【ADCC2017】77キロ級決勝──最強レプリを下し、JT・トレスがノーギグラップリングの頂点に
【写真】ムンジアルでは2014年こそ準優勝だったが、昨年&一昨年が3位と世界の頂点に一歩届かなかったJTがノーギグラップリングで世界を究めた (C)SATOSHI NARITA
23日(土・現地時間)と24日(日・同)の2日間、フィンランドのエスポーにあるエスポー・メトロ・アリーナでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・レスリング選手権が行われた。
2年に1度のノーギグラップリングの世界最高峰の舞台で行われた戦い。今回は77キロ級決勝、JT・トレス×ルーカス・レプリの頂点を争う一戦の模様をレポートしたい。
<77キロ級決勝/20分1R・延長10分1R>
JT・トレス(米国)
Def. by 3-0
ルーカス・レプリ(ブラジル)
この階級において、道着&ノーギどちらの分野でも世界で頭一つ抜けた実力を持つと思われるレプリはオスマグハン・カシモフ、マンシャー・ケラ、ヴァグネウ・ホシャを下し決勝へ。そのレプリを2大会前に破っているトレスだが、翌年レプリが圧巻のパスガード力でムンジアルの頂点に君臨した以降は世界一の男に勝利がない。
それでも昨年のムンジアルではライト級準決勝でアドバンテージ差の敗北と、拮抗した勝負を見せているのも、このトレスだ。
決勝戦のみ、開始時から引き込みに減点を与えられるルールとあり、両者額をくっつけ合ってのレスリング勝負を展開。お互い首を取ってのスナップダウンやタックルのフェイントを見せ、また上からがぶろうとする等、緊迫感のある攻防が続いた。
やがて8分過ぎ、レプリは一瞬のフェイントから迅速のシングルに。トレスの左足を捕獲すると、そのまま回してテイクダウンに成功する。倒されたトレスもすぐにニーシールドを作って距離を取り、すかさず立ち上がって見せた。やがて10分が経過し加点時間帯に入った後も、両者はスタンド戦を展開していった。
試合が動いたのは15分過ぎ。トレスがシングルレッグに入ると、それをがぶったレプリが右足を上から抱えてのリバーサル狙い。腰を上げて反応したトレスが上になりかけるが、レプリは素早く回転し背中に回ってみせた。
トレスは前転を狙うが、レプリは背後からがっちりと密着して許さない。投げを仕掛けたレプリは、さらに後方に引き倒し両足フックを狙うも、トレスも腕で必死に防御する。やがてトレスは隙を見て前転し、自らガードの態勢に。レプリが決定的な先取点獲得かと思われたが「テイクダウン成立のためには、最初の試みから3秒以内でなければならない」というルール故にノーポイントに終わる。このルールを熟知してのトレスのムーブだった。そのトレスが、残り時間を下から凌いで本戦20分が終了した。
10分間の延長戦で、両者は再びスタンドの攻防を展開。一つのテイクダウンが勝敗を分ける息詰まる神経戦だ。やがて飛び込んだトレスは、すぐに背後に回ってレプリの背中を取る。そしてレプリを崩して仰向けにさせると、パワフルかつタイトな動きで両足フックを完成させ、ついに3点を先制したのだった。さらにトレスは背後からチョーク狙い。レプリは極めさせないが、脱出できないまま時間が過ぎていった。
残り1分半。かなり体をずらしたレプリは、マウントを狙われたところで正対して上になるが、トレスが上にいたわけではないので、リバーサルにはならずポイントを取ることはできない。時間のないレプリは片足担ぎや上半身の制圧を狙うが、トレスは腕で強力なシールドを作り許さない。さらに横の動いてのパスを狙うレプリに対し、トレスは足を効かせさらに腕も突き出して防御。終了寸前にレプリがサイドに出るも、ここもトレスがうつ伏せにスクランブルしたところで時間切れとなった。
2011年に初参戦して以来3度目のADCC挑戦(15年は不参加)のトレスが、念願の初制覇。レスリング力、回転系のポジション取りやサブミッションを完封する圧倒的なトップからのプレッシャー、そして、以前から世界レベルと賞賛されていたバックテイクの技術を見せつけての見事な戴冠劇だった。レプリ独走、そんな印象の強い柔術ライト級にあって、28歳のトレスの時代は今はじまったばかりなのかもしれない。
■リザルト
【77キロ以下級】
優勝 JT トレス(米国)
準優勝 ルーカス・レプリ(ブラジル)
3位 ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)
3位 ゲイリー・トノン(米国)