【ONE109】右腕一本でモハメドをKO──秋山成勲「できることをやり切る、それが一番大切でした」
【写真】5年5カ月振りの勝利、この瞬間──秋山は何を思ったのだろうか……(C)MMAPLANET
2月28日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたONE109「King of the Jungle」で秋山成勲が、シェリフ・モハメドを相手に1R3分42秒でKO勝ちを収めた。
勝利者インタビューでは韓国語を駆使し、ONE韓国大会の開催をアピールした秋山──5年5カ月ぶりに勝利した彼の話を試合翌日に聞いた。
彼の口から語られた、右手一本のファイトのわけとは?
──5年5カ月振りの勝利おめでとうございました。
「ホント、自分でも竜宮城から戻ってきたような感じですよね(笑)。よく分からない感じで、勝利をイメージしながらやっていたのに……こうやって良い形で勝つと、イメージしてきたのとは違う景色を見ることができるんだと分かりました」
──試合前に言っていたように、アグレッシブな姿勢を貫けましたか。
「そのつもりでやっていましたが、あとから映像でチェックしてみたら動きも恰好悪くて。でも、そう思えるってことはまだノビシロが残っているのかと感じています。まだまだ創ることができる。まだまだ上にいけると思います。
判定に持ち込んで、どうにかして勝つというのも一つの戦い方です。誰も否定はできないです。ただ若いころと同じようなつもりで、同じ戦い方ができたということで大きなモノを得ることができとかと思います」
──44歳という数字がついて回るのも現実です。
「そこをどう捉えるのかは、それぞれじゃないでしょうか。自分がどう感じるのか。数字は付きまとってくるので、変に遠ざけてもしょうがないですし、そこをしっかりと受け入れたうえで、楽しんだ者勝ちだと思います。もうすぐ45歳ですし、これが46、47になって『お前、マジかよ』って言われることもモチベーションになるんじゃないかと(笑)。僕はこのままの調子で、同じようなトレーニングを続けて、体が動く限りはこのまま行こうと思います」
──無観客に関しては、振り返ってみてどのように思われましたか。
「こちらの攻撃にリアクションがあると、戦っていてもある程度伝わってくるものなので、それがまずなかったですよね。ただしファンの反応がない分、そこに左右されることがなかったともいえます」
──あぁ、選手はそういう風に捉えることができるのですね。
「ファンの声に煽られ、ペースが乱れることもありますしね。乗せられ過ぎたりだとか……それが良い風に生きることあるのも承知のうえで、昨夜は声援がないことでセコンドの声もよく聞こえたし、選手としては戦いやすい部分もありました。まぁ無観客で戦うなんて、これから先もないだろうし、そういう機会に立ち会えたのは良かったと思います。ただし、ファンの声がないというのは寂しいものでした」
──ところで左腕を負傷して、使えていなかったようですが……。
「そうですね。二の腕の筋肉は切れていると思います」
──その状態でよく戦えましたね。
「キャンセルなんてできないですよ。そんなの格好悪い。そうですね……ほぼ左は使えなかったです。相手に突っ込まれても、右腕だけで何とかしようと思っていたので、後ろに回りながらの試合になってしまいました。それでも戦えたのは自信になりましたし、今後の糧になると思います」
──組むこともできなったということですよね。
「ハイ、そうですね。相手の選手の距離の詰め方や、組み方がもっと上手ければ……差すことも必要になっただろうし、敗北の可能性は高かったと思います」
──カーフキックと最後の右は狙い通りですか。
「狙っていたというか、それしかできなかったので。できることをやり切る、それが一番大切でした。
ただ最後の下がりながら右を当てるというのは、練習ではやっていなかったんです。自分が前に出て当てるつもりでした。そういうパンチを無意識に出すことができたのも、これまでの練習の成果かと思います。一つ、幅が広がったので次につなげたいですね」
──試合後、マイクは韓国語で行いました。
「ハイ。日本のファンの中には『なんだ、コイツは!』と思われた方も絶対にいると思いますが、前もって韓国語で話すつもりでした。まぁ、英語でも言いましたが、韓国大会を待ちわびているファンがたくさんいます。なら僕が先頭に立って動こうと思っています。
そういうつもりでいることをチャトリにも話していますし、どんどん前に進ませたいです。ああいう場で口にすることで、現実に近づく推進力を得ることができるのではないかという想いがあって韓国語で話させてもらいました」
──ONE韓国大会の実現に向けて、自らが原動力になると。
「ハイ。現役を退いた後でも、選手のアテンドなどをしてONEに貢献したいと考えています。そのためにも現役の間に大きな花火を打ち上げることができるよう、どんどん発言していくつもりです」
──チャトリCEOの反応はいかがでしたか。
「マイクで話した時にチャトリがケージサイドにいて、ちょうど目があって。凄く喜んでいましたね。チャトリも韓国大会開催に向けて動いていますし。コロナが終息すれば、本格的に動き出せるのではないでしょうか。
そうですね、自分が旗をあげることで選手とONEのパイプライン、太い幹を作りたいですね。日本もそうですし、韓国も食べていける選手が少ないので、そういう選手のためにONEで戦うための受け皿を用意するのは、僕の役目だし現役生活とともに楽しみたいです」
──プレーシング・マネージャー的な存在を目指しているのですね。
「今、20代、30代の選手は自分のことで頭がいっぱいで、俯瞰してモノゴトを眺めることは難しいので。大人になっている自分たちが彼らのために動く、それがONEのためであり、自分のためになる。そういう流れを作っていきたいですね」
──左腕の負傷を癒すことが先決ですが、次の試合はいつ頃と考えられていますか。
「今、コロナが蔓延していて韓国、日本、中国の選手が今後どのように登用されるのかさえ見えない部分がありますが、僕の場合は休むとまた上げるのに時間を要するので、どんどん試合をしていきたいです。
ハワイに住んでいますし、ハワイから開催地に行けるとチャトリにも伝えています。やはり10月の日本大会に向けて、日本人選手の出場というのは絶やしたくないですしね。僕1人の力でどうなるのか大きなことはいえないですが、少しでも役立ちたいと思っています」