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【Interview】サウロ・ヒベイロ(03)「メダルよりも大切なモノ」

University of Jiu Jitsu

【写真】数々の栄光を勝ち取ってきた柔術家人生を送ってきたサウロ・ヒベイロだが、競技柔術は柔術の一部と言い切る(C)MMAPLANET

ホイラー・グレイシーのインタビューに続き、現在発売中のFight&Life Vol36に掲載中の「Fight&Life 格闘紀行=サンディエゴ編」に登場する格闘家インタビューの第2弾サウロ・ヒベイロ編。

The Way of Lifeとして柔術の普及に努めるサウロが、日本の柔術界の状況について口にした。

<インタビュー Part 01はコチラから>
<インタビュー Part 02はコチラから>

――ヒベイロ柔術の看板を掲げるアカデミーでは、そのサウロの信奉する柔術をどこででも習うことができるということですね。

「誓うよ。信じてほしい。私、弟、私たちの指導者の全てが畳の上で指導する。本の中やYoutubeのビデオで指導するんじゃない。我々が経験してきた全てを伝える。私は毎日、アカデミーにやって来る。自分の名前を貸して、アカデミーに姿を現さない。そして、お金をポケットにいれていくようなマネはしたくない。

技術書にしても、本当に時間を掛けて創り上げた。今日という日は、もう戻ってくることはない。だから、しっかりと使いたい。体を使って指導する。それがマーシャルアーツの指導者だ。他のアカデミーがどうだかは、この目で見て、時間をシェアしているわけじゃないから、何も言えない。ただし、ヒベイロ柔術のアカデミーに関しては、今言った通りだと約束するよ。

正直、他で何をやっているかは気にしない。それよりも、自分のアカデミーで何が起っているかを注意していたいんだ。教え子にとって、その日は良い1日でなかったかもしれない。そんな時、力になってアカデミーから家に帰してあげたい。皆、どこか孤独なんだよ。だからこそ、私はセンセイであり、友人でありたい。

ところで、日本の柔術界はどうなっているんだ?  日本に関してはチョット気になることがあるんだよ」

――正直、私は国内で柔術トーナメントを追いかけているわけではないですし、以前のように柔術家と数多く触れ合っているわけでもないです。ただ、トーナメントは数多く行われています。柔術の練習をしている人の数も、ジャンプアップすることはないでしょうが、凄く減っているとも思っていないです。

「なぜだ? なぜ、トーナメントに行かなくなったんだ?  なぜ、柔術家との触れ合いが少なくなった? 」

――う~ん、それは個人的な想いが多いので……オフレコで。本当に関係者は凄く一生懸命だと思います。でも、自分には柔術界が動き始めた頃、何もないところでガムシャラだった若者達の熱意が好きだったんです。

「去年、日本に行った時、彼らからうやうやしさが感じられなくなっていた。私は、そう感じているんだ。ブラジル人と日本人が一体化しているとも思えない。ブラジル人の組織が、日本のみんなと手を取り合ってやっていっているとは思えない。

そして、そのブラジルサイドの威光を頼りに、国内で争っている。違うかい?  あんな状況になるなんて、思ってもいなかったし、悲しむべき事態だ。色んな人が、色んな人を快くなく思っていなくて、それを口にするのを聞く。なぜ、あんな風になってしまったのか。柔術があることで、嫌な思いをする人が出て来てしまうのは、本当に残念だ」

――IBJJFの傘下団体として、JBJJFが活動を始めた。IBJJFの理想をJBJJFは追求したのに、IBJJF側はそこに対して責任をとらなかったと自分は思っています。そして、その理想を追求するために実行しなくてはいけなかった変化を、上手く日本の柔術に関わる人たちに説明できずに、結局のところIBJJFの意向で――という風な説明で、理解を得ようとした。本当に頑張っているし、内側ではIBJJFに抗っていることもたくさんあると聞いています。でも、彼らの努力は日本の柔術社会全体に伝わりきっていない。それが残念です

「結局のところ、連盟だ、何だといっても、誰も利益を得ることなんて出来ていないんだろう? そういう政治的なゴタゴタで、柔術界のパイオニアの存在をしっかりと知らしめることができなかった。そして、他人の意見を聞こうとしない。去年、日本へ行ったときに、日本の柔術界の状況を知って本当に驚いたんだ。

まぁ、私も現状を完璧に把握しているわけじゃないから偉そうことは言えないが、困った時にはルーツに戻る。私はそんな古い考えを信じているんだ。でも、柔術を引っ張ろうと思って立ちあがった皆には、その責任があることもやっぱり理解してほしい。政治的な動きが多すぎると、疲れてしまうだろう。

大会運営だとか、世界大会だとかに夢中になっても、それは柔術の一部だ。私の教え子は80パーセントがトーナメントに出場していない。私は戦うことも好きだった。だから、戦いたい生徒には競技会で勝てる柔術の指導をミッチリとする。試合に出たい人間にとって、試合に出られない状況は本当に辛いからね。

それが分かっているから、登録やなんだかんだで本来の道を見誤らないで欲しいんだ。私のアカデミーは、私の家の延長線上にある。だから、素顔のままで道場にいて、素顔のままで指導する。家に居る時と同じだ。

日本の柔術界の皆は、家からマスクをつけて柔術アカデミーに足を運んでいないかい? 顔と顔を合せて、本当の付き合いがしたい。それが私の生き方だ。常に正直でいたい。そういう人々との心の交流は、メダルよりもすっと大切だ。柔術とは人生を豊かにしてくれるもの。柔術が原因で、いがみ合ったり、柔術社会のなかで立場を得るために政治的な動きをするなんて、それは柔術の豊かさと相反する事態だ。

何かをなすべきときに、政治的な動きというのは日本だけでなく、どこでも起こるものだ。だからこそ、思い出してほしい。なぜ、子どもたちは何をやらせても、上達する一方なのか。それは、子供達は正直に生きているからだ。本音で生きているからなんだ。本音でアカデミーに姿を現すことができなければ、アカデミーは君の居場所ではないということ。

ただ自分を苦しめる場所になってしまう。言い訳無し。原点に返って、道場に足を踏み入れてほしい。謙虚であること、年長者を敬うこと。それが常識だからだよ。それがなくてチャンピオンになってどうなる?  メダルを首に掛けてどうなる?  何の意味も持たないよ」

この項続く

<Bio>
Saulo Ribeiro
1974年7月2日、ブラジル・マナウス出身。
1997年~2000年ブラジリアン柔術世界選手権優勝
2000年&2003年ADCC世界サブミッションレスリング選手権88キロ優勝
MMA戦績5勝1敗

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