【Interview】ドミニク・クルーズ(03) 「試合中、念頭にあるのは…」
【写真】受答えの一つ一つに、非常に含蓄のある言葉が返ってくるUFC世界バンタム級王者のドミニク・クルーズ。早期よりも、完全な状態で復帰を望みたい(C)MMAPLANET
UFC世界バンタム級王者ドミニク・クルーズのインタビュー、最終回。長期療養を続けるチャンピオンに、ユライア・フェイバーに続き、当面の最大のライバルとなるヘナン・ベラォンのファイティング・スタイルについて尋ねた。
さらに彼のスタイルについて話が進むと、ドミニクは「世界で最も完璧なファイターである必要はない」と断言した。
<ドミニク・クルーズ インタビュー、Part.01はコチラから>
<ドミニク・クルーズ インタビュー、Part.02はコチラから>
──ユライア・フェイバーが負けた試合、つまりテイクダウンできず、トップからエルボーを落せなかったということですね。
「ユライアには明らか弱点があり、その弱点をフィジカルでカバーしているんだ。ストレングスを多いに生かす戦いが、彼にとってベストの戦いになっている。弱みに付け込まれず、得意な形で試合ができる。それが彼の強さで、だからずっとチャンピオンに君臨していたんだ」
──では先ほど、少し話に出たヘナン・ベラォンとエディ・ワインランドの試合はどのようになると予想していますか。
「ベラォンにはニーや蹴りもあるから、彼の方が武器が多いよね。エディ・ワインランドはボクサーであり、テイクダウン・ディフェンス・アーチストだ。ワインランドはテイクダウンをストップし、ボクシングでKOを狙う。彼は蹴りは出さないし、テイクダウンもしない、サブミッションで一本も取らない。凄くベーシックなスタイルだよね。
その点、ベラォンはワインランドの倍以上の武器を持っている。だから、ベラォンが勝つと予想しておくよ。ただし、簡単な試合にはならない。ワインランドは物凄く経験豊かなファイターだから。彼はずっとトップファイターと戦い続けてきた。そして、KOできる拳を持っている」
──ベラォンは、ユライア戦はスコアリングに徹底していましたが、マイケル・マクドナルド戦では一転、積極的にテイクダウンを仕掛け、最後は一本勝ちをしています。
「OK。もう一度、マッチアップについて話そう(笑)。マイケル・マクドナルドは、相手の動きに合わせて戦うパワー・ストライカーなんだ。そして、柔術もできる。だから、ガードポジションを取ることは気にしない。そして、思い切り打撃を入れたいから、それほどテイクダウン・ディフェンスに斟酌しない。
つまり、ヘナン・ベラォンからすると、ユライア・フェイバーとマイケル・マクドナルドは真逆のスタイルを持った対戦相手になる。ユライアと戦うときは、打撃のことはそんなに心配しなくても良いけど、とにかくテイクダウンには気を付けないといけない。彼の望む展開が、スクランブルに持ち込んでトップを取り、相手がクローズドガードを取ることだからね。
ボクサー&レスリングのユライア、柔術&ストライカーのマクドナルド、ヘナン・ベラォンが全く違う戦いをしたのは、ごくごく自然なことだよ。彼はユライア・フェイバーをテイクダウンできないけど、マイケル・マクドナルドはテイクダウンできる。マクドナルド相手なら、テイクダウンから一本を狙える。ユライア・フェイバーと戦うには、テイクダウンを頭に入れて、相手の距離の外から打撃を入れること。決して、ユライアのリーチのより近い距離に近づかない」
――そうなると、ユライア・フェイバーを相手にテイクダウンができるドミニク・クルーズというファイターの凄さを改めて思い知ることになります(笑)。
「僕は対戦相手によって、戦い方を変えることができる。ユライア・フェイバーと戦えば、ユライア・フェイバー用の戦い。ヘナン・ベラォンと戦えば、ヘナン・ベラォン用の戦いをする。今、UFCのどの階級のトップ5ファイターも、相手によって自分の戦いをアジャストできるはずだ。
レスリングができないストライカーと戦えば、テイクダウンを狙う。そして、打撃でケリをつける。ただし、柔術の黒帯と戦うと、寝技にはいかない。そこは彼のフィールドだからね。打撃とレスリングで戦う。ミックストマーシャルアーチストなら、対戦相手によって自分の戦い方を変えることができないと」
――今やMMAファイターは軸がどこにあるか別にしても、オールラウンダーでないと生き残ることはできないです。ただし、チャンピオンになるには、全てのエレメントにおいて、クオリティが高くなる必要があるようですね。そして穴がない。それがドミニクですね。
「穴を見せないように戦うのが、僕なんだよ(笑)。穴はあっても、絶対に試合では見せない。何も世界で最も完璧なファイターになる必要はないと思っている。でも、試合になれば自分の弱い面を出さないで戦いたい。それこそが、戦う上で常に頭に置いている……念頭にあることだよ」