【Interview】砂漠のMMAで勝利、横田一則「相手が7回代わりました」
【写真】取材日は試合から約10日後、2Rに親指を脱臼骨折したという横田の右手はギブスで固定されていた。
2日(金・現地時間)、UAE=アラブ首長国連邦のADNECエキシビションセンター内ICCホールで、Abu Dhabi Warriors Fighting Championship(ADW)の旗揚げイベントが開催され、日本から横田一則が出場。アナトリー・サフロノフに3Rにバックチョークで一本勝ちを収めた。
試合結果以外の情報がほとんど伝わってこなかったこの大会、試合の様子を帰国後の横田に尋ねた。
Text and photo by Takumi Nakamura
――UAEで行われたADWというプロモーションの旗揚げ戦に出場し、一本勝ちした横田選手ですが、試合結果以外の情報がほとんど伝わってきません。今回は試合・イベントの詳細についてお聞きしたいと思います。もともとどういった経緯で横田選手にオファーが届いたのですか。
「2007年にタイで行われたIT’S SHOWTIMEのリアリティショーに参加したんですけど、その時と同じ流れでオファーをいただきました」
――UAEで旗揚げするMMAイベントと言われても、ピンと来ない部分もあったと思うのですが。
「逆に自分は海外で試合をするなら、UFCならまだしも、色がない大会に出た方がチャンスというか。旗揚げ戦のメンバーに選ばれるのって、なかなかないことだと思うんですよ。だから自分としては特に迷わずOKしましたね。純粋にUAEに行ってみたかったというのもあるんですけど(笑)」
――アブダビはリゾート地ですからね(笑)。
「宿泊したホテルもむちゃくちゃリゾート地で、ビーチもタクシーですぐのところでした。ホテルのジムにサウナがなかったので汗だしが出来なかったんですけど、そうしたらジム、サウナ、ジャグジー、プライベート使い放題のホテルを用意してくれて、自分は減量している傍ら、セコンドの三崎(和雄)さんたちは、かなり楽しんでいました(笑)。
今回はライト級契約だったので減量もなかったし、計量の2日前の早朝に到着するスケジュールだったので、かなり余裕を持って調整できました」
――横田選手はフェザー級が適正だと思うのですが、久々のライト級契約で不安はなかったですか。
「逆にライト級で良かったと思います。初めての海外で、いつも同じフェザー級でやるのは不安だったんですよ。結果的に苦もなく減量して、日本と特に変わらず調整できましたけど、もし何かトラブルがあったら減量だけで大変じゃないですか。実際、今回のホテルにもサウナがなかったし。もともと自分はどちらでも試合が出来るというのはあるんですけど、今回はライト級で良かったかなと思います」
――初海外でも順調に調整して試合に臨むことが出来た、と。会場の規模や雰囲気はいかがでしたか。
「会場は数千人規模のところで、ちょうど金・土・日がF1のアブダビGPだったんです。だからホテルにもF1のユニフォームを着た人たちも多くて、F1を見に来たお客さんが会場に集まるような感じで、客席は満員に近かったですね」
――対戦相手のアナトリー・サフロノフについてはどのくらい事前に情報があったのですか。
「最終的にサフラノフに決まったが試合の10日前くらいで、それまでに相手が7回変わりました(苦笑)」
――7回ですか。
「『相手が変わって、この選手になります』と言われてOKを出した翌日、その相手が欠場になったと言われることもあって、それの繰り返しでしたね(苦笑)。最初は相手が変わるたびに色々と情報を探しましたけど、もう最後はどうでもよくなりましたよ」
――ではほとんど事前情報なしで戦ったのですか。
「戦績を確認したくらいですかね。一応、2012年だけで12試合しているというのを売りにしていて、階級も基本的にはウェルター級なんだけど、ミドル級でもライト級でもやる、というのは知っていました。こっちがフェザー級から上げる形だったので、試合の時に少しデカいなと思いましたね」
――どんな試合展開だったのですか。
「13勝していて8つの一本勝ちで、寝技が得意な選手だと思っていたんですよ。MMAPLANETさんの記事を読んでも、そんな感じだったじゃないですか。それで自分も寝技の選手というイメージで試合を始めたら、いきなりサフラノフがパンチを振り回してきて、しかも写真や煽りVTRでずっとサウスポーに構えているのに、試合になったらオーソドックスで。想定外の打撃だったので、思わず一発もらってダウンしちゃったんですよね」
――想定外とはいえ、横田選手がパンチを効かされるのは珍しいですね。
「すぐに立ち上がることは出来たんですけど、予想以上にパンチが伸びてくるなと思って、ちゃんと距離を測るまでに時間がかかりましたね。距離が分かってからは、ほとんどパンチはもらわなかったです」
――では序盤のビッグヒット以降は試合のペースを掴んだ、と。
「そうですね。俺のローで足が腫れていたし、右クロスが当たって客席も沸いていました。そうしたら今度は2Rに打った右フックで右の親指を脱臼骨折しちゃって…」
――打った瞬間に異常が分かるレベルだったのですか。
「はい。明らかに痛みがおかしかったので、折れたと分かりました。試合用のOFGが親指が抜けているタイプのものだったんですよ。バンテージを巻いてくれるカットマンが2人いたのですが、バックステージがバタバタしていて、自分はサブのカットマンがバンテージを巻いたんですけど、あんまり上手くなくて…試合前に大丈夫かなと思っていたら、案の定、やっちゃいましたね(苦笑)。
それで3Rはもう打撃を使えなくなって、作戦をテイクダウンに切り替えて、上手くテイクダウン→マウントポジション→バックチョークの流れで一本勝ち出来ました」
――情報が錯そうして、試合中にトラブルがあった中で一本勝ち出来たことは、自信になったのではないですか。
「正直、相手のレベルは高くないし、試合内容も褒められたものではないです。でも初めての海外で、対戦相手の情報もほとんどない中で勝てたことは収穫だったと思います」
――右手の怪我があるので、すぐ次とはいかないと思いますが、今回の試合をきっかけに海外の試合にも興味は出てきましたか。
「そうですね。次は年明けにDEEPで防衛戦になると思うので、来年はDEEPを主戦場にしながら、海外の試合も並行してやっていけたらなと思います」
――今回はADWという新興プロモーションでしたが、もっと認知されているイベントに出たいという気持ちはありますか。
「タイミングとチャンスがあれば、ですね。寒いところが苦手なので、アブダビのような暖かくてリゾート地が希望です(笑)」