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【UFN93】アメリカン・レスラー=ベイダー×ヨーロピアン・レスラー=ラティフィ、対照的な強さの激突

Bader vs Latifi【写真】強い時がめっぽう強いベイダーと、苦しい時に頑張りを発揮するラティフィ。戦いは精神面の勝負まで持ち込まれるか(C)MMAPLANET&KEITH MILLS

これから約5時間後、3日(土・現地時間)にドイツ・ハンブルクのバークレイカード・アレーナで戦いの幕が切って落とされるUFC Fight Night93「Arlovski vs Barnett」。メインはヘビー級5回戦のジョシュ・バーネット×アンドレイ・オルロフスキーがマッチアップされた同大会、アメリカン・レスラーとヨーロピアン・レスラーの興味深い一戦も組まれている。


それがライアン・ベイダーとイリル・ラティフィのライトヘビー級戦だ。アリゾナ州立大のD-1レスラーだったベイダーは2度のオールアメリカンに輝き、MMA転向後は7連勝でTUFシーズン8に出演。ヴィニー・マガリャエスやクリストフ・ソソジンスキー、エリオット・マーシャル、トム・ローラーら実力者が揃ったライトヘビー級を制した。

UFCでも負け知らずの5連勝でジョン・ジョーンズと事実上のタイトル挑戦権を賭けて対戦し、ここで完敗。その後は日本大会で体重オーバーのランペイジ・ジャクソンには勝利したもののリョート・マチダ戦やグローバー・テイシェイラ戦で敗れ、トップの壁を乗り越えられずにいた。

それでも一念発起し、ここからOSP戦、フィル・デイヴィス戦、ラシャド・エヴァンズ戦を含む5試合で勝ち続けたベイダー。しかし、1月のアンソニー・ジョンソン戦では恐怖で体が動かないようなファイトを見せてしまい──僅か86秒でTKO負け。これ以上ないほど、弱々しいイメージを見る者に与えてしまった。

ラティフィはアルバニア移民の子として、スウェーデン第4の都市マルメのかなり苛烈な環境の下で生まれ育った。彼が幸運だったのは、後のスウェーデンMMA第一世代となる実兄アルベンの庇護のもと、その兄が争い事の矢面に立ち、さらには顔役になっていた裏で、愛情を注がれレスラーとして成長していったことだ。

ジュニア時代にノルディック王者になり、国内選手権でも3位。さらに兄と一緒にアリアンシ・マルメ(※当時)で柔術も始め、2004年にはADCC欧州トライアルで優勝している。MMAデビューは2008年、ここからアルバニア魂といっても過言でない、多くのファイターから屈強な精神力が認められるファイターとなっていく。

レスリング能力、トレーニング・パートナーのために負傷をおして全力でスパーリングに付き合う姿勢は米国でも変わらず、ATT、インペリアルファイトチーム(ブラックジリアンの前身)、そしてAKAで高い評価を得ている。同時に課題だった打撃が成長し、UFCでも結果を残すようになった。

ラティフィは左右の構えから右中心のKOパンチを誇り、オーバーハンド、フック、リードアッパーとその種類も多い。ただコンビネーションは少なく一発打ち込んで、間合いを変えるのが彼のリズムだ。その代りといっては何だが、パンチからテイクダウンというコンビネーションが冴え、テイクダウンも左右どちらの手が前でも仕掛けることができる。

グレコで結果を残しているだけあって、スクランブル中にバックを取ると豪快なバックスローから寝技に持ち込む展開も得意としているラティフィ。何よりも彼の強さは、これらの攻撃を15分間持続し前に出続けることができることだ。

一方のベイダーはダブルレッグからドライブという展開では、ラティフィ以上のパワーを誇る。そして、ラティフィになくベイダーにあるのが、左ミドルだ。オーソのベイダーは、前足である左足で、スイッチの有無関係なく蹴りを腹へ打ち込むことができる。ラティフィとすれば、この蹴りをキャッチしたいが、被弾するとダメージが後々残り、前に出る力を奪われることになる。

勝負の行方はベイダーの精神面。乗っている時の彼は強い。ラティフィの前進にも動じないだろう。しかし、一度弱気に入るとそのラディフィの前に出る姿勢に気持ちが折れ、後ろ向きのファイトとなってします。そうなればランキングで8位も下にいる相手に白星を献上することも十分にあり得るだろう。

■ UFN93 計量結果

<ヘビー級/5分5R>
アンドレイ・オルロフスキー:236ポンド(107.05キロ)
ジョシュ・バーネット:256ポンド(116.12キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
アレクサンダー・グスタフソン:205ポンド(92.99キロ)
ヤン・ブラホヴィッチ:205ポンド(92.99キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
ライアン・ベイダー:205ポンド(92.99キロ)
イリル・ラティフィ:205ポンド(92.99キロ)

<ライト級/5分3R>
ニック・ハイン:155ポンド(70.31キロ)
バン・テヒョン:156ポンド(70.76キロ)

<ウェルター級/5分3R>
イエシン・アヤリ:171ポンド(77.57キロ)
ジム・ウォルヘッド:170ポンド(77.11キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ペーター・ゾボタ:171ポンド(77.57キロ)
ニコラス・ダルビー:170ポンド(77.11キロ)

<女子バンタム級/5分3R>
アシュリー・エヴァンズスミス:135ポンド(61.24キロ)
ヴェロニカ・マシード:136ポンド(61.69キロ)

<バンタム級/5分3R>
テラー・ラピルー:136ポンド(61.69キロ)
レアンドロ・イッサ:134ポンド(60.78キロ)

<ヘビー級/5分3R>
ジャルジス・ダンホー:258ポンド(117.03キロ)
クリスチャン・コロンボ:251ポンド(113.85キロ)

<ミドル級/5分3R>
スコット・アスカム:185ポンド(83.92キロ)
ジャック・ヘルマンソン:186ポンド(84.37キロ)

<ライト級/5分3R>
ルスタン・ハビロフ:156ポンド(70.76キロ)
レアンドロ・シウバ:156ポンド(70.76キロ)

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