【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その弐─石井慧×フェルナンド・ホドリゲス「堅い」
【写真】青木真也の石井慧評は、やはり興味深いモノだった (C)KSW
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ3月の一番、第2弾は23日に開催されたKSW47から石井慧✖フェルナンド・ホドリゲスの一戦を語らおう。
──3月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「石井さん、石井慧選手ですね。KSWかHEATなのかでいうとそこも難しいところなんですが、KSWで行きましょう。石井さんは何て言うのか、色々と達観してしまっていますよね。
メジャーシーンを往かなくても良い、とにかく自分のやりたいことだけをやるというスタンスに振り切れています」
──それが石井選手の強さを追求するということなのではないでしょうか。
「う~ん、割と危ない人だったということがちゃんと分かっている」
──危ない人というのは?
「ビジネスになるから格闘技に来るとかっていう人は、いっぱいいたじゃないですか」
──はい、他競技で実績を残した格闘家という部類でいえばたくさんいました。そして多くが残っていません。
「そういう部分で、石井さんは真っすぐな気持ちでこっちに入ってやっているので。本気で。だから危ない人、怖い人だなと思います」
──それがなぜ怖い人になるのですか。
「だって損得勘定がないということは、その道に関して犠牲を厭わないということじゃないですか。そういうところはちょっと怖いなと思います」
──想像でしかないのですが、経済的は不安がないというのはあるのではないでしょうか。
「それにしても人間って欲が出るものだし。苦しいことはしたくない生き物だと思います。でも、そういうところで勝負するのは凄いなって。怖さっていうのは悪い意味ではなくて、愚直にやり続ける狂気ということなんです。そこに強さがあります」
──柔道も純粋に強くなりたくて、一生懸命やった。その結果が五輪金メダリストまで昇りつめたというような。
「ハイ、とにかく一生懸命にやる人だと思います。その一生懸命の度合いも色々とあって。僕からすると彼の一生懸命は怖いです。う~ん、なんていうのか入れ込み方のバランスが悪くて怖い」
──バランスの取りようがないところから、MMAキャリアをスタートさせ、多くの外的要因に左右された。そのなかで今のありようが、石井選手にとって居心地が良いように感じます。
「クロアチアにいると、日本を主戦場にしていた頃のような面倒くさいことはないということですよね。そして凄く乗っていますよね。楽しそうだし」
──試合自体はどのような印象を持っていますか。
「石井さんの試合は面白いわけないじゃないですか」
──面白い、面白くないではなくて、あの一生懸命なスタイルと実力的な部分では?
「石井さんはやっぱり柔道の人ですね」
──石井選手自身はケージレスリングに自信を持っているかと。
「いや、柔道の人ですよ。石井さんの凄いところは、やっぱり大内刈りだから。大外刈りもそうだし、足技が切れる人っていうのは今のMMAでほとんどいないです。アレが日本人、日本の柔道家の強みだと思います。
足が切れるのというのはテイクダウンとして凄く有効です。だからダブルレッグやシングルよりも、足技の選手かと。僕の見立てはどこまでいっても足技です(笑)。KSWのヘビー級王者フィル・デフリーズにはIGFで勝っているし、チャンピオンになる可能性もある。そうなると日本人がヨーロッパの大会でヘビー級王者になるって歴史的な事例になりますよね」
──その前にPFLも控えています。
「ホドリゲスに苦戦はしていますし、う~ん、そうかぁ。ステロイド云々って言っていましたが、それはまたちょっと話は違うし。でも、PFLでの試合は楽しみです。どういう試合になるのか見てみたいです」
──試合展開もクソ真面目です。
「いや、ホント。1ミリも面白くない。でも、見てみたい。IGFの時も石井さんの希望で3Rマッチになっていて、それを周囲は何とか2Rにならないかって言っていました(笑)。詰まらないからって。それぐらい手堅い、堅いです」
──その手堅い試合を貫いて結果を残して欲しいです。
「そうなるのか興味深いし、日本人のヘビー級ではナンバーワン。そういう点でも、勝ち負けとか心配しないで堂々と戦ってほしいです。寝技率は凄く高くて、マウントバックでなく抑え込み&アームロックという戦い方で」
──PFLでは米国人レスラーとの戦いが楽しみです。
「キング・モーと競っていたし、そこはしっかりと戦えるんじゃないでしょうか。本気で良い選手だと思っています。実は器用、手先が器用な選手です。それに本当に強くて、伸びていますしね」
──NCAA D-1レスリングで、184ポンドと197ポンドで計3度もチャンピオンになっているジェイク・ロショルトと当たるようなことがあればと期待しています。
「どっちも動かないんじゃないですか(笑)。そして、そういう相手には強いと思います。PFLの石井さんは楽しみです。誰とやっても拮抗した試合になると思います。RIZINでイリー・プロハースカに負けた時とか、自信を失って辛そうだったけど、今は仕切り直して元気になった。ミルコのところがやっぱり水に合っているからだと思います。プレーオフには進出するでしょうし、ベスト4まで行けるぐらい頑張っている……そうなれば、優勝も見えてくるかと。PFLはじゃんけん的な要素が多くなるので、堅い選手は強いですからね」