【New Era APmma】グアム、メルカ・マニブッセン(03)「グアム発世界」
【写真】8歳の長男とふざけて組み合うメルカ・マニブッセン。キッズ柔術クラスは大盛況だった。常夏のグアムだが、ノーギよりも道着を着た柔術の方が盛んなようだった(C)MMAPLANET
急激に成長を遂げるアジア太平洋のMMA。MMAPLANETでは、「New Era APmma」としてアジア太平洋地区のファイター、関係者のファイターを紹介していきたい。
第4弾は古くから日本の格闘技界と関係の深いメルカ・マニブッセンのインタビュー最終回。ある意味、格闘技界が凝縮したグアムの格闘技事情をさらに語ってもらった。
<グアムのMMA&柔術の歴史が分かる=メルカ・マニブッセン インタビュー。第一弾はコチラから。第二弾はコチラより。>
※現在発売中のFight&Life Vol37には「Fight&Life 格闘紀行=グアム編」として、メルカ・マニブッセンを初めとするグアムのMMA&柔術関係者のレポートが掲載されています。
――グアムのMMAファンは、ご当地ファイターの試合が好きだということですね。
「それと今はMMAサイドからすると、柔術熱が高まっていることも影響していると思う。柔術家がレスリングを学ぶのは、MMAで戦うことを視野に入れているのではなく、あくまでも柔術で勝つためなんだ」
――レスリングや柔術は参加型のスポーツですが、MMAは観賞用スポーツでもあります。それなのに柔術人気が高まることが、MMA人気の低迷に直結するものなのですか。
「面白いだろう? 以前はビギナー同士の試合で5000人が集まっていた。さっきも言ったように、それが良いファイター同士の試合を組むと、最初は5000人近く入っていたのが、UFCファイターを招聘しようが4000人、3500人、3000人と観客動員は減っていったんだ。そして、どれだけ素晴らしい試合が行われても、観客動員のアップにはつながらなかった。
地元の仲間を応援する観客の方が、良い試合やビッグネームの試合を見たいという人よりも多いのかもしれない。ジャングルルールという大会で僕がハワイのファイターと戦った時、チケットは1週間で売り切れた。でも、MMA人気の上下については、本当の原因なんて誰にも分からないよ」
――現在ではPXCが唯一のMMAプロモーションなのですか。
「そうだよ。プロのMMAを開いているのはPXCだけだ。それとプレバハウというアマチュアの大会がある。プレバハウとは、僕らの言葉で『証明しろ、示せ』って意味なんだ。若くて、活きの良いファイターが揃っている。そこで勝てば、PXCに活躍の場を求めることになる。PXCはフィリピンでも成功を収めつつある。TV中継もあるしね」
――そのTV中継ですが、グアムは米国と同じようにPPVやFOXでUFC中継が視聴できるわけですよね。
「もちろん。Spikeでベラトールを見ることもできる。UFCでPPV中継を視聴しているようなファンは、まずPXCも観戦しているだろう。それにMMA自体の知名度はグアムでも上がっているんだ。スパイクのようなビジネスとしてジム経営をしているのではなく、バックヤードで練習するようなジムなら40ぐらいある。コーチもガイダンスもなく、まぁお金がないから、バックヤードで練習しているんだよ」
――バックヤードでなくビジネスとしているジムは、どれぐらいあるのでしょうか。
「スパイク22にアンダーワールド・エクストリーム、カウンターショット、カム・クエストぐらいかな。ボクシングのジムでMMAクラスがあるところもある。それでも6つ程度かな」
――人口16万で5つのMMAジムは、東京よりもジム密度は高いと思います。
「確かにね(笑)。だいたい、ここの連中はこんなに小さな島なのに、練習へ行くのはジムが遠くて億劫だなんて言うんだ(笑)。僕は大宮から東京、横浜、千葉へドライブして練習していたというのに。
当時、一緒に練習していたルミナやウノ、アベ、ウエマツ、皆が自分のジムを持つようになった。当然、エンセンにはピュアブレッドがあり、僕はスパイク22を持つようになった。とても良いことだよ。
グアムのMMA人気はここ2年で下がってしまったけど、今年からまた上向いてきそうだ。PXCがマニラで成功を収め、グアムでもベルトを狙うことができるファイターも育っている。ゆっくりだけど、また人気が戻ってくるだろう」
――グアム期待のファイターを教えてもらえますか。すでにジョン・タック、ジョー・デュアルテ、ジョー・タイマングロが米国メジャー入りを果たしていますが、彼らに続く存在は?
「3人とも一緒に練習していた連中だよ。彼らに続くのは……、レスラー、柔術家、本当に多くの才能の持ち主がいるから、名前を挙げることは難しいな……。カイル・アグオン、トラビス・ジョーンズ、PXC36のメインに出場した2人の名前は覚えていて欲しい。
【写真】カイル・アグオン(右)とトラビス・ジョーンズ。3月8日のPXC36のメインで戦った両者。アグオンが判定勝ちを収めている(C)MMAPLANET
エリエット・アントラニ、まだ21歳の青帯の柔術家だけど、本当に将来が楽しみだ。ジョセ・カマチョ、彼も青帯になったばかりで、キックボクシングから柔術やレスリングを習いに来て、レスリングの方も相当な腕前だ。柔術ではマリアナス王者になったけど、日本では負けてしまった。それが柔術での初めての敗北なんだ。エリオットとジョセの名前も絶対に覚えていて欲しい」
――ところでスパイク22には、どれくらいの練習生が所属しているのですか。
「150人チョットかな。柔術の生徒が最も多い、その次がレスリングで、MMA、フィットネスと続く。以前はMMAが一番だった。ウチでも100人は柔術のジム生だ。柔術は老若男女、誰でも目的にあった練習ができる。70歳になってもね。キックやレスリングではそういうわけにはいかない。8歳になる僕の息子も柔術のトレーニングをしているよ。パンチ力もなかなかある(笑)」
――メルカ、グアムMMA&柔術界のパイオニアとして、これからの目標を教えてもらえますか。
「柔術とレスリングだけのジムをもう一軒、作っている最中なんだ。ここはリビルトしているケージを戻し、MMAとコンディショニングだけのジムにする。スパイクMMAとスパイク柔術をそれぞれ独立させようと思っているんだ。
そして、スパイクからということでなくグアムから、MMAならUFCチャンピオン、柔術ならワールドかアブダビプロの世界王者が生まれて欲しい。色んな場所でグアムのファイター達が活躍していけるようになれば、ね。少しずつその日に向かって進んでいるよ。1998年から、今日まで少しずつ進んできたようにね」
【Bio】
1976年12月27日、グアム出身。スパイク22主宰