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【interview】サウロ・ヒベイロ〈最終回)「柔術が与えてくれる恵」

Saulo Ribeiro

【写真】サウロは道場内にオフィスを構えている。競技柔術は柔術の一部というが、一旦競技に出場すると非常に勝敗にこだわる。日本に支部はないが、フィリピンには300人の生徒を持つ (C)MMAPLANET

ホイラー・グレイシーのインタビューに続き、現在発売中のFight&Life Vol36に掲載中の「Fight&Life 格闘紀行=サンディエゴ編」に登場する格闘家インタビューの第2弾サウロ・ヒベイロ編。

最終回はここまでに引き続き、サウロにとっての柔術、柔術を学ぶことで得ることができる恵、そして練習を通して学ぶことを語ってもらった。

<インタビュー Part 01はコチラから>
<インタビュー Part 02はコチラから>
<インタビュー Part 03はコチラから>

――メダルよりも大切なモノがある。それがサウロにとっての柔術の有り方なのですね。

「それこそ柔術を学び、柔術が与えてくれる恵、恩恵なんだ。節度ある態度で柔術に向き合えない者が畳の上にいるなら、それはハードな時間になる。どちらが良いか、選べばいいんだ。鼻血が流れれば、私が綺麗に掃除するから(笑)。ソイツがチャンピオンでも、金メダリストでも関係ないよ。

一度、道着の袖に手を通したならチャンピオンかビギナーかは関係ない。金持ちか貧乏かも関係ない。みんな同じだ。みんなが、向き合うんだ。顔を合わすことが嫌なら、走り去ればいい。それが柔術大学だ。大会に出る者、警察官が勤務に役立てるために稽古する。運動不足解消のために汗をかきに来る者、誰もが楽しめる場所なんだ。ここを、柔道の講道館のような場所にしたくてやってきた。

ヒベイロ柔術の皆で柔術を育てていく。ここでは全てを受けいれている。MMAファイターがやって来ると、一般クラスではなくプライベートでちゃんと指導する。そして、私が道着を着た方が良いと思えば、道着を着てもらう。そこで嫌だということはできない。道着を着て練習が必要なのだから、道着を着るしかない。

教えを請いに来たMMAファイターが、何か注文をつけることは許さない。MMAファイターは、試合中に起きうる全ての状況を受け入れないといけないからだ。もうパンチは嫌だ。疲れたから戦いたくない。そんなこと、ケージの中で絶対に言うことはできない。だから、あらゆる現実、目の前にある状況に文句を言うことはできないようにしている。

彼が対処できないシチュエーションを与える。オートマティカルに動き続けることができる状況、自分が動けるようなシチュエーションばかりで動けても、試合ではそうでない状況で戦わないといけないことが絶対に来る」

――ハイ、自分で局面を打開できないポジションやシチュエーションは必ず訪れます。

「そんな状況を少なくしていくのが、私の役割だ。一人ひとり、苦手なシチュエーションは違う。そこを炙り出すのが私の仕事なんだ。ただ、こちらの知識を押し付けても、ファイターは何も整理できなくなる。

それはMMAだけじゃない。柔術だけでもない。人生こそ、自分で解決できない局面が多い。その局面を迎えても、解決できるよう働き続けることができる気持ち、心構えを学んでほしい。

柔術が好きで、忙しい最中に寸暇を惜しんでトレーニングに来てくれる生徒がいる。ただし、明らかに睡眠不足で体調不良だ。申し訳ない、ブラザー。そんな時は練習をすることは許すことができない。畳に座って、他の人の稽古を眺めていてくれ。それが心と心を通わせるということなんだ」

――サウロ、本当に今日は色々と話してもらいありがとうございました。

「こちらこそ。改めて柔術とは何かを、日本で柔術のトレーニングに励む友人たちが考えてくれる機会になると、私も嬉しいよ」

<Bio>
Saulo Ribeiro
1974年7月2日、ブラジル・マナウス出身。
1997年~2000年ブラジリアン柔術世界選手権優勝
2000年&2003年ADCC世界サブミッションレスリング選手権88キロ優勝
MMA戦績5勝1敗

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