【on this day in】1月01日──2011年
【写真】すかし合い、かわし合い、組んでからの倒し合いの上に成り立つ殴り合いは、MMAならではの醍醐味だ(C)GONGKAKUTOGI
UFC125
@ネヴァダ州ラスベガス、MGMグランドガーデンアリーナ
「MMAをよりMMAにした。それがフランキー・エドガーだ。全ての戦いの要素が面で接続しているのでなく、丸みを帯びてまろやかに融合している。そんなエドガーが、4年前の元旦に当時、キャリア唯一の敗北を喫しているグレイ・メイナードとの再戦を戦った。8の字周遊サークリングからパンチで翻弄しテイクダウンを奪う──はずのエドガーがメイナードの左フックを受けてダウンを喫した。顔面を殴られながら立ち上がったエドガーは、このピンチを凌ぐと、左に右クロスを合わせ徐々にスピードでメイナードを翻弄し始める。その後も両差、攻守が入れ替わる激しい戦いは北米MMAでは非常に珍しい三者三様のドローという裁定が下った。簡潔かつ簡単な表現を用いると、珠玉の名勝負だった。そんなエドガー×メイナード戦は特別な思い出となっている。この年から始まったひかりTVのUFCプログラム。スタッフはかつてK-1やPRIDEを中継していた強者たち。そんな彼らからは収録のたびに『PRIDEは面白かった』という空気が漂っていた。僕と岡見勇信は意地を張ったように、目の前で繰り広げられているケージレスリング、スクランブル、そして間合いを外した打撃戦の必要性を、技術論を全面に打ち出し話し続けた。その結果、エドガー×メイナード戦の収録後にスタッフから『岡見選手と髙島さんの話があると、UFCが面白くなってきた』という言葉が聞かれた。社交辞令かもしれない。何より、解説がなくても2人の試合は名勝負だった。それでも、この言葉で僕の覚悟は決まった。とにかく分かってもらえるまで、この路線で話し続けようと。そんな自分を後押ししてくれたのが、エドガーのMMAだった」
on this day in──記者生活20年を終えようという当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。