【WEF Global14&Arzalet】キルギスでミドル級王座挑戦、マルコス・ソウザ─01─「全く未知の国(笑)」
【写真】まさに柔術と共にある人生を歩むマルキーニョス (C) MMAPLANET
10日(土・現地時間)にキルギスの首都ビシュケクにあるスポルトパラス・コズホムクルで行われるWEF Global14 & Arzaletでマルコス・ソウザがWEFミドル級王者ヌルスルタン・ルジボエフに挑戦する。
当初の予定ではマルキーニョスはWEFウェルター級王者ジュマベク・ウル・アクチレックに挑戦する予定だったが、ルジボエフへのチャレンジに代わった。
HELEO表参道での柔術指導を切り上げ、試合までは浜松で過ごすというマルキーニョス。地元に戻る前夜に今回の試合について話しを訊くと、彼にとって試合とは人生の縮図、結晶であることが伝わってきた。
──2週間後にキルギスでMMAマッチが控えています。
「今は普段より自分のトレーニングができているよ。そしてケガもない。メチャクチャな減量もないし、ひたすらハードなんていう無茶なモノでなく、対戦相手に勝つ練習ができているよ」
──当初の予定ではウェルター級王座挑戦だったのが、ミドル級王者に代わりました。84キロで戦うことはどのように捉えていますか。
「ミドル級だけど80キロなんだ。最初は77キロだったけど、契約書が届くのが遅かった。試合までの猶予が少なくなっていくなかで10キロも減量できないと伝えたんだよ。そうしたら80キロという話になり、7キロだったら問題ないからミドル級王座に挑戦することを決めた。
77キロに落とすには、2カ月の準備期間は欲しいから。我儘を言っているように思われるかもしれないけど、正式契約が遅くなったのは僕の責任じゃなくて、プロモ―ション・サイドの問題だからね」
──その通りですね。しかし、対戦相手の変更が続きますね。
「確かにね(笑)。まぁ、そこも理解しているよ。戦うと言っておきながら、話が進むと断る選手もいるようだし」
──では対戦相手のルジボエフの印象を教えてください。
「ガムシャラに戦うのではなく、勝利を目指して一心に戦う選手だ。彼のキックは危険だよ。それにキムラも得意にしている。でも僕は柔術を信じているし、必要ならキックもパンチも使って戦うよ」
──確かにルジボエフは組まれた時に瞬時にキムラに入りますね。
「ただし、僕の柔術のレベルは彼とは違う。きっと僕のような柔術家と戦ったことは無いはずだよ」
──ではキルギスで戦うことに対して、どのような気持ちでいますか。
「全く未知の国だからね(笑)。試合が決まって、キルギスをググったほどだよ。初めての国で戦うには、自信が欠かせない。それが僕にとって柔術だ。柔術を信じることで、自信をもって戦うことができる。何も恐れることはないよ。
僕はさ、クレベルのことを本当に尊敬しているんだ。クレベルはポーランドで6万人のファンの前でタイトル戦を戦った。そして、いつも強い気持ちでケージに向かっている。クレベルと同じように自信を持って、僕の持つ才能を対戦相手にぶつけるだけさ。
対戦相手に対する恐れは一切ないよ。それが父から教わったことだから。人生の方がキルギスでの試合より、ずっとハードだった。父を亡くし、日本で生きることを決めた。家族と離れ、夢を追いかけて来た。あの時の状況と比べると、試合をすることに恐れを感じることは決してない。練習も試合も楽しむためにやっている。
家に戻ってもお父さんもお母さんもいない。兄弟もいない。そっちの方がずっと辛かった」
──なるほど。マルキーニョスは常に柔術の指導にプライオリティを置いてきましたが、今回は10月にラスベガスでクインテットに出場し、そして11月にWEFと試合が続きます。
「忙しいということだと、この2カ月だけでなく2年ほどクレイジーな時間を過ごしてきたんだ。自分のジムが磐田にあるけど、ブラジルにジムを3つオープンさせ、他のビジネスもスタートした。そのうえで指導をして、ファイターとして戦う必要があった(笑)。
クインテットに関しては、2週間しか練習に集中する時間はなかった。でも言い訳もしないし、チームの勝利のために全力で戦った。素晴らしい挑戦になったよ。人生はチャレンジ、居心地の良い場所に立ち止まっていても得られるモノはないから。成長するためにチャレンジは欠かせないよ。
クインテットはチーム戦で、僕が戦う時にチームのメンバーが必死で応援してくれる。アレはこれまでに感じたことがなかった感覚だね。あの瞬間、僕はチャンピオンになれたと思った」
──チャンピオンになれた?
「夢を追いかけるために大学を辞めて、家族、ガールフレンドと離れて日本にやってきた。その僕がクインテットで戦った時、桜庭さん、ジョシュ・バーネット、所さん達が僕のために声を枯らしている。本当の意味で、僕はチャンピオンになれたと思ったんだよ」
──なるほどぉ。人生のチャンピオンですね。ところで今回は自分の練習ができてきたということですが、東京ではどのように試合に向けて作ってきたのでしょうか。柔術は問題ないと思うのですが、MMAや打撃という面では。
「僕は過去7試合で、6つの一本勝ちを手に出来ている。僕の戦い方は上手くいっているはずだ。その間、豊橋のチーム・アレスでしっかりと打撃の練習もやってきた。東京にやってきて同じことをできているかと言えば、そうではないかもしれないけどやるべきことはやっているよ」
──準備は万全だと?
「そうだね。東京での指導は今日できりあげて、明日の朝から浜松に戻るんだ(※取材は10月26日に行われた)。来週の水曜日に成田からキルギスへ向かうから、火曜日まで浜松にいるよ」
──最後の調整は地元で行うと?
「もうテクニックやフィジカルのためじゃない。試合までの日々を地元で家族や友人たちと過ごすことが、メンタル面で凄く大切になってくる。日本に住むようになって10年、浜松にはたくさんの友達もできた。
いくら十分なトレーニングができても、試合に向けて楽しむ気持ちがないとしんどいよね。試合をしたいし、ハッピーでいたい。そのための浜松滞在なんだ。好きなことに邁進するって幸せなことだけど、そこから一歩引いて自分を顧みることも時には必要だと思っている。
実はね、ファイターとして大きなプランも進んでいる。今、それを明かすことはできないけど、来年には大きな舞台で戦うことになるだろう。現役として最後の挑戦になる。本当のチャレンジだ。だから、来年は指導を少なくしてファイターとして100パーセントの挑戦をしようと思っているんだ」
<この項、続く>