【ADCC2019】無差別級─01─1回戦で99キロ超級優勝のデュアルチが豪州の足関節技師ジャイルスに下る
【写真】77キロ級出場のジャイルスが99キロ級王者を撃破。グラップリングの醍醐味の極みといった一戦となった (C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー24弾は階級を超えた夢の対決が次々と実現した無差別級一回戦からラクラン・ジャイルスとカイナン・デュアルチの一戦をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi
<無差別級1回戦/10分1R+ExR5分>
ラクラン・ジャイルス(豪州)
Def. by ヒールフック
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
本年度の柔術世界王者にして、今大会では最重量級王者も輝いたデュアルチと、77キロ以下級に出場した豪州の足関節職人ジャイルス。この無差別級1回戦の中でももっとも興味深い顔合わせだ。
シッティングガードを取ったジャイルスは、デュアルチの右足にデラヒーバで絡んで外回転を狙うが、デュアルチはその先を行くように飛び込んで前転し、ジャイルスの背中とマットの間に滑り込んでのバック狙いへ。が、ジャイルスはデュアルチの右足を左腕で抱えつつも、残る右腕で距離を作って防いでみせた。
再び下から右足に絡んでインヴァーテッドのような体勢から崩しにかかるジャイルス。対するデュアルチは上からその右足を押さえつけて潰し、ジャイルスの体を二つ折りにする形で防ぐ。が、ジャイルスは体をずらしてデュアルチのバランスを崩して足を狙う。が、ジャイルスは外側から絡んでくるジャイルスの左足を押して距離を取り、足を抜いてみせた。
その後も下から右足に絡んで崩しにかかるジャイルスと、その体を潰してバックを伺うデュアルチの攻防が続く。執拗に右足に絡んでくるジャイルスを、デュアルチはなかなかコントロールできずに後手に回ることが多い。
シッティングに戻ったジャイルスは、今後はデュアルチの左足に絡み、外回りでその体勢を崩す。デュアルチは50/50のロックを防ぐために右手でジャイルスの左足を掴むが、その間にジャイルスはデュアルチの左足を対角線に持ってきて掴み、自分の左脇で捕獲して内ヒールのグリップを作る。
相変わらず右手でジャイルスの左足を掴むことで、自分の左足を固定されないようにしているデュアルチ。さらに極めにかかるジャイルスに対し、体をずらして距離を取りたいデュアルチは、左足を掴んでいた右手を離してマットにポスト。と、その瞬間にジャイルスは自由になった左足を大きく旋回させ、デュアルチの左足を50/50の状態で固定。同時に内ヒールで捻りあげるとすぐにデュアルチがタップした。
最重量級王者デュアルチを、小兵ジャイルスが倒す大殊勲。特筆すべきは、攻防の大部分においてジャイルスが常に先手を取っていたこと、そしてジョン・ダナハー門下の選手たちが得意とし、今や世界中の選手たちが研究する外掛けからのインサイド・サンカク(内側でロックを作る形)ではなく、外側で三角ロックを作る50/50の形から極めてみせたことだ。
世界的流行とは一味違うオリジナルな仕掛けを駆使することで、まだその対処を熟知していない相手の先を行き、体格差を超えて無類のフィジカルを誇る世界王者を打倒──2019年にしてなお新しい有効な技術が生み出され続ける、サブミッション・グラップリングの奥深さを再確認させてくれる業師ジャイルスの見事な勝利だった。