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【AJJC2017】嶋田裕太─02─「柔術とMMAは囲碁と将棋、いや囲碁とMMAぐらい違います」

Capybara【写真】それが何であろうが、必死で取り組んでいることがある──ということが人生に役立たないはずがない(C)MMAPLANET

8日(金)から10日(日)まで、東京都足立区にある東京武道館で、IBJJF主催のアジア柔術選手権2017が開催される。

アダルト黒帯ライトフェザー級に出場する嶋田裕太インタビュー、前編に続き後半となる(はずだった)今回は、青木発言について嶋田の柔術&MMA論を訊いた。
Text by Takao Matsui
<嶋田裕太インタビューPart.01はコチラから>


――ところで……、あの質問をしても良いですか。

「あの質問というと、アレですか? 例の発言……」

――ピンポン! 青木発言についてです。MMAPLANETで掲載した青木真也選手の柔術& MMA論では、嶋田選手の名前が何度も出ていましたので。

「何度もというか、毎回でしたよね。次は出ないだろうと思っていたら、また自分の名前が出てきて驚きました」

――それだけ気になる存在なのでしょうね。

「橋本(知之)君のインタビューも読みましたが、僕も柔術が彼と同様に好きなので、同じような感覚がありました。そういう意味では共感しましたね。一度、話してみたくなりました」

――嶋田選手の柔術論は、橋本選手の考えに近いと。

「近いと思います。僕にとって柔術とMMAは、囲碁と将棋くらいに違うものです」

――似ているようで、まったく違う。

「違いますね。囲碁をやっている自分に、青木さんから『将棋の方が強い』と言われているような感じですかね」

――柔術をやっていて、このポジションだとMMAなら殴られるなとは考えない。

「ゼロです。まったく思いません。僕は最初、MMAをやりたくてパラエストラ古河に入門したんですけど、そこは柔術とキックボクシングのクラスしかなかったんです。

パンクラスに出場する選手は、両方を習ってMMA用にアレンジするような感じでした。僕は道着を持っていたので柔術から入りましたが、2週間後にはすっかりはまりました。そこからは、まったくMMAを意識することがなくなりましたね」

――なるほど。橋本選手の例えではありませんが、恋愛と一緒なのですね。最初に好きになった人を一途に思うような感じなのか。

「僕が少しでもMMAを意識するようになってきたら、このポジションで殴られるとか思うのかもしれませんが、今は柔術のことで頭が一杯です」

――青木選手は、なぜMMAをやらないのかと発言していましたが。

「柔術が好きだからです。これが逆転しない限りは、MMAをやることはありません」

――純粋に柔術が好きだから?

「好きだから柔術をやっているだけです。無理やり柔術をやらされているわけではないので、MMAをやれと言われてもやるつもりはないです」

――柔術をやっていて強さを証明できるのかという疑問に対しては。

「それは、橋本君とかぶってきちゃいますけど、シチュエーションによりますからね。ナイフを持っている人に対して、『MMAファイターがどう対処するんですか?』と訊いてみたいですし、自分たちもそうですよね。複数人いたらとか。強さの尺度が分からない限りは、答えようがないと思います」

――それを言われると議論できなくなります。

「先ほど柔術とMMAは、囲碁と将棋くらい違うと言いましたけど、本当はもっとかけ離れた競技だと思っています。何だったら囲碁とMMAくらい違う感じです」

――野球とサッカーくらい違うのではなく、スポーツとボードゲームくらいの差があると。

「僕の中では、そうですね。そのくらい感覚が違います」

――それは、相当の違いですね。ただ、柔術の技術はMMAで十分に通用するべきで、その証明がトップ選手にはできるのではないかという意見もあると思います。

「そうかもしれませんが……。答えになっていないかもしれませんが、柔術の本当の魅力を知ることができれば、そうした疑問は出てこないのではないでしょうか。例えば、柔術には、お互いが床に尻をつけた状態のダブルガードの攻防がありますよね」

――はい。ジェネラルには膠着しているように見えてしまう攻防です。

「あの攻防は、片方ずつが立ち上がって得点を奪い合う展開が多くなります」

――まさにシーソーゲームとなる攻防ですね。

double guard「その攻防だけを見ていたら、すごく地味ですし、なぜこんな動きを必死にやっているんだろうと思うかもしれません。でも戦っている当人は、勝つための最大の努力をその攻防の中でしているんです。

引っ繰り返りそうになって、はたしてこのまま踏ん張ればいいのか、それとも力を抜いて引っ繰り返ってポイントを奪い返した方がいいのか、その心理戦が裏にあるわけです。

今年のムンジアルの解説をケニー・フロリアンがしていたんですけど、『柔術は一般的に見ると、楽しくはない。でも、凄く興味深いものなんだ』と言っていたらしいんです。僕はそれを聞いて、柔術の魅力の一端を伝えてくれていると感じました。

ダブルガードでのスイープ合戦、足を持って膠着させる場面、一つひとつの攻防がとても意味を持ち、その心理戦まで見えてくればより柔術を楽しんで見られるようになると思います」

<この項、続く>

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