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【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月編─その弐─シャオリン×宇野薫「これが全てを物語っている」

Shaolin vs Uno【写真】ロンドンで青木は何を感じたのか。そして宇野薫は今週の金曜日に紫帯の柔術家としてアジア選手権に出場する (C)POLARIS

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ8月の一戦=その弐は8月19に行われたPolaris05からヴィトー・シャオリン・ヒベイロ×宇野薫戦を語らおう。

11月24日のベン・アスクレン戦が決まった青木。その彼がロンドンで触れた宇野薫とポラリスに関して感じたこと。それは格闘幸福論に通じる。


──8月の一番、2試合目は?

「ポラリスの宇野さんとシャオリンの試合ですね。一緒にロンドンに行かせてもらって色々と勉強になりました。大会がロンドンであるのに直行便でなく、仁川経由で時間を掛けて行った。そこから勉強になりましたね。

仁川経由は凄いチケットが安くなるそうです。トランジットは4時間ぐらいでした。宿泊先も普通のビジネスホテルで、宇野さんと相部屋。それも勉強になったし」

──そこが勉強になるということは、青木選手は恵まれたいたのですよ、やはり。また今もONEの待遇がそれだけ良いということですね。

「良い時代を生きちゃったんですね。ストライクフォースで試合をした時もそうだった。プロ柔術の試合で韓国に行った時もセコンドと部屋は別でしたし」

──ホテルに関しては、セコンドと同じなのは普通ですけどね。

「僕にはその普通という感覚が全くなくて。『マジか』って思いました。この環境のなかで宇野さんに最高のパフォーマンスをしてもらうには、どうすれば良いのかと……。そこで自分だったら、どうしてほしいのかと考えました。

大会後もホテルから空港まで、自分たちでタクシーを捕まえて移動する。それも初体験。さすがにタクシー代はプロモーション持ちですけど、選手はこういうホスピタリティのなかで最善を尽くしているんだっていうのが勉強になりました。

宇野さんとも話したんです。『僕らは恵まれた時代を生きていたんだ』って」

──青木選手が好待遇を生きていた時代でも、ローカルショーなどでは空港で待ちぼうけを食ったりだとか。そういう話は山ほどありましたからねぇ。

「ねぇ、だから自分も今後はこういう状況になっていくのでしょうね。そういう現実に目を向けることができましたね。フードマネーも出ない。そして宇野さんが払ってくれた。宇野さんを初め、出場選手の全員がそれほど大きな額を貰っているわけじゃないと思うんです。

でも、選手もそうだし、主宰者たちも持ち出しでやっているはずなのに凄く幸せそうなんです。皆が幸せそうで。宇野さんも凄く周囲からリスペクトされていて。凄く良かったですよ」

──持ち出しでも、格闘技が好きだからハッピー。それはビッグネジネスでないMMA、組み技大会で古くから見られてきた光景です。そのハッピーが、どこのギアに繋がって来るのか。

Uno vs Shaolin「大団円になっていました。つかこうへいさんの演劇を見に行った時のような感覚でしたね。劇団員の皆さんが懸命にやっていて、皆が幸せそうな雰囲気で」

──実際の試合に関しては?

「試合に関しては、多くを語ることはないです。試合が終わって宇野さんが『楽しかった』と言ってくれたことは一緒にやってきて嬉しかったし。ロンドン以前から、自分ができることをやってきたつもりだったので。

Imanari vs Neto宇野さんがいて、十段(今成正和)がいて。チケットも1500枚とか売れてソールドアウト。良い空間ですよね。AJ・アガザームは観客を煽ってやりとりしているし。シャオリンはもうMMAで戦った時のことなんてなかったみたいに、連絡先くれって言ってきて。僕も機会があればということで、ポラリスの方から『出てよ』と言ってもらえましたし、出てみたい大会です」

──青木選手はその幸福感に浸りたいと感じましたか。

「どうなんだろう……。心地は良いです。ただし、MMAじゃない。最終的に人が幸せになるのはMMAじゃないと思いました(笑)。ずっとできるわけじゃないし。MMAはどこまでいっても一つ、自己顕示欲を持ち続けないといけない。でも50歳過ぎてMMAをやるわけにはいかないじゃないですか」

──ハイ。

「なんて考えると、コレなんだろうなって思いました。宇野さんも幸せそうだったし、そういう意味ではノーギでもない。柔術のワールドマスターに日本人が大挙して出場するって、こういうことなんだろうなって。

それを宇野さんと行動して、知ることができた。凄く感謝しています。何よりも宇野さんが幸せそうだった。これ以上、言うことはないと感じましたね。

成田にご家族が迎えに来ていて、そこも大団円。僕は一人で京成で帰る(笑)」

──アハハハ。

「家族揃って帰路につく。子供たちが笑っていて。宇野さんの姿を眺めていると、なんか風景画を見ているみたいで。心が温かくなりました。これが全てを物語っているなって」

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