこそ会場にいく人が、その時点で感染しているリスクはかなり下げることができます。
「それが理想です。国内ではUFCのように1週間に2度も3度も受けることはコストの関係で難しいですが、PCR検査や抗体検査を参加選手、セコンドが受けられるようにしていくのが理想です」
──ゾーニング&時間割、そしてPCR検査という二重の予防ですね。
「はい、ゾーニング&時間割で接触する人の数を減らす努力をする一方で、選手やその関係者、朝から晩まで会場にいるスタッフが検査をクリアしている状態でその場にいる。この2つが掛け合わせることができれば、感染はかなり防ぐことができるようになるのではないかと考えています」
──PCRの検査費用が大会開催のコストに加わるのも、この時代だと。
「抗体検査だと、より現実的なりますね。検査は受ける人数が多くなるとコストも下げることができると思いますし。選手はPCR検査、スタッフたちは抗体検査という段階の踏み方もあるかと思っています。
海外の先進的なスポーツも参考しながら、これからの感染予防策を考えていきたいですね」
──経済活動再開はコロナ終息では決してない。格闘技を伝える立場としては、感染予防対策という安全管理の透明性と、基準が格闘技界に存在してほしいというのはあります。特に観客を集めるようになってくると。
「僕の立場で言えることは、『ABEMA』が放送・配信を行っている団体さんに関しては、プロレスも格闘技も感染予防対策は同じ基準で行っています。『ABEMA』印ではないですが、『ABEMA』が行っている対策が団体の信頼感に繋がればと思います。
お客さまに観てもらえる大会になってからも、一緒に考えて最善を尽くしてやっていきたいです。そういう言葉を、胸を張って言えるだけのことをしていかなければならないです。それに格闘技の規模だから、推進しやすいというのはありますしね」
──実際、ファンに観客席を開放した時に屋内型スタジアムの4万席もある状況で、関係各所を「ABEMA」印の格闘技イベントと同じ頻度で消毒できるのか甚だ疑問です。
「現状の格闘技会場の規模感では、可能だというのはあります。だからこそ、これから大会実施会場の規模感が変わっていくと、ここで話してきたゾーニングは一つの在り方だと思っています」
──自粛が解かれてから動き出すのと、その前に考え出していたことで、その部分でノウハウの蓄積は確実にあるかと。
「今年はインフルエンザにかかった人の数がとても少ないそうです。それは皆がマスクをして、手洗いをこまめにしたからと聞きました。現在の世の中にはそういう習慣が根付いた下地がありますし、今後は誰もが対策を考えて行動していく。だから、『コロナと生きていく』ということすら、ことさら言葉にする必要はないぐらいになっていければ良いですね。
そういう世の中で、スポーツの中継をする際に対策費がもとから費用に組み込まれているのも当然になっているわけですし。当たり前になったと考えないと、大会関係者みんなが精神的に削られてしまいます。
この間にやってきたことで、覚醒というか、成長したスタッフがいました。ノウハウの蓄積もあって、この2カ月間で逞しくなっている人間とか(笑)。そういうスタッフが実際にいることは、やはり励みになります。ことの重大さを知り、それを当然と思えることで前進できている実感はあります。
前に進み始めることで、人間は成長しています。そういうスタッフは大会前も大会後も、イベント開催中と同じ配慮ができますから、そこを大会に関わる人達の共通意識としたいですね」
──それがこれからの標準になると。
「はい。結果、ここで一緒にやっているメンバーは大会期間中以外でも、しっかりと対策できる人間になっているはずです。これからはそういう意識がある人と仕事がしたいと思われる社会になっていくでしょうね。そのような考え方にアップデートされた時代になったということだと考えています」
──ところで、4月、5月の『ABEMA』テレビマッチで行った修斗公式戦では、3試合のグラップリングマッチが組まれました。これは専門メディアとすれば画期的で、グラップリングの伝播への一歩となる可能性があったと感じています。
「僕は自分が柔術の練習をしていないので、SNSで柔術系の方たちをフォローしている数は少なかったんです。それが修斗の大会の時に改めてリサーチをすると、岩本健汰選手と世羅智茂選手の試合への前評判の良さに驚きました。
競技としての柔術は広まりつつあると伺っていましたが、Quintetのような大会があることも驚きでした。でも、今回の件でグラップリングに興味を持つ層がしっかりと存在することが感じられました。
最近、コンテンツは掛け合わせになってきたと思います。そんな時流を受け、『ABEMA』のテレビマッチでは、柔術やグラップリングという単体ではなく、修斗の大会の中にグラップリングの試合を掛け合わせることができました。
それは単にグラップリングの試合を修斗の大会に組み込んだというわけではなく、『Road to ONE:2nd』で世羅選手とグラップリングの試合を行ったMMAの青木真也選手が岩本選手を世羅選手の対戦相手として推薦するという掛け合わせがあったわけです」
──柔術、グラップリングサイドから見れば、柔術、グラップリングの試合があれば良いですがMMAやキックを楽しんでいるファンに、グラップリングを見せるには掛け合わせが必要になってくると。
「はい。岩本選手対世羅選手の試合は良かった。だから次は柔術コミュニティで名前のある選手同士をただ組むというのでは、これまでと変わりなく、グラップリングや柔術が広まるということにはならないかと思います」
<この項、続く>