【a DECADE 01】10年ひと昔、2003年1月11日ADCC欧州予選
【写真】当時も今も北欧勢のトップとして活躍中のヨアキム・ハンセンは、決勝でユッシ・タメリンのギロチンで一本負けだった。
MMAPLANET執筆陣の高島学が、デジカメにカメラを変更し取材するようになってから10年が過ぎた。そこでMMAPLANETでは10年という区切りもあり、実際に足を運んだ大会を振り返るコラムを掲載することとなった。a DECADE、第1回は10年前の1月11日。フィンランドはトゥルクで開催されたADCC2003欧州予選を振り返りたい――。
Text & Photo by Manabu Takashima
氷点下22度、人生初の-20度超えを経験した地はフィンランド、第3の都市トゥルクだった。ノキアの本社があると聞かされていた街、北に15キロほど進んだナーンタリのカイロ島は島全体がムーミン谷を模したムーミンワールドが存在する。コペンハーゲンを経由して、この地を赴いたのは3カ月振りのこと。
【写真】トゥルクの空港から滑走路を望むと、そこは一面の銀世界が広がっていた。同大会が開催されたかリビアは、温水プールやサウナがメインのレジャー施設、その体育館で欧州組み技ナンバーワンが決まった。
空港の中は前回と同様に、ムーミン達が出迎えてくれたが、一歩、足を外に踏み出すとプロ修斗初の北欧での公式戦が行われた10月には、紅葉が見られた街は一変、白銀の世界に様変わりしていた。プロ修斗を北欧に持ち込んだマルコ・レイステンが、5月にサンパウロで開かれるADCCサブミッションレスリング世界選手権の欧州予選を地元で開催。思えば、過去10年の間で、劇的な変化を遂げ続けている格闘技界にあって、ADCCは今も昔も変わらぬフォーマット、99キロ超級から66キロ級まで5階級で世界イチが競われている。
【写真】クリストフ・ミドーは2試合連続一本勝ちで、決勝進出も三角をパスされるなど0-10でミカ・イルメンに敗れた。
当時、2001年の前回大会でユノラフ・エイネモが世界4位に入った欧州勢、特に北欧勢はこの間に急激に力をつけており、欧州予選レベルでは3階級でフィンランド人、1階級をスウェーデン人が制し完全にヨーロッパをリードしていた。残りの1階級は今やKSWが注目されるポーランドから優勝者が輩出され、西欧勢ではフランスのクリストフ・ミドーと英国のポール・アイヴァンスがそれぞれ99キロ超級と99キロ級で2位に入ったのが最上位。続いてオランダのマルタイン・デヨングが88キロ級で4位に入った以外は、8人制トーナメントの初戦敗退が連続していた。
【写真】準決勝で優勝したロバート・サルスキーに敗れたマルタイン・デヨング、今では体重108キロだとか……。
ちなみにミドーは、今もGSPのセコンドとしてその顔をオクタゴン・サイドに眺めることができ、アイヴァンスはロンドン・シュートファイターズからジョン・ハザウェイ、カルロス・ヴェモラらをUFCに送り込んでいる。修斗オランダのマルタイン・デヨングは、そのメルアドが変わったようにGLORYのトップとして、日本のMMAの動向に深く関係している。
10年ひと昔、5階級の王者たちのなかで今もMMAやグラップル・シーンで目にすることができるのは、99キロ級を制したイリル・ラティフィぐらい。アルバニア系のスウェーデン人ファイターは、GLORYやスウェーデン#01のスペリアーで結果を残しており、米国でも今はなきシャークファイツに出場していた。
【写真】今もMMAファイターとして活躍するイリル・ラティフィ。当時より、筋肉質になりライトヘビー級で7勝2敗の戦績を残している。
そんななか、今でも最も名の通った外国人ファイターとして親しまれているヨアキム・ハンセンは、同大会では77キロ級で準優勝に終わったが、当時のマネージャーがレイステンということもあり、推薦で世界大会=66キロ級に出場。MMAでフェザー級になる前にADCCで66キロを経験していたことになる。
88キロ級3位のダーヴィド・ビエルクヘイデンはUFC出場後、今も現役続行中だ。面白いところでは、77キロ級4位のボビー・スンデルが昨年4月のUFC初のスウェーデン大会で、レフェリーとしてオクタゴンのなかで存在感を示していた。
【写真】ボビー・スンデルもMMAを経験後、引退。柔術の普及とMMAの競技運営面で今も活躍中だ。
10年前の今日、北欧勢の10年後はもっと輝かしいモノになるという想いを抱いていたが、現実は甘くなかった。それでも、この大会に出場していた選手たちの名前を眺めてみると、ネットで検索することなく、これだけのファイター&元ファイターの現状が把握できている。それだけMMAやグラップリングが世界に普及した証といえるのではないだろうか。
■2003年1月10日ADCC2003欧州予選@カリビア・ホール、トゥルク:フィンランド トーナメメント結果
66キロ級
優勝/ティイム・ラウニス(フィンランド)
準優勝/トニー・クローゲル(フィンランド)
77キロ級
優勝/ユッシ・タメリン(フィンランド)
準優勝/ヨアキム・ハンセン(ノルウェー)
88キロ級
優勝/ロバート・サルスキー(ポーランド)
準優勝/イカ・レイノ(フィンランド)
99キロ級
優勝/イリル・ラティフィ(スウェーデン)
準優勝/ポール・アイヴァンス(英国)
99キロ超級
優勝/ミカ・イルメン(フィンランド)
準優勝/クリストフ・ミドー(フランス)