【on this day in】2月12日──2004年
【写真】クリス・ブラウンが怒涛のパウンド&パス狙いでゴンズイを攻め込む(C)MMAPLANET
NHB Shooto
@豪州ビクトリア州メルボルン、キーローズ・バスケットボールセンター
「上の写真を見て、思わず涙が出そうになった。なぜだろう……、高校バスケ部の連中と『日本は永遠に栄え続ける』と信じて疑わず、一緒に過ごしていた頃を思い出してしまった時のようだ。ガリガリに痩せたゴンズイに、モスクワからアトランタまでレスリング五輪豪州代表に5度も選出されたクリス・ブラウンが強烈なパウンドを落としていく。修斗公式戦なのに前日の計量の際、初めて鉄槌が反則と知らされ、ガードから鉄槌を繰り出すことを想定していたゴンズイ陣営に緊張感が走った。にも関わらず小池館長はその日の夜、ホテルの横のバーで何時間も何時間も、僕にビールを注ぎ続けた。生駒君も、そのうちの1、2時間は同席し、『世界で一番勇気のいるオナニーは、嫁さんがベッドで横に寝ている時にするものだ』なんてバカ話で大笑いしていた。ちなみにその行為のことを僕らは命懸けオナニーと呼んでいた。ビールを飲み過ぎたんだろう、試合開始3時間前に会場入りし、空調のない部屋では待たされ続けていると大量の汗が噴き出してきた。完全アウェイの地で足を使って、疲れさせるというゴンズイの作戦はブラウンのスタンドの迫力の前に通じず、9針を縫うカットで敗れた。翌日、彼ら3人はメルボルンの空港で、ファイナルコールで名前が呼ばれているのに、免税店で呑気に買い物をしていた……。そうだな、あの頃、僕らは『日本の格闘技は永遠に栄え続ける』と心のどこかで思っていたんだろう。諦めない限り、また勝てるって。日本も、日本の格闘技界も永遠に栄えるなんてことは当然なかった。それでも、彼らは格闘技界に生き続けている。高校時代の友人が、きっとこの国のどこかでたくましく生き抜いているように。ゴンズイ、いや北川純も生駒純司も小池孝典さんも、この国の格闘技界に生き続けている。ノスタルジック厳禁、諦めない限り、本当の負けじゃない。僕らはまだ勝てる」
on this day in──記者生活20年を終えた当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。