【EJJC2017】ルースター級制覇、芝本幸司<02> 「橋本戦の敗北──今の形ではダメだと思えた」
【写真】本格的な日本人ライバルの出現で、より高見を目指すことができた芝本。国内でのライバルの存在──改めたブラジル人の強さが分かるような気がする芝本の橋本戦の振り返りだった (C)TSUBASA ITO
1月22日、ポルトガルのリスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで開催されていたIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権──最終日。黒帯ルースター級を制した芝本幸司インタビュー第2弾。
Text by Tsubasa Ito
昨年9月にアジア選手権では新世代=橋本知之に試合終了間際にアドバンテージを許し、逆転負けで大会5連覇を逃した。芝本にとって、橋本戦の敗北とはどのような意味があったのだろうか。
<芝本幸司インタビューPart.01はコチラから>
――昨年9月のアジアで橋本知之選手に敗れました。一昨年のアジアでも橋本選手と戦いその時は勝利していますが、何か違いは感じましたか。
「もう単純に、1年前よりも格段に強いなと感じましたね。試合中にそう思いました。具体的にどうというのではなく、組み合った感覚として」
――ポイント2-2でアドバンテージ1を芝本選手がリード。ラスト10秒からの攻防がポイントになったと思いますが、ご自身ではどう分析していますか。
「今はあまり深く考えていないですね、もうだいぶ日が経っているので。直後にインタビューされればもっと具体的なことを言えたと思うんですけど……。
でも、今となってはラスト10秒がどうだったということよりも、あの10分間全体で自分が弱かったですね。気持ちで攻められていなかったです。前回戦った時より相手が強いことを試合中に察知しながらも、同じような展開になってしまった。
アドバン1を自分が取って、攻める気持ちが薄れていたなというのは今振り返ってみて思います。アドバンを取ったことは関係なく、そのまま自分が勝てるかどうかは関係なく、何も考えずに次のポイントを取りにいかなければいけなかったんです。
パスガードの3点、あるいはバックテイクの4点を取ることに集中しなければいけなかったんですけど、どこかで優勝しようと思ってしまったんです。そういう気持ちで試合をしてしまったことが、自分の弱さだったと思います。だから結果的に勝ち切れなかった。
あのラスト10秒の選択がどうだったかというのは、それまでの9分50秒をもっと全力で戦った上で話せることだと思うんですよ。私はあのラスト10秒よりも、9分50秒の自分の戦い方が許せないですね」
――日本人相手というのもプレッシャーになったのでしょうか。
「やはり、かなり相手を意識してしまいましたね。彼はジャパニーズ・ナショナルのライトフェザー級で優勝しましたよね。すごいなと単純に思いました。私がいつも練習している鍵山(士門)選手に勝って優勝した。その後の全日本選手権ではうちの山田(秀之)にも勝っている。
2人はいつも練習していて、どれだけ強いかは分かっています。まあ実力は本物ですよね。同じく世界を目指して戦っていく日本人として、どこかで絶対に負けられないというプレッシャーが掛かっていたんだと思います」
――負けられない重圧など、さまざまな要因が試合に響いてしまったのですね。
「うーん……自分が守りのメンタルに入ってしまっていることは、試合中に気づいていたんですよ。それでも何とかなるかなと思ってしまったんです。そして……何ともならないくらい、相手が強かったということですね。
実力差があれば何とかなってしまうんですよ。おそらく、今まで国内で戦う時がそうだったんです。そういったメンタルで戦ったら負けてしまう状態まで、相手が強くなっていた。
あの敗戦によって試合中のメンタルというよりは、自分の柔術に対する考え方をもっと上げていかなければいけないなと気づかされました」
――……。
「私の中ではこの1年間、自分の柔術の形ができてきたと感じていて、後はそれをどれだけ磨いていくかというフェーズに入ろうとしていたんです。でも、あのアジアでの敗戦によって、まだまだ今の形ではダメだと思えたんですよね。
もうワンステップ、ツーステップ上の自分の形をつくっていかなければいけないと。アジア直後からは、ガンガン追い込んで息を切らして泥臭く練習することを、もう一回やり始めました。その結果が今回のヨーロッパに出たのかなというのはすごく感じましたね」
――アジアの敗戦が相当な刺激になったと。
「間違いないですね。本当にありがたいことです」
<この項、続く>