【RFC39】ガラパゴスMMAからの使者、ライト級T本戦出場決定バオ・インカン「MMAは自分自身への挑戦」
【写真】日々自分に厳しく練習していると語るバオ・インカンの表情は真剣そのものだが、ロード・トゥ・アソルに出場し王者クォン・アソルを知らないとは……どれだけガラパゴス(C)KAORI SUGAWARA
10日(土・現地時間)、韓国ソウルのチャンチュン体育館で開催されたRoad FC39のプレリミ=Young Gunsでライト級100万ドルトーナメント中国予選決勝戦が行われ、バオ・インカンが1R 1分38秒RNCでワン・ミンウーを破った。
緊急参戦ながらも1R一本勝ちでトーナメント本戦への出場権を獲得したバオ・インカンに本戦に向けた意気込みと、彼の考えるMMA感を語ってもらった。そこにはUFCを頂点としたMMA、あるいは歴史ある日本、アジアで成長する──そんな外界とは遮断されたガラパゴス状態にある中国のMMAファイターらしい、ただ強さを追及する姿勢が見られた。
──1R 1分38秒での勝利です。
勝つとは思っていましたけど、こんなに早く勝負を決められるとは思っていなかったので、予想以上の結果でした。ただ、嬉しいとかそういう気持ちはなく、普通の気分です。試合中も緊張するようなことはなかったです。
対戦相手のことはよく知りませんでしたが、ロードFCは普通の人が簡単に出られるような大会ではなく、とても大きな大会ですから、対戦する相手もそんなに簡単な相手ではないだろうと思っていました。ただ、自分に自信がありますから、絶対に勝つと思っていました。
試合前に対戦相手の映像は見ましたが、見るほどにどうすれば良いか分からなくなりました。なので映像を見るのを止めて、自信を持って練習してきた通りに試合をやればできると思うようにして、練習に打ち込んできました」
──あの重みのある打撃は散打がバックボーンにあるからでしょうか。
「はい。初めて自分が習ったのは散打で、試合に出るようになったのはムエタイからです。それでチャンピオンになったので、MMAに転向しました。練習では一つの動作にも自分で目標を設定するようにしています。そして、必ずその目標を達成させる。そういう風に毎日、自分に厳しい要求を課すようにしています。
他には色んな人と練習をするように心がけています。いつも同じ相手とだけ練習をしていると、相手も自分が何をするか分かってしまうし、自分も相手が何を仕掛けるのかが分かってしまいます。それでは練習にならない。知らない人と練習をすれば、自分はどんな動作が出来て、何が出来ないのかよく分かります。なので、いつも積極的に知らない人と練習するようにしています」
──散打からムエタイへと転向したきっかけはありますか。
「最初は散打を習っていました。以前はスペインの大会にも2度参加したことがあり、2回ともTKOで勝利しています。だから自分は立ち技が得意だと思います。でも、つまらないと感じるようになったので、ムエタイに転向しました。ムエタイでチャンピオンになってから、つまらなくなってしまい、もっと難しい競技に挑戦したいと思うようになりました。それで始めたのがMMAでした」
──今回の勝利でトーナメント本戦への出場が決定しました。本戦は約1ヶ月後の7月15日(現地時間)開催のロードFC40でスタートします。
「準備期間は短いですが、心配するよりも自信を持って試合が出来るように、普通通りに練習する方が良いと思っています。そんなに深くは考えていません。自分に厳しくしっかり練習をして、どの試合も全力で戦います。勝敗も大切ですがどの試合でも自分の決めた課題を達成して、自分が満足できるような試合内容にしたいです。
体重が一番問題です。減量に失敗したら、例え契約体重まで落とせたとしても、体を回復させるのにも時間が必要なので、万全の状態で試合が出来ないという事態もあり得ます。今回の試合で、減量が成功したのが最も嬉しかったことです。練習の質は普段通り、ただし練習量、時間は今までより多くするかもしれません」
──ライト級Tの頂点で待ち受けるのはライト級王者のクォン・アソル選手です。
「名前も全然知らないです」
──MMAでの最終的な目標はありますか。
「特に目標はありません。誰を倒すとか、誰がチャンピオンになるとか、そういうことは全然考えていません。ただ、散打とムエタイがつまらなくなったのでもっと難しく厳しいスポーツを選んで、自分ができるようになるまでやりたい。色んな強さのある人と試合をして、自分の知らない自分を発見し、出来ない自分を克服していきたい。つまり自分自身への挑戦です。
なので実は、誰と試合をするかは全然関係なく、自分がどのようにその試合を通して自分自身と向き合うかということが重要です。その上で自分に厳しく課題を課して、できるだけ完璧に課題をクリアする。それを目標にしています」
──バオ選手にとって、MMAは自分自身を鍛錬する精神修行ですね。
「そうです。初めは楽しさがあるのではないかと思って始めたんですが、競技に魅力を感じているとかそういう感情はなくなりました。今はただ『必ず完璧にやりたい。やり遂げたい』と思っています。なので、自分で納得できるまで完璧にやり遂げなければなりません」
──自分に厳しく生きているのですね。生活の中で楽しんでいることはあるのでしょうか。
「あります。旅行と食べ物です。辛いものが好きです。大きな食卓に座って食べるよりも、旅行しながら道端の店で売っているものに挑戦して、美味しいものに出会う。そういう旅の楽しみ方が好きです。外
国が好きです。中国国内なら三亜(サンア)という熱帯寄りのベトナム近くにある島や、瀋陽(シンヨウ)という東北の山と水に囲まれた中にある都市が好きです」
──それでは最後に1ヶ月後のトーナメント本戦に向け、意気込みをお願いします。
「自分が選んだ道では、自分の力で生きて抜いていかなければなりません。だから毎回どの試合も真剣に準備をして挑んでいます。トーナメントでも毎回の試合にしっかり備えて最後まで勝ち抜きます」