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【The Fight Must Go On】あの時、〇〇が話していたこと─01─2011年4月10日、青木真也が話していたこと

Aoki【写真】8年前の青木真也。言っていることは、今と変わりないような…… (C) MMAPLANET

国内外のMMA大会の中止及び延期、さらには格闘技ジムの休館など、停滞ムードの真っただ中です。個人的にも大会の延期と中止のニュースばかりを書かざるをえない時期だからこそ、目まぐるしい日々の出来事、情報が氾濫する通常のMMA界では発することができなかったMMAに纏わる色々なコトを発信していければと思います。こんな時だからこそ The Fight Must Go On──第6弾は過去のインタビューで、今も印象に残っている言葉を再収録したい。あの時、〇〇が話していたこと……第1回は2011年4月10日──数時間前にStrikeforceで、ライル・ビアボームに勝利したばかりの青木真也の言葉を振り返りたい。

3・11から1カ月弱、サンディエゴ郊外のホテルで深夜に聞いた青木の言葉は新型コロナウィルス感染拡大という現状に置き換えて聞くことができるのではないだろうか。


──震災があり、日本のために……という空気一色でした。これも当然といえば当然ですが、一色であるはずがない……という違和感も正直、感じていました。

「命あっての仕事だけど、命があっても仕事がないと、家族を食べさせていけない。震災があっても、僕はコレをやり続けるしかない。ボランティアとか募金は、僕の本業じゃない。それと同じで、八隅さんや中井さんはジムでの指導、運営が本業なので、今、この状況で僕に付き合ってもらうことはできない。2人がいなくても、戦っていける僕でないといけなかったんです。

震災直後の14日に子供が生まれました。家内の実家で出産したんですけど、キャンプに入っているし、試合前には行けない。お産に立ち会うこともないと決めていたんです。子供の顔も試合が終わるまで見られない。家内は格闘家の嫁だから、理解してくれていました。そして震災が起こった。結局、僕が被災者の方に、何か直接できることは何もないんです。試合前に被災地に行くわけにもいかないし。僕らが戦って、勝って、その姿を見て勇気づけられる人がいてくれれば、本当に嬉しいです。ただし僕が今日、ビアボームと戦ったのは『ガンバレ日本』という想いからじゃない。人のために戦っちゃダメです。僕は常々言っていますが、自分のために戦っています。

(C)DAVE MANDEL

(C)DAVE MANDEL

人のために頑張れない。

だって、誰かが僕に『青木のために頑張ってくる』なんて言ってきたら嫌ですもん。

その姿を見て『ガンバレ』って応援してくれる人に喜んでほしいから、自分のために頑張ったんです」

──勝敗に関係なく、ベストを尽くして戦ったファイターが人々を勇気づけられると信じたいです。

「川尻選手と高谷選手は、僕なんかよりも厳しい状況で、本当に頑張っていたんです。川尻選手は茨城、高谷選手は千葉。子供がいて、不安な状態で頑張っていたのは僕以上でしょう。減量中なのに、水もない。3人ともベストを尽くしたんです。僕も震災後、暗い道場でプロだけが集まって練習していたけど、川尻選手も高谷選手もそうだったに違いない。たまたま僕が勝っただけで3人とも勝者だと思っています。

サッカーではキング・カズのゴールで凄く沸いたけど、あのシーンで三浦選手がシュートを外していても、僕らは勇気をもらえたはずです。高谷選手、川尻選手にしても、覚悟が決まっていた。本当に凄く苦しい状況で戦った。引かなかったんです。『やめる』っていうのは簡単だったし、試合に出ない選択をしても正しいと思う。ただし僕自身、高谷選手や川尻選手の選択から勇気をもらいました。

──日本の状況を顧みて、青木選手の次はどうなるのかという部分、誰もが気になります。

「どうするんでしょうね……(笑)。ストライクフォースが今後どうなるのか。試合前にズッファがストライクフォースを買収したり、エルボーが急遽組み込まれたことには全く動揺しなかったです。そこは達観していました。朝、ルールが変わっても平気でした。それぐらいタフになっていました。常に好きで考えてやって来たから、ヒジ有りについてはワクワクしたぐらいです。ただ日本の活動がどうなるのか……、そこはねぇ……歯切れが悪くなってしまうんですけど。日本で言われている大会が5月からあるなら、そこに出たいです。今夜の試合で良い勝ち方ができたから、トントンと試合に出たいです。僕は試合があるなら米国で欧州でも良いですよ。そういう意味でも太くなりたい。

いつまで稼ぐことができるのか分からないけど、今恵まれていて、僕は専業の格闘家です。でも格闘技が副業になる覚悟もできています。1試合、30万円、50万円というファイトマネーになっても戦い続けます。コレが好きだから。そういうことを青木真也が言うと、悲しくなってしまうんですけどね(苦笑)。でも、そういう取り組み方をしたいんです。格闘技が好きだって言うのが、僕のなかで一番大切なんで。そりゃあ副業にならないほうが良いけど、ライフワークとして、格闘技をずっとずっと続けたい」

──Fight & Life 2011年6月号(Vol.24)より抜粋──

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