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【Interview】ホイラー(02)「柔術を練習し、次の24時間を頑張る」

2013.03.14

Royler Gracie

【写真】ホイラーの後ろにある窓からは、奥にある練習スペースの様子が伺える。明日への活力、それがここでの柔術の役割だ (C)MMAPLANET

3年前よりサンディエゴに拠点を移したホイラー・グレイシー。エリオ・グレイシーの五男として、柔術を広める使命を持ち、従事して生きてきた彼だからこそ、柔術の素晴らしさを誰よりも知っている。

インタビュー後編は、Way of Lifeとしてのグレイシー柔術の魅力を誰よりも、柔術コンペティションに出場してきたグレイシーであるホイラーに語ってもらった。

<ホイラー・グレイシー インタビュー、前編はコチラから>

※ここで紹介したホイラー・グレイシーを始め、ドミニク・クルーズの所属するアライアンスMMA、サウロ・ヒベイロの柔術ユニバーシティ、バレット・ヨシダが指導するアンディスピューティッドの模様が「Fight&Life 格闘紀行=サンディエゴ編」として掲載されているFight&Life Vol.36は現在、全国の書店で絶賛発売中です。

――今、ホイラーの後ろで練習している生徒さんたち。限定スパーをクローズドガードから始めているのが、グレイシー本家という気がします。

「基礎を忘れてはいけない。マスター・エリオ・グレイシーが我々に与えてくれたモノ。私は全てを父から教わった。水を飲むように、柔術の基礎を体に叩き込まれている(笑)。

ウマイタの生徒にはセルフディフェンス、競技柔術、MMAプログラム、全てを指導している。でも、僕にとっての柔術の軸はセルフディフェンスにあるんだ。何も変わらないよ。

ずっとギを着て柔術の試合に出ることが好きだった。時々、ノーギになってバーリトゥードで金を稼ぐ必要があっただけで。時代も変わり、MMAはTVで中継され注目を浴びるようになった。そして、柔術もずっとビジネスとして発展した。そんな今でも、畳の上でロールすると、お金の問題も仕事のストレスも忘れることができる。

ここにやってくる皆もそうだろう。柔術の練習をしていると、全てを忘れ、また次の24時間を頑張ることができる。最高の薬だよ。誰もがファイターになる必要はない。ファイターもずっとファイターで居続ける必要はない。若いファイターが成長してくれば、身を引けばいい。そうやって世界は回っているんだ。

マサカツ・ウエダと一昨年の9月に引退試合を行った。あの時で46歳だった。今はもう47歳だ」

Royler vs Ueda【写真】2011年9月14日、アマゾンフォレスト・コンバッチで上田将勝と引退試合を行った(C)MARCELO ALONSO

――まだ十分に30代に見えますよ。

「ありがとう。でも、47歳は47歳だ(笑)。どうやって、若い選手たちと真っ向からやりあえる? それには相当な準備が必要だし、それだけの見返りも必要になってくる」

――では柔術家として、シニア・トーナメントに出てみるということは?

「セミナーがなければね(笑)。アマチュア・トーナメントに出て、どうやって食卓に料理を揃えることができるんだい? バケーションだったら、ビーチへ行くよ(笑)。君も無償で記事を書かないだろう?」

――確かに、その通りですね。

「僕らの世代のグレイシー一族は、グレイシー柔術を世界に広める使命を持っていた。それが成った今、年を重ね自分のために生きている。道着の袖に手を通したときから、如何に人々を尊敬し、謙虚な姿勢でいられるのかを指導していく。そして、友人たちとジョークを話し、良い時間をアカデミーで過ごしてもらう。練習を終えて、家までドライブする時間にどれだけリフレッシュできることか。それが柔術、それが僕が生徒たちに求める生き方だ。

今、僕の後では25人以上が練習していて、22歳以下は3、4人しかいない。7人は35歳以上だ。彼らはコンペティションなんて頭にない。ここで汗を流すことが楽しいんだ。もう、僕らの時代とは違うんだよ。35歳を過ぎても柔術で汗を流す。良い汗を掻き、楽しく食事をして、ぐっすり眠る。そして、明日の朝、またオフィスへ向かうんだ」

――今、このアカデミーには何人ぐらいの生徒さんがいるのですか。

「250人ぐらいかな。まだ、ここに移ってきて10日しか経っていないけど、60人も新しい練習生が増えたんだ。ジョアン・ファリアなど、信用しているトップスチューデントに指導を任せることができる。大きなジムで、色んな人間を雇ってウェイトやコンディショニングも指導した方が良いって考えもあるけど、僕はこのサイズの道場で柔術の指導がしたい。

コンディションを整える余裕のある人は、ランニングをしたり、どこかで泳いでくればいい。僕は柔術の指導をするために、今、ここにいるんだ。そうやってグレイシーウマイタを大きくしていきたい。兄のホウケルがリオとブラジルを見て、僕は世界を視野に入れて働く。

米国だけでなく、オーストラリアやニュージーランドにもグレイシーウマイタはアカデミーを持っている。日本はまだだけど、日本で柔術が広まったことを心より喜んでいるよ。今週末はハワイへ行く、4日間だ。来週には戻ってくる。クウェートは3日間、南アフリカには5日間しか滞在しなかった。

これからマイアミ、ニュージャージー、ジャクソンビルでセミナーが待っている。ずっとスケジュールが詰まっているんだ。米国中、世界中で柔術の指導ができる。こんなに素晴らしいことはない。好きなことして生きてゆける。本当に恵まれているよ。だから、また日本の皆に会いたいと思っている。誰か、試合をしたいなら言ってくれ(笑)」

――ヒカルド・デラヒーバが、日本で中井祐樹さんと引退試合を行います。

「オォ、それは素晴らしいことだよ。ところでユーキ・ナカイは何歳になった?」

――確か42歳だったと思います。

「そうか、まだまだ若い。42歳はまだベイビーだ(笑)。彼の引退試合ってわけじゃないよね。いつも、彼のような勇敢なハートを持つ日本の皆のことを尊敬している。そして、地震や津波で多くの命を失い、立ち上がっている皆さんのことを応援しています。世界中の柔術コミュニティで協力できることがあれば、いつでも私たちに伝えてほしい」

<Bio>
Royler Gracie
1965年12月6日、ブラジル・リオデジャネイロ出身。
1996年~1999年ブラジリアン柔術世界選手権黒帯ペナ級優勝
1999年~2001年ADCC世界サブミッションレスリング選手権66キロ優勝
MMA戦績5勝5敗1分

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